26 / 41
25話
しおりを挟む陛下の指示で、魔導師と呼ばれる人が何か呪文を唱えると、殿下の体が光に包まれた。
すぐに光は消えたけど、これは...魅了が解けたのかな?
というか、本当に魅了だったの?
そう思っていると、陛下が心配そうに
「どうだ?成功か?」
と魔導師に聞くと、はい、と短く頷いたのが聞こえた。
成功...っていうか、まずは実際に魅了にかかっていたのか、かかっていないのかって話じゃないの?
もう陛下は魅了にかかっているって信じて疑わないのかよ。
まぁ、殿下は明らかにおかしいこと言ってたからさ、その気持ちもわかるんだけど......。
話くらいは聞こうよってね。
呆れながら陛下を見ていると
「あれ......俺は一体何を.........?」
と殿下が呟いた声が聞こえてきた。
あ、目が覚めた...っていうか、元に戻った、かな?
殿下はキョロキョロと辺りを見渡しながら呆然としている。
あー、あのタイプじゃない?魅了にかかっていた期間の記憶がないみたいなやつ。
そう思ってたから私は
「殿下、ここ1週間の記憶はありますか?」
の聞いてみると、殿下は静かに首を振って
「それが......生徒会室にスカーレット嬢が来たところまでは覚えているんだ。その後はどうなったのかさっぱり......俺がなぜここにいるのかもわからない」
そう答えた。
あらー、これはスカーレット黒ですわ。
もう黒を通り越して真っ黒。やっちゃったなぁ......
これは死刑案件だよなぁ。
だって、国の王太子に魅了を使ってさ、操ろうとしていたって言われても仕方ないよね。
「ハルト、さっきも1度言ったがお前は魅了にかかっていたんだ」
そう陛下が説明すると
「は?魅了ですか?そんなもの、存在するんですか!?いや、それより一体誰が......」
と驚いていた。
そりゃあそうだよな。
魔導師がいる時点でもビックリなのに、魅了まであるなんて聞いたら驚いちゃうって。
殿下は少し考えた後、私とお父様がいることでスカーレットが犯人だってわかったみたい。
少し顔色をうかがいながら
「スカーレット嬢か...?」
と私に聞いてきた。
嘘つく必要も無いし普通に頷くよね。
あ、殿下がなんか複雑な表情してる。
一応婚約者の妹だからねぇ。
複雑な心境になるわ。
殿下的には私が悪くないこともわかっているからこそ、余計行き場のない怒りをどうしようって状態だよね。
いやー......うちの愚妹が本当に申し訳ないわ......。
あ、でもこれって婚約破棄するチャンスでもあるのか?
ちょっと言ってみようかなぁ......。
そんな軽い気持ちで
「あの......スカーレットのせいでこんなことになってしまって申し訳ございません。そのようなことをした者の姉との婚約なんて、世間体にも悪いので婚約を白紙に.........」
と私が言い終わる前に
「ナナリー嬢とは婚約破棄しない!」
と殿下が叫んだ。
えぇ......マジで...?
72
お気に入りに追加
4,983
あなたにおすすめの小説
ご令嬢は一人だけ別ゲーだったようです
バイオベース
恋愛
魔法が有り、魔物がいる。
そんな世界で生きる公爵家のご令嬢エレノアには欠点が一つあった。
それは強さの証である『レベル』が上がらないという事。
そんなある日、エレノアは身に覚えの無い罪で王子との婚約を破棄される。
同じ学院に通う平民の娘が『聖女』であり、王子はそれと結ばれるというのだ。
エレノアは『聖女』を害した悪女として、貴族籍をはく奪されて開拓村へと追いやられたのだった。
しかし当の本人はどこ吹く風。
エレノアは前世の記憶を持つ転生者だった。
そして『ここがゲームの世界』だという記憶の他にも、特別な力を一つ持っている。
それは『こことは違うゲームの世界の力』。
前世で遊び倒した農業系シミュレーションゲームの不思議な力だった。
【完結】婚約破棄され処刑された私は人生をやり直す ~女狐に騙される男共を強制的に矯正してやる~
かのん
恋愛
断頭台に立つのは婚約破棄され、家族にも婚約者にも友人にも捨てられたシャルロッテは高らかに笑い声をあげた。
「私の首が飛んだ瞬間から、自分たちに未来があるとは思うなかれ……そこが始まりですわ」
シャルロッテの首が跳ねとんだ瞬間、世界は黒い闇に包まれ、時空はうねりをあげ巻き戻る。
これは、断頭台で首チョンパされたシャルロッテが、男共を矯正していくお話。
悪役令嬢に仕立てあげられて婚約破棄の上に処刑までされて破滅しましたが、時間を巻き戻してやり直し、逆転します。
しろいるか
恋愛
王子との許婚で、幸せを約束されていたセシル。だが、没落した貴族の娘で、侍女として引き取ったシェリーの魔の手により悪役令嬢にさせられ、婚約破棄された上に処刑までされてしまう。悲しみと悔しさの中、セシルは自分自身の行いによって救ってきた魂の結晶、天使によって助け出され、時間を巻き戻してもらう。
次々に襲い掛かるシェリーの策略を切り抜け、セシルは自分の幸せを掴んでいく。そして憎しみに囚われたシェリーは……。
破滅させられた不幸な少女のやり直し短編ストーリー。人を呪わば穴二つ。
婚約破棄された令嬢は変人公爵に嫁がされる ~新婚生活を嘲笑いにきた? 夫がかわゆすぎて今それどころじゃないんですが!!
