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2話
しおりを挟む軽い足取りで家に到着すると、早速お父様の執務室に向かいますわ。
だって、こういうことはなるべく早い方が良いですものね。
そう思いながら廊下を歩いていると
「シャル?なんか機嫌が良さそうだね?」
「お兄様!」
このタイミングでお兄様に会えるなんて嬉しいですわ。
『ブレイド・フェミリア』私のお兄様であって、私の愛しの人。
最近忙しそうにしていたので会う機会が減っていましたが、やっぱり私達は運命の赤い糸で結ばれていますのね。
そう思いながら、お兄様に
「私はお兄様とお話が出来るだけで気分は最高潮ですわ!」
と満面の笑みで返すと、
「あ、いや、そういうことじゃなくて...........」
そう言って苦笑されましたわ。
なんだか面白くない反応なので、つい
「じゃあ、何ですの?」
と返すと
「何かいいことでもあったの?ということだよ」
「わかってくれますの?流石お兄様ですわ!」
何も言っていないのに、私の思いが伝わるなんて、流石ですわね!
あまりの嬉しさに、頬が緩み切ってニコニコしている私に、お兄様は
「いいから......それで?何があったの?」
と尋ねてきたので、
「私、婚約破棄されましたの!」
先ほど起こったことをそのままお兄様に伝えましたわ。
はぁ......本当に嬉しいですわ。
まさかあちら側から婚約破棄してくれるなんて思ってもいなかったので、これで私も好きに出来ますわね。
そう思っていたんですが、お兄様は
「.........は?」
とだけ言って、手に持っていた書類を落としてしまいましたわ。
これには咄嗟に
「大丈夫ですの?」
そう聞きながら、落ちた書類を拾っていると
「え?あ、あぁ......うん。大丈夫だけど、なんで?」
なんで拾ってるの?ということかしら?
そんなの聞かなくてもわかっているくせに。
そう思いながら
「お兄様が物を落としたんですから、私が拾うのは当たり前ですわ!」
と言って拾い終わたばかりの書類たちをお兄様に手渡すと、それを受け取りながら
「相変わらず話が噛み合わないね。なんで婚約破棄されたの?」
あ、そっちでしたか。
私はてっきりなんで拾ってくれてるの?の方かと思っていましたわ。
心配そうな顔をして私を見ているお兄様に
「んー......なんか真実の愛を見つけたとか言っていましたわ」
とだけ言うと、唖然とした表情で固まってしまいましたわ。
貴族で真実の愛、だなんて騒ぐ人は珍しいですからね。
まぁ、私はもう真実の愛を見つけているので、気持ちはよくわかりますわ。
それに、そう言われて引かない人は、相当惚れ込んでいるか、それか家としての利益が物凄く大きいか、のどちらかだと思いますもの。
ちなみに、私とベルン様の婚約は我が家には大して利益はありませんので考えることなく受け入れましたのよ。
それに、嫌いな人と10年も婚約者として頑張ったんですから、もう解放してもらって良い頃ですよね。
そう思いながら、まだ固まっているお兄様に
「お父様にもその話をしないといけないのですが、執務室にいますの?」
と尋ねると
「あ、いや、今は王宮に呼び出されてるからいないよ」
そういえば、今日の朝にそんなことを言っていましたわね。
なら、先にお母様に報告にでも行きましょうか。
そう思った私は
「そうですか。お母様にも報告してきますわ!」
とだけ言って、その場を後にしました。
本当はお兄様とまだお話していたかったんですが、まずは婚約破棄の方からですわ。
一刻も早く成立させて、お兄様の婚約者になるんですのよ!
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