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このフルーツは噛んだら駄目なんだ
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◇
お風呂から上がり、ポカポカになった身体のまま二人で布団の中に入り、横になりながら向かい合って他愛のない話をしながらイチャイチャ。
初めておだんごを食べて以降、お泊まりの度にこうしてこっそりと布団の中でイチャイチャする時間が私は大好きだった。
そうしているとお互いにお腹が空いてきて、おだんごを食べちゃうのがいつもの流れだが、今日はもう既に満腹だから、ただ触れ合っているだけ。
「あーあ、親父達もうすぐ帰って来るのか…… 嬉しいような、寂しいような気分だな」
この三ヶ月間、見習いとはいえ店主として頑張ってたもんね。
おじさん達が帰ってくれば当然桃くんはまた従業員になる。
今まで頑張って売っていた自分で一から作ったお団子は店に並ばない。
おじさんが作るお団子が『吉備団子店』の味、桃くんのもほぼ同じだけど、やっぱり『桃くんのお団子』の味なんだよね。
私個人は桃くんのお団子が好きだけど。
「いつかは継ぐことになるけど、しばらくはまた修行の毎日かぁ」
……頑張ってね、私達も全力で支えるから。
「ふぁぁっ…… とにかく、親父達が帰ってくるまでは…… 俺が店を……」
桃くん? ……あらら、眠くなっちゃったのかな? おだんごいっぱい作ったもんね、お疲れ様。
んっ! もう桃くんったら…… スイカから手を離さないんだから。
あっ、そうだ! んっしょっ、はい、どうぞ…… スイカを食べながらねんねしましょうねー? えへへっ…… 可愛い。
◇
ん…… むにゃむにゃ…… またフルーティーな香りが顔の周りからしているような……
柔らかくて、モチモチ、口に咥えていると安心するフルーツって何だ? ……まあ、いいや。
それにしてもいつも食べているやつと味が違うなぁ、食感も、柔らかさも……
上品な味に食べごたえのありそうな大きさ…… んっ? あれっ、今寝てるんだよな?
「んっ…… 本当ですわ、口元にスイカを持っていったら食べましたわ、ふふふっ、可愛らしいですわ」
「でしょ? えへへっ」
「あっ…… 一つを食べて、もう一つは手に持って…… 食いしん坊さんですわね」
「……これは千和ちゃんと葵ちゃんしか食べさせられないですね」
「あたし達のだったら寝ながら食べづらいだろうし」
みんなの声が聞こえる…… もしかして俺のフルーツを取ろうとしているのか? 駄目だぞ、これは俺が食べるんだから。
「んひっ! りょ、両方食べるんですの!?」
「桃くん欲張りさんだね」
「見ている分には可愛らしいですけど」
「食べられるのも楽じゃないな」
「これだけ一生懸命食べていると、わたくし変な気分になってしまいますわ」
このフルーツは噛んだら駄目なんだ、舌先でコロコロと飴を舐めるように…… フルーツなのに飴? あれ、俺は一体何を言ってるんだ?
「むっ? むむむっ? (んっ? 何だ?)」
まだ真っ暗じゃないか、早起きし過ぎた……
「ふふっ、おはようございます、桃太様」
「あ、葵!? みんなも、何で寝ている俺を囲んで……」
真っ暗なのは目の前の大玉スイカのせいだった! しかもみんな揃ってフルーツ丸出し……
「みんなお風呂入ってからそのまま寝ちゃったみたいだね」
「ええ、疲れてましたから」
「食べながら寝るくらい疲れてたんだよ」
「寝ている桃太様に食べさせていたんではないんですの?」
「しー! 駄目だよ葵さん!」
今の状況は分からないが、どういう事をしていたかはよく分かった。
よし…… 寝ている人にイタズラするなんて悪い子には…… おしおきだ。
…………
遅めの朝ごはんをみんなで食べ、俺は千和と輝衣と一緒に昼からの営業に向けての準備。
美鳥と葵はそれぞれ仕事に向かうために迎えに来た葵の会社の車に乗って出掛けていった。
迎えに来た秘書の鈴鹿さんが、朝からご機嫌な葵を不思議そうに見ていたのが印象的だったな。
葵の顔を見てからみんなの顔を見て、最後に俺の顔を怪物を見るような目で見ていたのが特に印象的。
「あの顔は気付いてたよね」
「ああ、女の勘って鋭いんだからな」
な、何のことかなー? さーて、仕込み仕込み!