杓子ねこ
恋愛
侯爵令嬢テオドシーネは、王太子の婚約者として花嫁修業に励んできた。
しかしその努力が裏目に出てしまい、王太子ピエトロに浮気され、浮気相手への嫌がらせを理由に婚約破棄された挙句、変人と名高いクイア公爵のもとへ嫁がされることに。
対面した当主シエルフィリードは馬のかぶりものをして、噂どおりの奇人……と思ったら、馬の下から出てきたのは超絶美少年?
でもあなたかなり年上のはずですよね? 年下にしか見えませんが? どうして涙ぐんでるんですか?
え、王太子殿下が新婚生活を嘲笑いにきた? 公爵様がかわゆすぎていまそれどころじゃないんですが!!
恋を知らなかった生真面目令嬢がきゅんきゅんしながら引きこもり公爵を育成するお話です。
本編11話+番外編。
※「小説家になろう」でも掲載しています。
【完結】小悪魔笑顔の令嬢は断罪した令息たちの奇妙な行動のわけを知りたい
宇水涼麻
恋愛
ポーリィナは卒業パーティーで断罪され王子との婚約を破棄された。
その翌日、王子と一緒になってポーリィナを断罪していた高位貴族の子息たちがポーリィナに面会を求める手紙が早馬にて届けられた。
あのようなことをして面会を求めてくるとは??
断罪をした者たちと会いたくないけど、面会に来る理由が気になる。だって普通じゃありえない。
ポーリィナは興味に勝てず、彼らと会うことにしてみた。
一万文字程度の短め予定。編集改編手直しのため、連載にしました。
リクエストをいただき、男性視点も入れたので思いの外長くなりました。
毎日更新いたします。
乙女ゲームの世界だと、いつから思い込んでいた?
築地シナココ
ファンタジー
母親違いの妹をいじめたというふわふわした冤罪で婚約破棄された上に、最北の辺境地に流された公爵令嬢ハイデマリー。勝ち誇る妹・ゲルダは転生者。この世界のヒロインだと豪語し、王太子妃に成り上がる。乙女ゲームのハッピーエンドの確定だ。
……乙女ゲームが終わったら、戦争ストラテジーゲームが始まるのだ。
侯爵令嬢の置き土産
ひろたひかる
恋愛
侯爵令嬢マリエは婚約者であるドナルドから婚約を解消すると告げられた。マリエは動揺しつつも了承し、「私は忘れません」と言い置いて去っていった。***婚約破棄ネタですが、悪役令嬢とか転生、乙女ゲーとかの要素は皆無です。***今のところ本編を一話、別視点で一話の二話の投稿を予定しています。さくっと終わります。
「小説家になろう」でも同一の内容で投稿しております。
義母たちの策略で悪役令嬢にされたばかりか、家ごと乗っ取られて奴隷にされた私、神様に拾われました。
しろいるか
恋愛
子爵家の経済支援も含めて婚約した私。でも、気付けばあれこれ難癖をつけられ、悪役令嬢のレッテルを貼られてしまい、婚約破棄。あげく、実家をすべて乗っ取られてしまう。家族は処刑され、私は義母や義妹の奴隷にまで貶められた。そんなある日、伯爵家との婚約が決まったのを機に、不要となった私は神様の生け贄に捧げられてしまう。
でもそこで出会った神様は、とても優しくて──。
どん底まで落とされた少女がただ幸せになって、義母たちが自滅していく物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる