桃太のおだんご(隠語)は大人気

ぱぴっぷ

文字の大きさ
上 下
60 / 61

おまけ (葵、美鳥の、ある日の話)

しおりを挟む
「いつもお世話になっております、鬼島副社長」

「あら、ごきげんよう、この間の契約ですが……」

 はぁっ…… 副社長ともなれば同業者などを集めたパーティーに呼ばれる事があり、会社のために参加しなくてはいけないのですが…… 正直面倒臭いですわ。

 早く家に帰って皆さんとおしゃべりしたり、子供達と遊んで癒されたいですわ。

 でも今日はお父様とお母様が居る手前、出席しないわけにはいかなくて…… そんな憂鬱なパーティーですけど、ふふっ、今日は強力な助っ人が来ているので気分が良いですわ!!

「あの…… 鬼島副社長、隣の方は?」

「ああっ失礼、わたくしの主人の桃太様ですわ」

「葵がお世話になってます、吉備桃太と申します」

「ご、ご主人、では……」

 ふふふっ、分かってしまいましたか? 分かってしまいましたわね! おーっほっほっ! そう、桃太様が抱いている可愛い可愛いわたくし達の宝物…… 

「そしてこちらが娘の『紫音《しおん》』ですわ!!」

 知らない変な人ばかりいますから、怯えてパパにしがみついちゃってますわ…… ふふっ、あぁ、そんなわたくし達の子、可愛いですわー!

 葵と桃太、青とピンクから生まれた紫音…… 一歳になりましたが目元と髪色はわたくしに、鼻と口元は桃太様に似て…… 食べちゃいたいくらい可愛いんですの。

 そんな愛する旦那様と娘を助っ人として連れてきたので、わたくしは今、上機嫌ですわ! ……本当はわたくしがパーティーに出るのを渋っていたので、お父様が桃太様もパーティーに出るよう手を回したんですけどね。

「可愛らしいお嬢さんですね、跡継ぎも生まれて鬼島グループは安泰……」

「紫音ちゃーーん!! じぃじでちゅよー!」

「へっ!? き、鬼島虎雄会長……」

「あなた! もう、わたくしドレスなんですから走り出さないで下さいまし! ……あらぁ! 紫音ちゃんごきげんよう、グランマですわよー?」

「あ、朱凛社長まで…… い、いつもお世話に……」

「あぁっ、今日も可愛いぃぃっ!! えへえへっ……」

「まったく…… 虎雄さんは紫音ちゃんにメロメロですわね、あら、葵、桃太さんもごきげんよう」

「ごきげんよう、お母様、お父様……」

 お父様、わたくしをパーティーに参加させたいんじゃなくて、紫音を連れて来て欲しかっただけじゃないんですの!?

「あっ、これはこれは…… 先日の契約の件は……」

 お父様? 今更取り繕っても孫にデレデレしているのはバッチリ見られてますから意味ないですわよ? ちゃっかり紫音を抱っこしてますし。

 
 紫音が誕生し、急激に元気になったお父様。
 今では月に一度、病院で検査をしていますが普通に生活を送れるまでに回復しました。

 わたくしもお母様もそれは泣くほど嬉しかったのですが…… 

「ありゃ、どうちたんだい紫音ちゃん? あっちのピカピカ光ってるのが気になるのかなぁー?」

 元気過ぎて困るくらいですわ。
 特に紫音の事となると、更に元気になって…… 毎日『写真を送れ』だの『テレビ電話させろ』だの、しまいには『丁度仕事でこっちの方に来たから寄っちゃった』なんてわざわざ遠回りしてまで紫音に会いに来て…… 困りますわ。

「あなた…… 紫音ちゃんが泣き出しそうですから、わたくしが抱っこしますわ」

 お母様もお父様ほどではないにしろ紫音にデレデレ、わたくしの時みたいに英才教育とまではいかないが、あれこれ知育玩具を買い与えては一緒に遊んでいますわ。 

「ふふっ、グランマですわよ…… あらあら、ママではないですから、スイカジュースは出ませんよー?」

 お母様!? 紫音にドレスを引っ張られて只でさえ見えそうなスイカがしっかり見えてしまいますから! 早く隠して下さいましー! 

