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3話

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スカーレットが入学してから1ヶ月がたった。

「ハルト様ぁ~」

というスカーレットの甘ったるい声が今日も響き渡る。

なぜか3年生になってからハルト殿下は基本的に私と共に行動している。

なんと、私は生徒会長になってしまったのだ。

ゲーム内ではハルト殿下が生徒会長、スカーレットは1年生ながらも書記として生徒会に入る予定なのになぜかそれは起こらなかった。

逆に生徒会の皆が、スカーレットを生徒会に入れるなんて...っ!という反応をした。

それもそうだよね。

ここ最近は他の攻略キャラにも手を出し始めちゃってるから、婚約者の居る男性に擦り寄るアバズレ、という評価に変わってきている。

そのせいで、スカーレットに言い寄られている子息令嬢たちが私に助けを求めに来ている状況だ。

ハルト殿下も子息令嬢たち同様で、スカーレット避けとして学園でほとんどの行動を共にするようになってしまった。

この時点で、もうゲームの設定なんて無くなったなって私は思っている。

そして今日は生徒会室で仕事をしている。

なのにスカーレットは当たり前のように生徒会室に入ってきて、ハルト殿下に媚びを売っている。


「ハルト様~、私も生徒会に入りたいですぅ」

スカーレットはそう言ってハルト殿下の腕に擦り寄った。

うんうん、そうだよね。

入らなきゃ発生しないイベントが多いもんね。

でも、ハルト殿下はスカーレットを押しのけて

「すまないが、俺は会長じゃないからな。許可できない」

と冷たく返事を返した。

ヒロインに対してその態度はさすがの私も驚きよ!?

そう思ってその光景を眺めていると

「酷いわ!お姉様!」

と私に叫んできた。

あー...もう勝手にやっててくれ。

すると、意外なことに助けを出したのはハルト殿下だった。

「別にナナリー嬢が悪い訳では無い。そんなに入りたいなら先生に頼んでくれ」

「そんなぁ......」

ハルト殿下にそう言われ、スカーレットはキッと私を睨みつけてから生徒会室を出ていった。

私は、これで本当に先生に媚び売って生徒会に入ったら辞めてやろうかしら?と思いながらスカーレットが出ていった扉を眺めていた。

すると、ハルト殿下は

「......ナナリー嬢、妹をどうにか出来ないものか?」

と私に尋ねてきたので

「申し訳ございません。何度言い聞かせても、酷いわ!しか言わないもので......」

と正直に話した。

これは本当のことだ。

何度忠告しても、ヒロインだから、とか、酷いわ!って言って全く反省する気がない。

私の話を聞いて

「あぁ...なるほど......ナナリー嬢も大変だな」

そう言ったハルト殿下の言葉に生徒会のメンバー全員が頷いたのだった。
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