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85話 キーンside
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ヴァイオレットと学園で会ってから約2週間。
その間に何度か子爵家に行こうか悩んだが、そうなると婚約破棄をしたことに対して謝罪をし、それに加えて俺から婚約を結んで欲しい、と頭を下げないといけないと思った俺は、なかなか行動が出来ずにいた。
まぁ、とはいえヴァイオレットと子爵には俺からしっかりと手紙を出したし、あれほどまでに完璧な、俺の思いが伝わる手紙を書けたんだ。
きっと、そろそろ父上の元に再び婚約して欲しい、とお願いする手紙が届いていることだろう。
そう思いながら、俺は久しぶりに上機嫌で屋敷の廊下を歩いていた。
ここ最近は父上の機嫌が悪いせいでメイド達も大変そうにしていたからな。
空気も悪かったし俺も毎日のように睨まれてきたが、それもやっと終わる。
はぁ......長かったし憂鬱だった。
なんて思っていると、正面から歩いてきたメイドが慌てた様子で俺に駆け寄ってきたではないか。
ということは、もしかして父上が俺のことを呼んで.........そう思いながらワクワクしてメイドの言葉を待っていると、
「キーン様、旦那様がお呼びです」
俺の想像通り、メイドはそう言って執務室に向かうよう言い残したが........気のせいか?
メイドが怖がっていたというか......なんだか様子がおかしかったような気がした。
いや、だが今の呼び出しは、いい呼び出しに違いない。
きっと俺の気のせい......そうだ、大丈夫だ。
そう自分に言い聞かせて、執務室へと向かった。
俺が執務室に入ると、父上は早速と言わんばかりに
「どういうことだ?レオンハルト殿下とヴァイオレット嬢が恋仲だと噂になっているが?」
そう言われたが、これ大して俺は
「は?」
と間抜けな声を出してしまった。
だって当然だろう?
殿下とヴァイオレットが噂になっている、って......ヴァイオレットは再び俺と婚約するはずだ。
それなのにそんな噂が出るのはおかしいし、あり得ない。
しかも、恋仲だと?
流石に動揺せずにはいられず、目を泳がせながら状況を理解しようとするが、どうしても理解が出来ない。
そんな俺に父上は
「なぜそのようなことになっているんだ。言ったよな?再び婚約してこい、と。それなのに、なぜこのような噂があがっている」
最近は怒鳴り散らしてばかりいるのに、なぜか今日は静かに、だが声色には怒りを込めて言ってくるのを見ると、普段よりも恐ろしく感じるな。
それだけ怒っている、ということなのか、それとも俺が想像しているよりも怒っていないのか。
なんて思いながら、恐る恐る
「お、俺もそれは.......というか、その話は初めて聞いたんですが........」
と父上に言うと、一瞬目を大きく見開いて驚いた顔をしたが、すぐに俺のことを睨みながら大きくため息をついた。
多分、だが今の俺の言葉に呆れて言葉を失ってしまったんだろうな。
だが仕方がないだろう。
貴族同士の話題なんて俺の耳に入ってくることがないんだからな。
それに関してはヴァイオレットと婚約破棄をして仕手からの俺の行動のせいだ。
つまりは、再び婚約しろ、と指示をした父上のせい。
だから父上にそのような顔をされる覚えはないんだけどな。
その間に何度か子爵家に行こうか悩んだが、そうなると婚約破棄をしたことに対して謝罪をし、それに加えて俺から婚約を結んで欲しい、と頭を下げないといけないと思った俺は、なかなか行動が出来ずにいた。
まぁ、とはいえヴァイオレットと子爵には俺からしっかりと手紙を出したし、あれほどまでに完璧な、俺の思いが伝わる手紙を書けたんだ。
きっと、そろそろ父上の元に再び婚約して欲しい、とお願いする手紙が届いていることだろう。
そう思いながら、俺は久しぶりに上機嫌で屋敷の廊下を歩いていた。
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いや、だが今の呼び出しは、いい呼び出しに違いない。
きっと俺の気のせい......そうだ、大丈夫だ。
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「どういうことだ?レオンハルト殿下とヴァイオレット嬢が恋仲だと噂になっているが?」
そう言われたが、これ大して俺は
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と間抜けな声を出してしまった。
だって当然だろう?
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それなのにそんな噂が出るのはおかしいし、あり得ない。
しかも、恋仲だと?
流石に動揺せずにはいられず、目を泳がせながら状況を理解しようとするが、どうしても理解が出来ない。
そんな俺に父上は
「なぜそのようなことになっているんだ。言ったよな?再び婚約してこい、と。それなのに、なぜこのような噂があがっている」
最近は怒鳴り散らしてばかりいるのに、なぜか今日は静かに、だが声色には怒りを込めて言ってくるのを見ると、普段よりも恐ろしく感じるな。
それだけ怒っている、ということなのか、それとも俺が想像しているよりも怒っていないのか。
なんて思いながら、恐る恐る
「お、俺もそれは.......というか、その話は初めて聞いたんですが........」
と父上に言うと、一瞬目を大きく見開いて驚いた顔をしたが、すぐに俺のことを睨みながら大きくため息をついた。
多分、だが今の俺の言葉に呆れて言葉を失ってしまったんだろうな。
だが仕方がないだろう。
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それに関してはヴァイオレットと婚約破棄をして仕手からの俺の行動のせいだ。
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