 ……はぁ、疲れますわぁ。

「あははっ、葵、大丈夫か?」

「大丈夫じゃありませんわ…… 慰めて下さいまし」

「ははっ、お疲れ様」

 あぁん…… 桃太様がわたくしの背中を優しくさすって慰めてくれてますわぁ…… 好きぃ、愛してますわぁ。

 自宅で仕事をしている時も、こうしていつも慰められて、愛されて…… あぁ、幸せですわぁ……

「あら? 先ほど挨拶に来てくれた方は?」

「えっ? 三人とも話しかけても反応ないからもう行っちゃったぞ?」

 まあ! それは…… 仕方ないですわね、お父様とお母様もこれでは話にならないですし、とりあえず食事でも取りに行きましょうか。

 


 ◇


「吉備団子店のCM!?」

「はい、鬼島グループがスポンサーになってくれて私が主演みたいです、ローカルCMですけど、それで撮影の時……」


 
 今日は葵さんからの仕事で、吉備団子店のCM撮影に来ています。

 桃太さんのお団子の美味しさをもっと広めるため、葵さんが企画したらしいのですが…… 

「あぅっ! あぁっ、だぁっ」

 うふふっ、娘の彩羽《いろは》…… 私と桃太さんとの間に生まれた可愛い娘。
 私そっくりな顔、だけど輪郭や耳の形は桃太さんそっくりなんですよね。

 今日はママが頑張ってお仕事をしている所を見ていて下さいね? パパと一緒に。

「あぅ、まぁま、まぁま」

 うふふっ、ママはここに居ますよー? 
 あーん、可愛いです…… 

「美鳥、頑張ってね」

 はい! うふふっ、桃太さんと彩羽に見守られながらの仕事…… やる気が溢れてきます!

 吉備団子店のCMなので、CMに使うお団子は桃太さんの作った本物を使います。
 そのために撮影現場に桃太さんも来てもらいました。
 彩羽は…… 可愛いから連れて来ました。
 決して桃太さんと彩羽と私が幸せそうにしているところを多くの人に見せびらかしたいなんで気持ちはこれっぽっちもありません! 本当ですよ?

 でも、なるほど…… 先日、葵ちゃんが仕事でパーティーに出席した時に、桃太さんと紫音ちゃんを連れて行ったら調子が良かったと言っていたのが分かる気がします。

 愛する人達が近くにいるだけでこんなに気分が違うんですね。

「では撮影を開始しまーす、HATOKOさんはみたらし団子を一口食べてから『お団子食べるなら、吉備団子店!』でお願いします」

 うふふっ、分かりました。

 子供を産んでからは仕事量はかなり減らして、水着での撮影はNG、今はママさん向けのファッション雑誌やママタレントとしてちょこっとテレビに出るくらい。

 でも仕事を減らしていても一応プロですから大丈夫です。

「それでは、3、2、……」

 みたらし団子を…… あぁん…… んぐっ、んぐっ…… うふふっ、美味しいです、これは桃太さんの準備したお団子ですね。

『お団子食べるなら……』

「カット!! …………」 

 えっ!? えっ!? 今のバッチリじゃなかったですか? とても美味しそうに食べていた自信があるんですけど! 

「あのー、非常に言いにくいんですが…… もうちょっと普通に食べてもらえますか?」

 普通に食べる!? えっ、普通に食べてましたけど、どこがいけなかったんですか!? 

「いやぁ…… あの…… えぇっと…… ちょっとセンシティブというか、何というか……」

 センシティブ!? そんな危ない食べ方をしていましたか? 

「その、ある意味危険というか……」

 それじゃあ分かりません! はっきり言って下さい!

 あぁ! 彩羽、ママ怒ってないですからね? パパ? パパからも言ってあげて下さい。

「……はっきり言うと、食べ方がちょっぴりエッチだから普通に食べて下さい」

 エ、エッチ!? ……小声で言ってくれて助かりました、娘には聞かせられませんから、でも、えっ? エッチって…… あれが?

 どこがエッチなんですか、上品に食べてましたよ?

 ……桃太さんの前では、たまにお下品でよだれたっぷりと垂らしながら食べちゃう時はありますが。

 分かりました、普通に食べます。

「それでは、3、2、……」

 普通に…… 普通に…… あぁむっ、んんっ、桃太さんのお団子ぉ…… やっぱり美味しいですぅ……

『お団子食べ……』

「カァァット! カット、カット! HATOKOさん!? さっきよりも…… エ、そ、そうなってましたよ!?」

 えぇーっ!? 普通に美味しそうに食べているつもりですよ! 


 その後、何度もNGを出し、桃太さんの用意したお団子が無くなってしまった。

 そしてスタッフさんが急遽用意した市販のみたらし団子を食べて撮影したら一発OKになりました…… 何ででしょう?

