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あれか!! あれのせいか!!

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『愛してる』……か、あまり照れ臭くて言えないが、言葉にした方が喜んでくれるんだな。

「桃くぅーん! 美味しい、美味しいよぉぉっ!」

「うぅっ、桃太さん! 桃太さぁん!」

「桃太ぁ! っ、あたしもっ、愛してるぞっ!」

「わたくしも、あぁっ! 愛してますわぁっ、美味しいぃぃぃっ!」

 喜んでくれる…… うん、喜んで…… 

「えへへっ、もっとぉ……」

「まだ、食べれますぅ……」

「あぁ、あたしも、食べたい」

「ふ、ぇぇっ…… わらくしもぉ…… まら、たべられましゅぅ……」

 約一名は満腹過ぎて呂律が回ってないが、みんなおだんごを離そうとしない。

 俺も愛してると言った事によって空腹になったのか、食欲が止まらなくなった四人に順番におだんごを振る舞い続けていた。

 さすがの俺も作るのが限界になってきたから食べさせるのを止めようと思ったのだが、そんな時に千和が口移しで飲ませてきた謎の液体によって、不思議な事におだんごを作る意欲がまた湧いてきてしまった……

「んっ、美味し…… んぐっ」

「色んな、タレの味がしますぅ……」

「へへっ、またおだんごが出来たな……」

「おいひい、でしゅわぁ……」

 ふと床の方を見ると、先ほど冷蔵庫で発見した謎のドリンクの瓶が空になって転がっている……

 ……あれか!! あれのせいか!!

「じゃああたしがいただくから…… んっ、美味いぃっ」

 

 …………



 …………





「あーっ、美味しかったぁ!」

「はぁ、食べ過ぎましたね」

「ふぅっ! 食ったぁ…… おい、あお! 風呂に行こうぜ」

「ひぁぁっ…… もう、たべられましぇんわぁぁ……」

「桃くんは…… 休ませてあげようか」

「そうですね、作り過ぎて元気がなくなっちゃいましたね」

「へへっ、元気ないのも可愛いんだよなぁ」

「おにゃか、いっぱい……」

 
 ……女の人のお腹と体力はどうなってるんだ?
 あれだけ食べて、ヘロヘロになっていたのに気が付けばまた楽しそうにおしゃべりしながら風呂場に行って…… 葵以外は。

 三人に抱えられるように連れて行かれた葵だが大丈夫なんだろうか? 

 あー、疲れたぁ…… 今日はもうおだんご屋は閉店だな。

 それにしても、あんなに生でおだんごを食べたら…… 誰かは太るよな。

 薄々分かってはいたが、そのための旅行という事で四人ともかなり体調に気を使っていた。

 万全のコンディションで食べるため…… だから旅行前は食べるのが控えめだったのか。
 今更だが、それならいっそ食べるのを我慢した方がいいのでは? と思うが、四人は我慢はしたくなかったみたいだな。

 とりあえず太るか太らないかはしばらく経たないと分からないし、太ったらお祝いしないと……

 色々な未来を想像し、楽しみでもあるが不安にもなる。
 そんな事を考えていると、疲れで眠気が襲ってきて……


 ◇


「葵さん、はい、広げてねー?」

「ふぁい…… わかりましたわぁ……」

 まだフワフワしているであろう葵さんの身体を洗う。
 美味しく食べた後の口からまだ残っていたタレが溢れてきて……

「はぁ…… まだお腹がいっぱいな気がしますぅ」

「あぁ、練乳みたらしがまだ口から垂れてくるぞ…… へへっ」

 みんな昨日からいっぱい食べたもんね、そういう私も…… えへへっ。

 桃くんが私達のために一生懸命おだんごを作ってくれた証。
 残さず食べて…… えへへっ、きっと太っちゃうね。

 えへへっ、顔がにやけちゃう! ずっと、ずっとこうしていっぱい食べたかったんだぁ。
 でもやっぱり私一人だと……

「あぁん…… お腹いっぱい過ぎて足がガクガクしますわぁ……」

 きっと早い段階でこうなっていた…… 桃くんのおだんご作りは凄いから。
 学校の友達の麗菜ちゃんと美々ちゃんにおだんご作りの事をやんわり話した時にドン引きされちゃったもんね。