みんなと話し合って決めたのだが、親父達が帰ってくるまでの期間は昼から夕方にかけての営業だけにしようという話になった。
何故かというと、最近忙し過ぎてゆったりとみんなで過ごす時間が取れないから。
親父達が帰ってくると今までのように好き勝手出来なくなるし、せっかく葵とも仲良くなったから、それならもっと仲良くなる時間を作りたいと思ったから…… らしい。
結局は四人にそうおねだりされて、俺が許可しただけの話なんだが、その結果四人ともご機嫌だから…… 良い事にしよう。
売り上げも好調で収入は十分、なんなら親父達がいた時よりも良いくらいだし、生活や店の維持に関してなら何も問題はない。
改修工事費用も営業を妨害したお詫びにと葵が全額出してくれるみたいだし。
最初は店の資金から払うと言ったのだが、葵の巧みな話術で丸め込まれ、最終的に『それならおだんご食べ放題で手を打ちますわ!』と言う話になってしまった。
それはズルいと他の三人に反発されたが、どういう話に落ち着いたのか最後にはみんな葵の意見に賛成していた。
それにしても……四人の結束力が凄いんだよなぁ。
俺の知らない所で色々決まっていたり、四人の中での何かしらのルールもあるみたいだ。
ナニのルールなのかは俺にはさっぱり分からないが、それで四人が仲良く出来るなら文句はない。
うーん…… おだんご食べ放題…… 半日営業…… 謎のルール……
「桃くん駄目だよ、余計なことを考えてたら」
「そうそう、そういう時だけ勘の良いのは駄目だぞ」
あっ、はい……
余計な事は考えないように夢中になって働いていると、半日はあっという間に過ぎてしまった。
「ふぅぅっ…… 今日も働いたなぁ!」
「きーちゃん、のんびりしてていいの? 今日も補習でしょ?」
「うぅっ! ……行きたくないよぉー、桃太、助けてくれー!」
「ちゃんと補習受けないと卒業出来ないぞ?」
あと少しの単位のためにあと一年通うよりは補習に出れば卒業させてくれるんだから頑張ってくれ。
「分かってるよぉ…… でもやる気が出ないんだよ、だから…… へへへっ」
やる気が出ないのか、別のやる気があるのか、だけどそんな時間もないだろうし……
「きーちゃん、んーっ、ちゅっ」
「んんっ!? ……ぷはっ、ち、ちい! いきなり何すんだよ!」
千和がいきなり輝衣にキスをした! 女の子同士でキスなんて…… キス、なんて…… んっ? おだんご口移しの方が凄いか。
「えへへっ、やる気チューにゅう、なんちゃって、ほら桃くんもしてあげて」
「ま、まったく…… チューくらいであたしが…… んっ! んんっ…… あぁん、桃太ぁ…… ん、ちゅっ……」
「……補習頑張って、来年からは一緒に過ごそうな?」
「う、うん…… へへへっ」
「きーちゃん、頑張って! 私ももう一回してあげるから、んっ……」
「んーっ、も、桃太にじっくり見られてるからぁ…… へへっ、ありがと二人とも」
ようやく学校に行く気になったのか、立ち上がり支度を始める輝衣。
美鳥だって出かける時は必ずハグしたがるし、葵も最近真似をしてやってるくらいだ、千和なんて昔から隙があればハグやキスを当たり前にしてくるしな。
「きーちゃんは甘え下手なんだから、桃くんからちゃんと甘えさせないとダメだよ」
「そうか? 結構ベタベタしてくると思ってたけど」
「まだまだ足りないよ! うーん、そうだなぁ、おじさんとおばさんくらいベタベタすれば……」
えっ!? あの人達は仕事中だろうが息子や千和の前ですら遠慮せずにイチャイチャベタベタしてるから、あそこまではちょっと……
「……それ、あたし達と変わらなくない?」
な、何を言っている! 俺は仕事中は真面目にだな……
「こねこねは別なのか? 今日だって何度リンゴと桃をこねこねされたか……」
「生地を作り終わった後、作り足りないのか私のスイカまでこねこねしてたよ? 気付いてないの?」
いや、それは、あの…… 手持ち無沙汰で、つい……
「えへへっ、最初は無意識だと思ってたけど、やっぱりそうなんだ」
「へへっ、じゃああたし達も今度から……」
あっ! き、輝衣、時間がないぞ、急がないと!
