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2話

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「エリザベス!目が覚めたのか...っ!」

そう言って部屋に飛び込んできたのはお兄様の『ハロルド・ライオット』だった。

走ってきたのか、肩で息をしている。

こんなこと今まで1度もありませんでした。

だって、私とお兄様はあまり関わりがなかったですもの。

嫌い、というわけでもありませんが、好きでもない......まぁ、ハッキリ言うと興味が無い、という感じですかね。

兄妹なのに?って今思いましたよね?

でも仕方のないことなんですよ?お兄様は隣国に留学していましたから......。

これは偶然か必然なのかわかりませんが、毎回リナリーさんが現れる少し前に戻ってくるのです。

お兄様と最後に話をしたのは3年前くらいですかね?

まぁ、つまりお兄様は本来ならここにいるはずがないのです。

それなのになぜここに居るんでしょう?

「エリザベス?ボーッとしてどうしたんだ?......まさか、具合が悪いとか...っ」

お兄様が少し焦った様子でそう言ってきた。

あぁ、いけませんわ。

驚きのあまり返事をするのを忘れていました。

なので、

「大丈夫ですわ」

とだけ言って微笑んだ。

お兄様もセルドリック様と同じ、リナリーさんに誑かされて、最後には私のことを裏切るんです。

だから必要なこと以外は何も話すつもりはありません。

そんなことより、この人達より、エマに会いたいですわ。

そう思って当たりを見渡すけど、エマがどこにも見当たらない。

「エマはどこですか?」

と私がお兄様に聞くと、セルドリック様とお兄様は2人で顔を見合わせて困った顔をした。

え?何か変なことを言いましたか?
 
私は自分の専属メイドのことを聞いただけなんですが......

思わず首を傾げるとお兄様に衝撃的なことを言われた。

「エリザベス......その...エマというのは誰のことなんだい?」

.........え?

「エマって......私の専属のメイドの......」

と私が呟くと次はセルドリック様から

「エリザベス嬢、申し訳ないが俺もエマというメイドの名前は1度も聞いたことがない」

と言われた。

どういうことですの?

エマが居ないなんて今回が初めてですわ。

お兄様達の態度もなんだかおかしいし、今回はいつもと何が違う。

「エリザベスの専属メイドはアーリアだよ。ほら、赤い髪の毛の身長が高めの......」

呆然としている私にお兄様はそう言ってきますが、話が入ってきません。

だって、私が唯一信頼していたエマが居ないなんて考えられません。

10回目にして、私は一人ぼっちになってしまった、ということでしょうか...?


お兄様とセルドリック様が必死に私に話しかけてきた。

でも、エマが居ない今回の転生は私にとって地獄でしかない。

そう思うと気分が一気に沈んだ。
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