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6話 キーンside

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ヴァイオレットが立ち去った後、会場の中は少し気まずい空気が流れていた。

とはいっても、別に俺が原因ではないだろう!?

勝手にあいつが会場を出たからこんなことになっているのであって、俺は思ったことをハッキリと伝えただけ。

それなのに、会場の貴族たちは全員俺が悪いみたいな空気を出して、チラチラと様子を窺うように見ているし、一部の令嬢なんて、

「なんかキール様の方が必死感が凄かったですわよね」

なんて言いながらニヤニヤと笑っている奴までいる。

はぁ.......俺は何も悪くない!

そう思っていると、会場の変な空気を察したんだろう。

たった今、会場に入ってきたばかりの王太子『レオンハルト・ティーファン』様が

「何かあったのか?」

と言いながら、キョロキョロと辺りを見渡していた。

まぁ、せっかくのお祝いの場なのに微妙な空気だからな。

殿下だって、何があったのか気になるに決まっている。

そう思いながら、ビビアンの腰を抱いて、一歩殿下に近付くと、俺が近くに行くよりも先に

「何があったんだ?」

殿下の近くにいた子息に聞いてしまったではないか。

全く....陛下もわかっていないな。

こういう時は俺に聞いた方が求めている答えがしっかりと返ってくるというのに。

そう思いながら、殿下の方を見てバレないよう小さくため息をつくと、殿下に質問された子息が

「あ、あの........き、キーン様が........」

と言って俺の方を見ているではないか。

それも、まるで俺が問題を起こした、とでも言いたそうな目つきで。

しかも子息のせいで、殿下の視線が俺に向いて

「これはこれは、ガリアット伯爵子息。どうやら婚約者でもない他の令嬢を連れているようだがヴァイオレット嬢はどうしたんだい?」

と言われるのも納得が出来ないな。

というか、別にあいつと一緒に居ないことの何が悪いんだ?

陛下だって、側室と王妃の2人妻がいるんだから、他の貴族も2人以上女が居ても問題ないだろう。

そう思いながら、俺のことを睨みつけている殿下に

「たった今あの貧乏人とは婚約破棄をしましたよ。そしたらまだパーティーの途中だというのに勝手に会場を出て行ったんです」

笑いながらそう言った。

すると

「そうだったんだね。君のような人とヴァイオレット嬢では不釣り合いだと思っていたから、婚約破棄しても何も驚かないよ」

と殿下が言うではないか!

やはり、殿下から見ても、俺のような才能溢れる期待の子息と、ただの貧乏人は釣り合っていない、と思っていたんだな!

そう思った瞬間、やはり俺の考えは間違えではなかったんだ、と証明された気分になって

「そうですよね!やはり俺のような男と婚約するのには、ヴァイオレットなど釣り合っ.......」

釣り合っていない、と最後まで言う前に、

「あぁ、何を勘違いしているのかわからないけど、ヴァイオレット嬢の婚約者が君だと、釣り合っていない、という話だからね?」

満面の笑みでそういう殿下に俺は柄にもなく

「.......へ?」

と間抜けな声を出してしまった。








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