婚約破棄された貧乏令嬢ですが、意外と有能なの知っていますか？～有能なので王子に求婚されちゃうかも！？～

19話 キーンside

とりあえず、俺は父上が怒らないこと....というか、婚約破棄をしたと言ってもどこか逃げ道を作ることを最優先にして今日起こったことを報告した。

といっても、ビビアンを連れていたことでヴァイオレットが勘違いをしてしまったから......という話になっているが、父上には自分で伝えておくように、と言われたこと、とかは本当のことだ。

まぁ、されてしまったものは仕方がない、と父上なら言うと思っているが.....さっきの焦った様子を見ると、俺が想像していたよりもこの婚約破棄は間違ったことなのかもしれない。

いや、きっと大丈夫だな。

なんて思っていると、父上は俺の話を聞いて今まで聞いたこともないくらいの大きなため息をついたと思ったら、俺のことを睨みつけて来たではないか。

ため息の長さも驚いたが、それよりも父上からこんな視線を向けられたのは初めてだ.....。

正直、あの貧乏人との婚約破棄ごときでは、我が家に全く影響がないと思っていたのに、想定外すぎる。

そう思いながら、父上のあまりにも鋭い視線に何を言って良いのかわからず黙り込んでいると

「お前.....何度も話したはずだぞ？ヴァイオレット嬢との婚約が我が家にとってどれほど大事なものか、と」

そう言ってきた父上は今までにないくらい真剣な顔をしていて、自分がしたことはただ貧乏人と婚約破棄した、ということではないことは十分理解が出来た。

だが、我が家にとって大事、と言う言葉の意味が本当に理解が出来ないし、話したと言っているが俺は聞いていない。

だから父上の言葉に

「そ、それは.........」

と言葉を詰まらせていると、そんな俺の様子を見て

「たかが娼婦のような女ごときに現を抜かして婚約を破棄されるなど........」

本当に呆れてしまっているようで、何度目かわからない大きなため息をついた。

いや....俺は別に娼婦にうつつを抜かした、などそんなことはない。

純粋に貧乏人を連れて行くならビビアンでも同じなのでは？と思っただけだ。

まぁ、父上にそんなことを言ってもまた睨まれてしまうのはよくわかっているから

「で、ですが、ヴァイオレットの勘違いで......」

と言うのが精一杯だったけどな。

すると、父上は

「だったら今からでも行って誤解を解いてこい！」

まさかのそんなことを言ってきたではないか。

俺から婚約破棄したのに、勘違いだった、と話すのか？

一体なんのことだ、となるに決まっている。

そう思った俺は反射的に

「そ、そんなの無理ですっ！」

と答えると

「なぜだ？ヴァイオレット嬢に勘違いなんだ、と言えばいいだけではないか。そもそも、娼婦をパーティーに連れて行ったお前が一番悪いしな」

父上は、無表情でそう言うだけで、俺には拒否権など存在しないようだ。

今すぐにでもヴァイオレットと話しをして濃い、と言わんばかりに執務室の扉と俺を交互に見つめてきている。

はぁ......どうすればいいんだ？

とにかく今日は

「それはわかっていますが..........もう遅い時間なのでヴァイオレットにも迷惑がかかるかと........」

とだけ言って、父上に納得してもらった。

だが、ヴァイオレットとの婚約破棄については、何がなんでも許してくれないみたいだな......。

くっそ...どうにかして、ヴァイオレットとの婚約を再び結ぶしか......。