「誤魔化した」
「ああ、誤魔化したな…… 仕方ない、じゃあ行ってくるから…… ほら、んっ!」
唇を突き出すように顔を近付けてきた輝衣にいってらっしゃいのキスをすると……
「ただいま帰りましたわー!」
「な、何をしてるんですか?」
ナイスタイミングで帰って来た美鳥と葵。
その後、美鳥と葵にもねだられ、どさくさに紛れて千和も加わり…… そんな感じで親父達が帰ってくるまでの残り少ない期間を俺達は自由に過ごした。
お風呂から上がり、ポカポカになった身体のまま二人で布団の中に入り、横になりながら向かい合って他愛のない話をしながらイチャイチャ。
初めておだんごを食べて以降、お泊まりの度にこうしてこっそりと布団の中でイチャイチャする時間が私は大好きだった。
そうしているとお互いにお腹が空いてきて、おだんごを食べちゃうのがいつもの流れだが、今日はもう既に満腹だから、ただ触れ合っているだけ。
「あーあ、親父達もうすぐ帰って来るのか…… 嬉しいような、寂しいような気分だな」
この三ヶ月間、見習いとはいえ店主として頑張ってたもんね。
おじさん達が帰ってくれば当然桃くんはまた従業員になる。
今まで頑張って売っていた自分で一から作ったお団子は店に並ばない。
おじさんが作るお団子が『吉備団子店』の味、桃くんのもほぼ同じだけど、やっぱり『桃くんのお団子』の味なんだよね。
私個人は桃くんのお団子が好きだけど。
「いつかは継ぐことになるけど、しばらくはまた修行の毎日かぁ」
……頑張ってね、私達も全力で支えるから。
「ふぁぁっ…… とにかく、親父達が帰ってくるまでは…… 俺が店を……」
桃くん? ……あらら、眠くなっちゃったのかな? おだんごいっぱい作ったもんね、お疲れ様。
んっ! もう桃くんったら…… スイカから手を離さないんだから。
あっ、そうだ! んっしょっ、はい、どうぞ…… スイカを食べながらねんねしましょうねー? えへへっ…… 可愛い。
◇
ん…… むにゃむにゃ…… またフルーティーな香りが顔の周りからしているような……
柔らかくて、モチモチ、口に咥えていると安心するフルーツって何だ? ……まあ、いいや。
それにしてもいつも食べているやつと味が違うなぁ、食感も、柔らかさも……
上品な味に食べごたえのありそうな大きさ…… んっ? あれっ、今寝てるんだよな?
「んっ…… 本当ですわ、口元にスイカを持っていったら食べましたわ、ふふふっ、可愛らしいですわ」
「でしょ? えへへっ」
「あっ…… 一つを食べて、もう一つは手に持って…… 食いしん坊さんですわね」
「……これは千和ちゃんと葵ちゃんしか食べさせられないですね」
「あたし達のだったら寝ながら食べづらいだろうし」
みんなの声が聞こえる…… もしかして俺のフルーツを取ろうとしているのか? 駄目だぞ、これは俺が食べるんだから。
「んひっ! りょ、両方食べるんですの!?」
「桃くん欲張りさんだね」
「見ている分には可愛らしいですけど」
「食べられるのも楽じゃないな」
「これだけ一生懸命食べていると、わたくし変な気分になってしまいますわ」
このフルーツは噛んだら駄目なんだ、舌先でコロコロと飴を舐めるように…… フルーツなのに飴? あれ、俺は一体何を言ってるんだ?
「むっ? むむむっ? (んっ? 何だ?)」
まだ真っ暗じゃないか、早起きし過ぎた……
「ふふっ、おはようございます、桃太様」
「あ、葵!? みんなも、何で寝ている俺を囲んで……」
真っ暗なのは目の前の大玉スイカのせいだった! しかもみんな揃ってフルーツ丸出し……
「みんなお風呂入ってからそのまま寝ちゃったみたいだね」
「ええ、疲れてましたから」
「食べながら寝るくらい疲れてたんだよ」
「寝ている桃太様に食べさせていたんではないんですの?」
「しー! 駄目だよ葵さん!」
今の状況は分からないが、どういう事をしていたかはよく分かった。
よし…… 寝ている人にイタズラするなんて悪い子には…… おしおきだ。
…………
遅めの朝ごはんをみんなで食べ、俺は千和と輝衣と一緒に昼からの営業に向けての準備。
美鳥と葵はそれぞれ仕事に向かうために迎えに来た葵の会社の車に乗って出掛けていった。
迎えに来た秘書の鈴鹿さんが、朝からご機嫌な葵を不思議そうに見ていたのが印象的だったな。
葵の顔を見てからみんなの顔を見て、最後に俺の顔を怪物を見るような目で見ていたのが特に印象的。
「あの顔は気付いてたよね」
「ああ、女の勘って鋭いんだからな」
な、何のことかなー? さーて、仕込み仕込み!
