竜と水面に光る街

ひかり

文字の大きさ
上 下
20 / 30
4章・プリンセス・マーメイド

しおりを挟む




 「はい、ご心配なく……
では、失礼します。」

 青木さんには、あまり詳しいことは話さず、とにかく今夜は美幸さんをうちに泊めるということだけを伝えた。
 当の美幸さんはかなり本格的に熟睡されてて、電話をかけてる間もソファの上で眠りこけたまま。



 私は、その間に客間に布団を敷き、美幸さんの肩を叩いた。



 「美幸さん、あっちに行きましょう。」

 「う…うん…」

よろよろされながらもなんとか歩いて下さって、布団に寝かせるとそのまままた静かになった。



 *



 (それにしても、美幸さんの落ちこみようは酷かったなぁ…)



 美幸さんは起きられる様子がなかったので、お風呂にお誘いするのはやめておいた。
 明日の朝にでも入っていただけば良い。
お風呂の中で、さっきの会話を思い出しながら、どうしたものかと私は考えた。
やっぱり、KEN-Gさんにはお話しといた方が良いだろう。
 KEN-Gさんなら、シュウさんと直接話すことも出来るだろうし、それとなく聞いてもらえるんじゃないかしら?

それにしても、純平さんがあんな露骨なことをおっしゃるなんて、ちょっと信じられない。
 美幸さんと純平さんは、傍目にも気が合ってるように見えたのに…… 
あ…そういえば、私も純平さんの名刺はもらってたんだ。
 連絡して訊いてみたいけど…でも、私が突然電話なんてかけたら驚かれるわね。
それに、言いにくいことだし……



お風呂から上がって、リビングで寛いでいると、携帯の着信音が鳴った。
それは、美幸さんのバッグの中から……
もしかしたら、青木さん…!?



 申し訳なかったけど、バッグを開けて美幸さんのスマホを取り出した。
そこに表示されてたのは、「純平くん」の文字。



 「は、はいっ!」

 私は反射的に受話ボタンを押してしまった。



 「……あれ?これって……」

 「は、はい、みゆ…ひかりさんのスマホです。」

 「え……?あの…あなたは?」

 「美咲です。」

 「あぁ、美咲さん。あれっ?ひかりちゃんは?」

 私は手短に今の状況を話した。



 「そうだったんですか。それでさっきも出てくれなかったんですね。
じゃあ、また掛け直します。」

 「ま、待って下さい!」

 「え…?」

 「純平さんにお訊ねしたいことがあるんです!」
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

BL団地妻-恥じらい新妻、絶頂淫具の罠-

おととななな
BL
タイトル通りです。 楽しんでいただけたら幸いです。

国王の嫁って意外と面倒ですね。

榎本 ぬこ
BL
 一国の王であり、最愛のリヴィウスと結婚したΩのレイ。  愛しい人のためなら例え側妃の方から疎まれようと頑張ると決めていたのですが、そろそろ我慢の限界です。  他に自分だけを愛してくれる人を見つけようと思います。

【短編】乙女ゲームの攻略対象者に転生した俺の、意外な結末。

桜月夜
BL
 前世で妹がハマってた乙女ゲームに転生したイリウスは、自分が前世の記憶を思い出したことを幼馴染みで専属騎士のディールに打ち明けた。そこから、なぜか婚約者に対する恋愛感情の有無を聞かれ……。  思い付いた話を一気に書いたので、不自然な箇所があるかもしれませんが、広い心でお読みください。

悪役令息に転生したけど…俺…嫌われすぎ?

「ARIA」
BL
階段から落ちた衝撃であっけなく死んでしまった主人公はとある乙女ゲームの悪役令息に転生したが...主人公は乙女ゲームの家族から甘やかされて育ったというのを無視して存在を抹消されていた。 王道じゃないですけど王道です(何言ってんだ?)どちらかと言うとファンタジー寄り 更新頻度=適当

例え何度戻ろうとも僕は悪役だ…

東間
BL
ゲームの世界に転生した留木原 夜は悪役の役目を全うした…愛した者の手によって殺害される事で…… だが、次目が覚めて鏡を見るとそこには悪役の幼い姿が…?! ゲームの世界で再び悪役を演じる夜は最後に何を手に? 攻略者したいNO1の悪魔系王子と無自覚天使系悪役公爵のすれ違い小説!

皇帝の立役者

白鳩 唯斗
BL
 実の弟に毒を盛られた。 「全てあなた達が悪いんですよ」  ローウェル皇室第一子、ミハエル・ローウェルが死に際に聞いた言葉だった。  その意味を考える間もなく、意識を手放したミハエルだったが・・・。  目を開けると、数年前に回帰していた。

ギルド職員は高ランク冒険者の執愛に気づかない

Ayari(橋本彩里)
BL
王都東支部の冒険者ギルド職員として働いているノアは、本部ギルドの嫌がらせに腹を立て飲みすぎ、酔った勢いで見知らぬ男性と夜をともにしてしまう。 かなり戸惑ったが、一夜限りだし相手もそう望んでいるだろうと挨拶もせずその場を後にした。 後日、一夜の相手が有名な高ランク冒険者パーティの一人、美貌の魔剣士ブラムウェルだと知る。 群れることを嫌い他者を寄せ付けないと噂されるブラムウェルだがノアには態度が違って…… 冷淡冒険者(ノア限定で世話焼き甘えた)とマイペースギルド職員、周囲の思惑や過去が交差する。 表紙は友人絵師kouma.作です♪

6回殺された第二王子がさらにループして報われるための話

あめ
BL
何度も殺されては人生のやり直しをする第二王子がボロボロの状態で今までと大きく変わった7回目の人生を過ごす話 基本シリアス多めで第二王子(受け)が可哀想 からの周りに愛されまくってのハッピーエンド予定

処理中です...