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11話
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なんだか流石に可哀そうに見えてきたので
「レオンハルト殿下、そろそろ........」
辞めるように、と頼むと
「流石ユーフェミア嬢だな。こんなことを言われたのに情けをかけるなんて」
と感心されましたわ。
別にそう言うつもりで言ったわけではなかったんですが、周りの人達もレオンハルト殿下の言葉に頷いていますし、そういうことでいいでしょう。
一方、私に情けをかけられた、ということになってしまったアリス様は恥ずかしそうに下を向いたまま、その場から走り去ってしまいましたわ。
きっと今頃、ベルン様に
「ユーフェミア様に虐められましたのぉ~」
という嘘をつくために走っているでしょう。
ですが、令嬢が廊下を走るだなんてはしたないですわよ?
アリス様がいなくなったことで、落ち着きを取り戻した温室は再び和やかな空気に包まれ始めましたわ。
はぁ.......でも、そういうのは別に良いんですよね。
アリス様のせいで遅くなってしまいましたし、そろそろ帰りたいのですが。
そう思っていると、レオンハルト殿下はニコニコしながら私を見ていますわ。
なので、つい
「なんですの?」
と尋ねると
「いや?ただ、さっきので俺に気が向いてくれないかなと思っただけだよ」
なんて馬鹿げたことを言ってきたので
「ありえませんわね。何よりレオンハルト殿下は見た目が好みじゃありませんの」
そう言って視線を逸らすと、レオンハルト殿下はなんだか不服そうに
「皆からはカッコいいと言われているけどなぁ」
と言いながら机にクルクルと丸を書いていますわ。
そんなことをされても、何も可愛くありませんし、確かに顔は他に比べたらいいかもしれませんがお兄様ほどではありません。
そう思いながら
「そりゃあ、王族に向かってブサイク、なんて言えませんもの」
というと、えぇー、と何やら納得していないようですが、本当のことですわ。
自分よりも上の立場の人に太っていてもデブ、なんて言いませんわよね。
拗ねているレオンハルト殿下に
「とにかく、レオンハルト殿下と婚約することだけはあり得ませんわ。お父様にもそう言っていますの」
そう言うと、ニヤニヤと笑いながら
「じゃあ、それが命令だと言われたら?」
と聞かれましたわ。
命令、ですか。
そうなったら絶対ですから婚約するでしょうね。
ですが、
「.......仕方ないので従いますが、余計に嫌いになるでしょうね」
とだけ言ってレオンハルト殿下を睨みつけると
「そうだよねぇ...........」
と苦笑していますわ。
ですが、当然のことですわよね。
婚約者を命令で決めるのなら皆自分の好きな人と婚約しますわよ。
そう思いながら残ったお茶を一気に飲み干して
「では、私はこれで失礼しますわ」
と席を立つと、なぜかレオンハルト殿下に腕を掴まれましたわ。
これ以上遅くなりたくありませんのに、しつこいですわね。
なので、つい
「なんですの?」
そう言って腕を振り払うと
「俺、本気だから。少しくらい考えてみてよ」
と言ったときのレオンハルト殿下の顔は真剣で、本気度が伝わってきます。
ですが、
「考えて、あり得ないという答えになったんですの。諦めてください」
これはブレませんわ。
だって、考えて揺らぐほどの思いでしたら10年以上もお兄様だけを思い続けることは不可能ですもの。
「レオンハルト殿下、そろそろ........」
辞めるように、と頼むと
「流石ユーフェミア嬢だな。こんなことを言われたのに情けをかけるなんて」
と感心されましたわ。
別にそう言うつもりで言ったわけではなかったんですが、周りの人達もレオンハルト殿下の言葉に頷いていますし、そういうことでいいでしょう。
一方、私に情けをかけられた、ということになってしまったアリス様は恥ずかしそうに下を向いたまま、その場から走り去ってしまいましたわ。
きっと今頃、ベルン様に
「ユーフェミア様に虐められましたのぉ~」
という嘘をつくために走っているでしょう。
ですが、令嬢が廊下を走るだなんてはしたないですわよ?
アリス様がいなくなったことで、落ち着きを取り戻した温室は再び和やかな空気に包まれ始めましたわ。
はぁ.......でも、そういうのは別に良いんですよね。
アリス様のせいで遅くなってしまいましたし、そろそろ帰りたいのですが。
そう思っていると、レオンハルト殿下はニコニコしながら私を見ていますわ。
なので、つい
「なんですの?」
と尋ねると
「いや?ただ、さっきので俺に気が向いてくれないかなと思っただけだよ」
なんて馬鹿げたことを言ってきたので
「ありえませんわね。何よりレオンハルト殿下は見た目が好みじゃありませんの」
そう言って視線を逸らすと、レオンハルト殿下はなんだか不服そうに
「皆からはカッコいいと言われているけどなぁ」
と言いながら机にクルクルと丸を書いていますわ。
そんなことをされても、何も可愛くありませんし、確かに顔は他に比べたらいいかもしれませんがお兄様ほどではありません。
そう思いながら
「そりゃあ、王族に向かってブサイク、なんて言えませんもの」
というと、えぇー、と何やら納得していないようですが、本当のことですわ。
自分よりも上の立場の人に太っていてもデブ、なんて言いませんわよね。
拗ねているレオンハルト殿下に
「とにかく、レオンハルト殿下と婚約することだけはあり得ませんわ。お父様にもそう言っていますの」
そう言うと、ニヤニヤと笑いながら
「じゃあ、それが命令だと言われたら?」
と聞かれましたわ。
命令、ですか。
そうなったら絶対ですから婚約するでしょうね。
ですが、
「.......仕方ないので従いますが、余計に嫌いになるでしょうね」
とだけ言ってレオンハルト殿下を睨みつけると
「そうだよねぇ...........」
と苦笑していますわ。
ですが、当然のことですわよね。
婚約者を命令で決めるのなら皆自分の好きな人と婚約しますわよ。
そう思いながら残ったお茶を一気に飲み干して
「では、私はこれで失礼しますわ」
と席を立つと、なぜかレオンハルト殿下に腕を掴まれましたわ。
これ以上遅くなりたくありませんのに、しつこいですわね。
なので、つい
「なんですの?」
そう言って腕を振り払うと
「俺、本気だから。少しくらい考えてみてよ」
と言ったときのレオンハルト殿下の顔は真剣で、本気度が伝わってきます。
ですが、
「考えて、あり得ないという答えになったんですの。諦めてください」
これはブレませんわ。
だって、考えて揺らぐほどの思いでしたら10年以上もお兄様だけを思い続けることは不可能ですもの。
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