みんなと話し合って決めたのだが、親父達が帰ってくるまでの期間は昼から夕方にかけての営業だけにしようという話になった。
何故かというと、最近忙し過ぎてゆったりとみんなで過ごす時間が取れないから。
親父達が帰ってくると今までのように好き勝手出来なくなるし、せっかく葵とも仲良くなったから、それならもっと仲良くなる時間を作りたいと思ったから…… らしい。
結局は四人にそうおねだりされて、俺が許可しただけの話なんだが、その結果四人ともご機嫌だから…… 良い事にしよう。
売り上げも好調で収入は十分、なんなら親父達がいた時よりも良いくらいだし、生活や店の維持に関してなら何も問題はない。
改修工事費用も営業を妨害したお詫びにと葵が全額出してくれるみたいだし。
最初は店の資金から払うと言ったのだが、葵の巧みな話術で丸め込まれ、最終的に『それならおだんご食べ放題で手を打ちますわ!』と言う話になってしまった。
それはズルいと他の三人に反発されたが、どういう話に落ち着いたのか最後にはみんな葵の意見に賛成していた。
それにしても……四人の結束力が凄いんだよなぁ。
俺の知らない所で色々決まっていたり、四人の中での何かしらのルールもあるみたいだ。
ナニのルールなのかは俺にはさっぱり分からないが、それで四人が仲良く出来るなら文句はない。
うーん…… おだんご食べ放題…… 半日営業…… 謎のルール……
「桃くん駄目だよ、余計なことを考えてたら」
「そうそう、そういう時だけ勘の良いのは駄目だぞ」
あっ、はい……
余計な事は考えないように夢中になって働いていると、半日はあっという間に過ぎてしまった。
「ふぅぅっ…… 今日も働いたなぁ!」
「きーちゃん、のんびりしてていいの? 今日も補習でしょ?」
「うぅっ! ……行きたくないよぉー、桃太、助けてくれー!」
「ちゃんと補習受けないと卒業出来ないぞ?」
あと少しの単位のためにあと一年通うよりは補習に出れば卒業させてくれるんだから頑張ってくれ。
「分かってるよぉ…… でもやる気が出ないんだよ、だから…… へへへっ」
やる気が出ないのか、別のやる気があるのか、だけどそんな時間もないだろうし……
「きーちゃん、んーっ、ちゅっ」
「んんっ!? ……ぷはっ、ち、ちい! いきなり何すんだよ!」
千和がいきなり輝衣にキスをした! 女の子同士でキスなんて…… キス、なんて…… んっ? おだんご口移しの方が凄いか。
「えへへっ、やる気チューにゅう、なんちゃって、ほら桃くんもしてあげて」
「ま、まったく…… チューくらいであたしが…… んっ! んんっ…… あぁん、桃太ぁ…… ん、ちゅっ……」
「……補習頑張って、来年からは一緒に過ごそうな?」
「う、うん…… へへへっ」
「きーちゃん、頑張って! 私ももう一回してあげるから、んっ……」
「んーっ、も、桃太にじっくり見られてるからぁ…… へへっ、ありがと二人とも」
ようやく学校に行く気になったのか、立ち上がり支度を始める輝衣。
美鳥だって出かける時は必ずハグしたがるし、葵も最近真似をしてやってるくらいだ、千和なんて昔から隙があればハグやキスを当たり前にしてくるしな。
「きーちゃんは甘え下手なんだから、桃くんからちゃんと甘えさせないとダメだよ」
「そうか? 結構ベタベタしてくると思ってたけど」
「まだまだ足りないよ! うーん、そうだなぁ、おじさんとおばさんくらいベタベタすれば……」
えっ!? あの人達は仕事中だろうが息子や千和の前ですら遠慮せずにイチャイチャベタベタしてるから、あそこまではちょっと……
「……それ、あたし達と変わらなくない?」
な、何を言っている! 俺は仕事中は真面目にだな……
「こねこねは別なのか? 今日だって何度リンゴと桃をこねこねされたか……」
「生地を作り終わった後、作り足りないのか私のスイカまでこねこねしてたよ? 気付いてないの?」
いや、それは、あの…… 手持ち無沙汰で、つい……
「えへへっ、最初は無意識だと思ってたけど、やっぱりそうなんだ」
「へへっ、じゃああたし達も今度から……」
あっ! き、輝衣、時間がないぞ、急がないと!
「誤魔化した」
「ああ、誤魔化したな…… 仕方ない、じゃあ行ってくるから…… ほら、んっ!」
唇を突き出すように顔を近付けてきた輝衣にいってらっしゃいのキスをすると……
「ただいま帰りましたわー!」
「な、何をしてるんですか?」
ナイスタイミングで帰って来た美鳥と葵。
その後、美鳥と葵にもねだられ、どさくさに紛れて千和も加わり…… そんな感じで親父達が帰ってくるまでの残り少ない期間を俺達は自由に過ごした。
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