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30話 ハルトside

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ナナリー嬢に了承を得たその日の夜、スカーレット嬢を断罪することを父上に伝えるため、執務室に向かった。

執務室に入ると、相変わらず父上は大量の書類と睨めっこ状態で、普段なら仕事中には絶対に話しかけないけど、今日は特別だ。

だからといって邪魔しに来た訳じゃないから、素早く要件だけを伝えて出よう。

「父上、お願いがあります」

俺がそう言うと、書類に目を向けたまま

「なんだ?」

と聞いてきた。

ちょっとくらい、こっちに顔を向けても...なんて思わない。

だって、俺が今から言うことで絶対に顔をあげるから。

「次の建国パーティー、少しだけ時間をくれませんか?」

真剣な顔で頼むと、思った通り父上は書類から顔をあげて面白そうに

「ほぉ......なぜ建国パーティーなんだ?」

と聞いてきた。

まぁ、確かにそういう反応するよな。

父上は俺がその建国パーティーでスカーレット嬢を断罪する、と気付いたみたいだ。

別室に呼んで、内密に...とか、学園で集会を開いて、とかも考えたけど、スカーレット嬢が一番ダメージのくらう方法で、と考えたら建国パーティーで、だった。

スカーレット嬢は建国パーティーでナナリー嬢と婚約破棄すると思っているはずだ。

皆の前で行うことで、プライドだけ無駄に高いスカーレット嬢の鼻をへし折ることが出来ると考えた。

あ、ついでに、こんなことをしたらお前らもこうなるよ、っていう見せしめでもある。

そっちがついで、というのはおかしいかも知れないが、俺的にはいかにスカーレット嬢を懲らしめるかが最優先だ。

という俺の思いを全て父上に伝えると、急に大きな声で笑いだした。

「ち、父上...?」

「すまんすまん。お前がそんなことを言うなんて思わなかったから、つい笑ってしまった」

そんなに意外だったか?

そう思いながら首を傾げていると、父上は

「あぁ、昔のお前だったら絶対言わなかっただろうな」

「そ...そうですか」

昔の俺?

確かに数年前までは、他人に対して何も興味がなかったかも知れない。

でもナナリー嬢と話をするようになってから、少しずつ色んなことに目を向けるようになった気がする。

まぁ、それも父上に言われるまで気が付かなかったが...。

そう考えていると、父上に

「建国パーティーの件はわかった。好きにしたらいい。その代わり......わかっているな?」

と言われた。

わかっているな?の意味は妹が魅了を使ったと知られたら、ナナリー嬢も、公爵家も立場が危うくなってしまう。

だからちゃんと、フォローするように、ということだ。

「はい。ナナリー嬢は俺が絶対に守ってみせます」

俺がそう答えると、父上は力強く頷いた。
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