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30話
しおりを挟むお母様のおかげで、すぐにメイドが駆けつけてくれて、なんとか夕食の時間に間に合いましたわ。
私が食堂に行くと、まさか部屋から出てくるとは思っていなかったようで、お父様もお兄様も驚いた顔をしています。
.......私だって、頭が働いてくれなかっただけで本当なら来たくありませんでしたわ。
なんて心の中で思いながら、妙に視線を感じる中、いつも通りの自分の席につきました。
お兄様の隣、お母様の前の席ですわ。
お兄様の顔が見えない、という理由で席を変えるように毎回お願いしていましたが、今日は顔が見えなくて良かった、と心から思います。
私がそんな風に思う時が来るなんて思っていませんでしたわ。
なんとなく、気まずい空気の中、メイド達が運んできてくれた料理を口に運びますが、なんでか味がしませんの。
味をつけるのを忘れたんでしょうか?
そう思いながら、何も話すことはなく黙々と食事を口にしていると
「シャルロット、明日から学園は行けるのか?休むなら連絡しておくぞ?」
この静かな空気に耐えられなかったのかお父様がそう話しかけてきましたわ。
そうですわね.......逆に家の中にずっといると嫌なことばかり考えてしまうような気がしますわ。
それに.....今はお兄様と同じ家にいたくありませんし。
そう思った私は、心配そうに見つめてくるお父様に
「明日は行きますわ。心配をかけてごめんなさい」
と言って微笑むと、お父様は何か言いたそうにしていましたが
「まぁ、その方が良いと思うわ」
というお母様の言葉に遮られて、何を言おうとしたのかまではわかりませんでしたわ。
なんだったんでしょう?
思わずお父様の反応に首を傾げていると、目の前に座っているお母様が
「そんなことよりもシャルロット、婚約者はどうするつもり?」
と私に聞いてきましたわ。
まさか、このタイミングで聞いてくるとは思わなくて固まっていると
「なっ!お前っ」
お父様も驚いたみたいで、そう言って目を見開いています。
お兄様の方は見ていないのでわかりませんが、きっと驚いていると思いますわ。
そんな中、お母様は
「ブレイドのことは、決まったものだし仕方ありませんわ。そうやって落ち込んでいる間にもシャルロットには沢山の求婚の手紙が来ているのよ」
私にそう言ってきました。
確かに、今日届いているだけでも結構な数がありましたわよね。
私がハッキリと決めないせいで、今も申し込んでくれた人たちは返事を待っているんです。
ですが、なぜでしょう?
胸のあたりが締め付けられたようにぎゅっとしますわ。
なんとか
「.......そう.....ですわね」
と絞り出した声も、かすれてしまいましたわ。
別にお母様を責めるわけではありませんわ。
だって、普段は優しいお母様が厳しく言ってくるときはなにかしらの理由がありますもの。
そう思っていると、お父様は
「そ、そんなに焦らなくても良いんだぞ?もう少ししてからでも.......」
と言って私を見ています。
まだお兄様のことが好きな状態で他の人と婚約しても上手くいく気がしませんわ。
ですが、それは私が甘えているだけでこのままズルズルと落ち込んでいても何もないまま時間が経つだけです。
するとお母様は
「嫌いな相手とも結婚する人が沢山います。でもそれは貴族に生まれてしまった以上、仕方のないことtお前に教えたわよね。甘い考えは捨てなさい」
そう言って手に持っていたナイフを置きました。
確かに、その通りですわね。
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