 だからみんなが桃くんを好きになって一緒におだんごを食べてくれて嬉しい。

 桃くんのおだんごを食べた仲間だからか、おだんご作り中もそれ以外の時も、こうして触れ合うのに抵抗は全くない、おだんごで繋がる強い絆って言うのかなぁ? お互いにより美味しく食べるためなら、どんなサポートだって出来ちゃう。

「千和さん…… ありがとうございます……」

「いいんだよ、私達『家族』でしょ?」

「……はい『家族』ですわね、ふふっ」

 ご主人様の桃くんに尽くす、お姉さん二人に双子の姉妹…… きっとそんな感じ、えへへっ。

「……ちゃんと太れよ? へへっ」

「きっと太りますよ」

 自分のお腹をさするきーちゃんと美鳥さん。

「太って下さいまし……」

 お腹に手を当てお願いする葵さん、そして……

「きっと太る…… 桃くんの美味しいおだんごで……」

 そう強く願い、私はお腹に手を当てた。


 ◇


 いつの間にか寝てしまったみたいだ…… でも身体が温かくて、もう少し寝ていたい……

「うふふっ」

「ぐっすり寝ていますわね」

「疲れたんだろうな」

「もう少し寝かせてあげよう?」

「ではリビングで取り寄せた有名店のチョコを食べながらティータイムにしましょうか」

「いいですね、そうしましょう」

「へへっ、何だかセレブみたいだな!」

「じゃあ私はコーヒーを用意するね ……桃くん、ゆっくり休んでね、んっ…… んっ、ちゅっ、んーっ」

「ちい! 長いぞ!」

「えへへっ、ごめんごめん」

 ……ぷはっ、長くてちょっと苦しかったなぁ…… うぅん…… 眠っ……
 

 ◇


「ふふっ、おかしいですわね」

「えっ?」

「優雅に外を眺めながらコーヒーを飲んでいる四人が…… フルーツ丸出しなんですもの」

 えへへっ、たしかに…… でも、窮屈じゃないし私的には楽かなぁ? 支えがないからスイカは重いけど。

 それにしてもみんなスタイルがいいよね…… 私はちんちくりんでぷよぷよしているから。

「何を言ってるんですか? 私からしたら羨ましいですよ」

「あたしも羨ましいな…… それ」

 これは…… 桃くんが喜んでくれるだけで、日常生活では邪魔だよ? 

「そうですわね、今までは邪魔でしたが…… 桃太様が気に入ってくれたのであって良かったですわ」

 気に入ってるのは間違いないけど、それでもやっぱりね…… 桃くんはどのフルーツも好きだしいっぱい食べてくれるけど、全体的に見たら…… 

 みんな開放的になってる今だから余計にそう感じるのかなぁ? ……うーん、痩せた後トレーニングでもしようかな?

「千和ちゃんはそのままで良いんではないですか?」

「ああ、桃太が悲しむぞ」

「なんだかんだ言っても桃太様の一番は千和さんですからね」

 そんな! 桃くんは平等に愛してくれているからみんな一緒だよ。

「うふふっ、それは分かってますよ」

「そうですわね、でも違うんですのよ」

「うーん、なんて言うのかなぁ? 『いつもの味』って言うのがしっくりくるな」

 ……いつもの味? 

「そうですね、変わらない安心する味、それが桃太さんにとっての千和ちゃんなんですよ」

「千和さんが居るからこそわたくし達も一緒に居られるんですのよ? だから…… これからも千和さんは千和さんで居て下さいまし」

「そうそう! それにあたし達もそのままの千和が大好きだから」

 みんな…… ありがとね。

 でも…… 

 きーちゃんと美鳥さん! 何でそんなにスイカをたぷたぷしてるのぉ! もう止めてよぉ! 

「立派なスイカを育てておいて贅沢な悩みだな!」

 きっと私のせいじゃないよぉ…… 桃くんが一生懸命お世話したからだよぉ…… 

「贅沢です、本当に贅沢です……」

 美鳥さん、たぷたぷが激しいからぁ! 

「ふふっ、楽しそうですわね…… わたくしもたぷたぷしてみたいですわ」

 あ、葵さんは自分のスイカをたぷたぷしてぇ!


 ◇


 ……リビングが騒がしいな、また四人で話が盛り上がっているのか?

 ……トイレ行きたくなってきた、起きるか。

 そして盛り上がっている四人の邪魔をしたくないから、そーっとドアを開けてみると……


 四人はめちゃくちゃたぷたぷしていた。
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