 ちなみに彩羽はママの勇姿を見る事なく、パパに抱っこされスヤスヤ寝ていました…… 残念です……
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

友達の母親が俺の目の前で下着姿に…

じゅ〜ん
エッセイ・ノンフィクション
とあるオッサンの青春実話です

極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~

恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」 そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。 私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。 葵は私のことを本当はどう思ってるの? 私は葵のことをどう思ってるの? 意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。 こうなったら確かめなくちゃ! 葵の気持ちも、自分の気持ちも! だけど甘い誘惑が多すぎて―― ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

乗り換え ~結婚したい明子の打算~

G3M
恋愛
 吉田明子は職場の後輩の四谷正敏に自分のアパートへの荷物運びを頼む。アパートの部屋で二人は肉体関係を持つ。その後、残業のたびに明子は正敏を情事に誘うようになる。ある日、明子は正敏に結婚してほしいと頼みむのだが断られてしまう。それから明子がとった解決策 は……。 <登場人物> 四谷正敏・・・・主人公、工場勤務の会社員 吉田明子・・・・正敏の職場の先輩 山本達也・・・・明子の同期 松本・・・・・・正敏と明子の上司、課長 山川・・・・・・正敏と明子の上司

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

貞操観念逆転世界におけるニートの日常

猫丸
恋愛
男女比1:100。 女性の価値が著しく低下した世界へやってきた【大鳥奏】という一人の少年。 夢のような世界で彼が望んだのは、ラブコメでも、ハーレムでもなく、男の希少性を利用した引き籠り生活だった。 ネトゲは楽しいし、一人は気楽だし、学校行かなくてもいいとか最高だし。 しかし、男女の比率が大きく偏った逆転世界は、そんな彼を放っておくはずもなく…… 『カナデさんってもしかして男なんじゃ……?』 『ないでしょw』 『ないと思うけど……え、マジ?』 これは貞操観念逆転世界にやってきた大鳥奏という少年が世界との関わりを断ち自宅からほとんど出ない物語。 貞操観念逆転世界のハーレム主人公を拒んだ一人のネットゲーマーの引き籠り譚である。

まずはお嫁さんからお願いします。

桜庭かなめ
恋愛
 高校3年生の長瀬和真のクラスには、有栖川優奈という女子生徒がいる。優奈は成績優秀で容姿端麗、温厚な性格と誰にでも敬語で話すことから、学年や性別を問わず人気を集めている。和真は優奈とはこの2年間で挨拶や、バイト先のドーナッツ屋で接客する程度の関わりだった。  4月の終わり頃。バイト中に店舗の入口前の掃除をしているとき、和真は老齢の男性のスマホを見つける。その男性は優奈の祖父であり、日本有数の企業グループである有栖川グループの会長・有栖川総一郎だった。  総一郎は自分のスマホを見つけてくれた和真をとても気に入り、孫娘の優奈とクラスメイトであること、優奈も和真も18歳であることから優奈との結婚を申し出る。  いきなりの結婚打診に和真は困惑する。ただ、有栖川家の説得や、優奈が和真の印象が良く「結婚していい」「いつかは両親や祖父母のような好き合える夫婦になりたい」と思っていることを知り、和真は結婚を受け入れる。  デート、学校生活、新居での2人での新婚生活などを経て、和真と優奈の距離が近づいていく。交際なしで結婚した高校生の男女が、好き合える夫婦になるまでの温かくて甘いラブコメディ!  ※特別編3が完結しました!(2024.8.29)  ※小説家になろうとカクヨムでも公開しています。  ※お気に入り登録、感想をお待ちしております。

美人四天王の妹とシテいるけど、僕は学校を卒業するまでモブに徹する、はずだった

ぐうのすけ
恋愛
【カクヨムでラブコメ週間2位】ありがとうございます! 僕【山田集】は高校3年生のモブとして何事もなく高校を卒業するはずだった。でも、義理の妹である【山田芽以】とシテいる現場をお母さんに目撃され、家族会議が開かれた。家族会議の結果隠蔽し、何事も無く高校を卒業する事が決まる。ある時学校の美人四天王の一角である【夏空日葵】に僕と芽以がベッドでシテいる所を目撃されたところからドタバタが始まる。僕の完璧なモブメッキは剥がれ、ヒマリに観察され、他の美人四天王にもメッキを剥され、何かを嗅ぎつけられていく。僕は、平穏無事に学校を卒業できるのだろうか? 『この物語は、法律・法令に反する行為を容認・推奨するものではありません』

処理中です...