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26話

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セルドリック様と話をして2日が経ちました。

今のところなんの進展もなく、ルリアナ様と日課になっているお話の最中です。

「今日もエリザベス様のことを見ていましたわね」

ルリアナ様は呆れながらそう言いました。

確かに...あんなにジロジロと見られていては気が休みりませんわ。

「そうですわね。用心していたんですけど、無駄だったんですかね?」

はぁ...と頬を手を当ててため息をつきました。

何か仕掛けてくると思ったんですけどね。

リナリーさんを警戒していたから必要以上に気にしすぎたのかしら...?

そう思っていると

「お嬢様っ!」

という誰かの声が急に聞こえてきた、とほぼ同時に

カキーンっ

という何かの音が響きました。

音のした方を見ると、そのにはナイフを構えたアンナが居ます。

一体何があったのか聞こうとする前にアンナは颯爽とどこかに行ってしまいました。

何が起こったんですの......?

未だに状況が理解出来ず呆然としていると

「大丈夫ですの!?エリザベス様!」

顔を真っ青にしたルリアナ様が心配そうに私の近くに来ていました。

周りにいた生徒達も何事か、とこちらに注目しています。

「え、えぇ。大丈夫ですわ。アンナが守ってくれましたもの」

そう言って下を見ると、そこには1本の矢が落ちています。

もしかして、今のは私を狙って......?

いや、そうとしか考えられませんよね...。

そう思っていると

「大丈夫か!?エリザベス!ルリアナ嬢も!」

セルドリック様が現れました。

後ろにはお兄様とお義姉様もいます。

皆息を切らしているのを見ると走ってきたんでしょう。

心配そうな顔をしていますわ。

「えぇ、私は大丈夫です」

「狙われたのはエリザベス様の方ですから、私に被害は何もありませんわ」

私とルリアナ様が答えると、ホッとした表情に変わりました。

お兄様達はアンナが弾き落とした矢を見ています。

「これは......当たっていたら確実に死んでいただろうな......」

「えぇ。先端には猛毒ですか......犯人は大体想像つきますが、流石にこれは重罪ですわ」

それを聞いて、思わず背筋がゾワッとしました。

もし、アンナがいなかったら私は死んでいたでしょう。

犯人は想像つく......お義姉様がそう言いましたが、やっぱりあの人の仕業ですよね......。

何がなんでも自分が王妃になりたい、という執念が伝わってきます。

でも、流石にやりすぎですわ。

そう思っていると

「お嬢様、こいつがお嬢様に矢を放った奴です」

とアンナが1人の男性を連れて現れました。

「そ、それより、アンナに怪我は?大丈夫!?」

私としては犯人も大事ですが、アンナの方が大事です。

「はい。私は訓練も受けておりますので。お嬢様の無事を確認せず離れたことをお詫び申し上げます」

訓練を受けている、というのは初めて知ったけど、無事なら良かったわ......。

「そんなこと、謝らなくていいわ。犯人を捕まえる為に急いでくれたんでしょう?ありがとう」

そう言って、震えそうになる体をグッと抑えながら微笑むと、アンナは、いえ、と短く答えました。

この人が犯人ですか...一体どこから矢を放ったんでしょう?

学園内に侵入するなんて、結構強者ですよね......。

「さて、こいつが犯人か...どうします?殿下。一旦牢屋にぶち込んで後で詳しく聞きますか?」

お兄様がそう聞くと、セルドリック様は

「あぁ。それが良いだろう」

と頷きました。

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