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55話

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無事にワンピースに着替えた私は、早速お父様のいる執務室に向かったのは良いですが......

「そういえば、畑から戻ってきているのかしら?」

忘れていましたが、仕事が終わり次第、毎日のように畑に行って土まみれになって戻ってくるようなお父様が、この時間に家にいるとは思えませんわね。

もし、居たとしたら......相当仕事が多かったんでしょう。

なんて思っていると、私の言葉にディアが

「あー......なぜか今日は畑に行かない、って宣言していましたよ?多分ですが、仕事を溜めすぎたんじゃないでしょうか?」

と苦笑しながら言ってきましたわね。

一応、仕事が終わってから畑に行く、というのは基本なんですが、たまに3日くらい仕事をしないで畑に集中してしまうときがあるんですのよね。

普段だと私もそろそろお父様の仕事が溜まっている頃だと気付くことが出来るんですが、今回は自分のことで手一杯すぎてすっかり忘れていましたわ。

ただ、執務室にいる、ということはわかったので、とりあえず一安心ですわね。

なんて思いながら、教えてくれたディアにお礼を言って急いで執務室に向かいましたわ。


私とディアの2人で執務室に到着すると、中から

「うーん........」

という唸り声が聞こえてきましたわね。

一体どうしたんでしょう?

今までも中から奇声が聞こえてくることはありましたが、唸り声というのは初めて聞きますわね。

思わず私の一歩後ろにいるディアの顔を見ると、私と同様に、何が起こっているのか、と驚いているみたいで片方の眉を下げて肩をすくめていましたわ。

ま、まぁ.....ここまできて話をせずに戻る、というのはおかしい話ですわよね。

そう思った私は、恐る恐るではありましたが、執務室を軽くノックして

「どうしましたの?」

と言いながら執務室に入ると

「あぁ、ヴァイオレットか........」

そう言って顔を上げたお父様の表情は、どこか疲れてはいるものの、特に変わった様子はなく、安心しましたわ。

いや、疲れた表情はしているので安心しても良いのか、とも思いますが.......。

とりあえず、お父様の座る椅子の正面に腰をかけて

「外まで唸り声が聞こえていましたわよ?お父様がそこまでなるのは珍しいですわね」

と言って、机の上にある書類をチラッと見ると

「そうなんだが..........いや、ちょっと問題があってな」

そう言いながら、見てはいけないものだったみたいで、隠されてしまいましたわ。

今まで執務室に入った時に書類を隠されることがなかったので、驚きですわよ。

それほどまで重要な内容だったんでしょうね。

だとしたら私の軽率な行動は反省しないといけませんわ。

そう思った私は、心の中でお父様に謝罪をして机の上に向けた視線を下に移すと

「ところでヴァイオレットの方から来るのは珍しいな。何かあったのか?」

と聞かれましたが.....まだ書類をどこに隠すか決まっていないみたいで、手に数枚の紙を抱えて苦笑していますわ。

な、なんだか悪いタイミングで来てしまいましたわね。

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