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77話

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店を開く、ということを考えすぎてすっかり忘れていましたが、そういえば私と婚約する人は入り婿として迎え入れることになりますのよね。

ということは特許が欲しいから、という理由以外にも私と婚約したい、と思ってくれる人がいるかもしれま.....いや、あり得ませんわね。

だって、我が家は貧乏貴族として有名なんですもの。

そんな家の令嬢と結婚したいなんて考えられませんわよね。

そう思いながら、改めてリストを見つめましたわ。

はぁ........見ても全くわかりませんわよね。

もうこうなったらお父様に選んでもらって、それに従うというのが一番いいような気がしますわ。

そう思った私は、心の中で大きくため息をついて

「正直、会ってみないと何もわかりませんわ。この中から会う人を選んでくれたら私はそれに従いますわよ」

少し素っ気ない言い方になってしまいましたが、ハッキリとした口調でお父様にそう言うと、

「わかった。じゃあ、こっちで決めておくから後で日時を伝えよう」

安心したような顔でそう言われましたわね。

やっぱりお父様はなるべく早めに婚約者を、と考えていますのね。

そもそも、領地の経営のことについて教えるのがー......と言っていましたが、キーン様の時は何もしていなかったではありませんか。

それなのに、こういう時だけもっともらしい理由を付けて私の婚約を急かしてくるんですからズルいですわよね。

とはいえ、婚約破棄をされてしまうのは想定外の事だったでしょうし、あまりグチグチ言うのも気分が悪くなりますわよね。

ここはグッと我慢しておきましょう。

上機嫌でリストを確認するお父様を横目に、執務室を逃げるように後にしましたわ。


ー------

大きくため息をつきながら、執務室から自分の部屋に戻るために廊下を歩いていると

「お嬢様、お嬢様!」

と物凄く上機嫌のディアが私に駆け寄ってきましたわね。

何か籠のようなものを持っているように見えますが......もしかして、既に干していたゴボウが乾いた、とかでしょうか?

とりあえず、廊下の真ん中で話をするのは邪魔になる、ということで一旦廊下の端に寄って

「ディア?どうしましたの?」

と尋ねると、ディアは手に持っていた籠の中から葉っぱのようなものを取り出しましたわね。

えっと......もしかして、ですけど、この籠の中いっぱいに同じものが入っているんでしょうか?

もしそうだとしたら結構な量がありますわよ?

なんて思っていると、葉っぱを持ったディアが満面の笑みで

「聞きたいことがあるんですけど、これってヨモギですか!?」

そう言うと、手に持っていた葉っぱを私に手渡してきましたわ。

ヨモギ、ですか.......。

ディアに言われて改めて意識をして持ってきた葉っぱを見ると、本当にヨモギ独特な形をしていましたわ。

なので、満面の笑みで質問してきたディアに

「えぇ、そうよ。よくわかったわね」

と言って微笑むと、今度は目をキラキラと輝かせて

「これがヨモギ.......あ、あの、この本でヨモギを使った食べ物が書いてあって..........」

そう言いながら籠の底にある本を取り出しましたわ。

あまりにも準備が良すぎて思わず笑いそうになってしまいましたわよ。

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