桃太のおだんご(隠語)は大人気

ぱぴっぷ

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な、何を頑張ってるのかなぁー?

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 桃くん…… 
 あぁ、なんて幸せなんだろう。

 愛情たっぷりの、まるで天に昇るような美味しさのおだんごを食べさせてもらい、私はお腹いっぱい。

 しばらくはおだんごの余韻に浸りながら桃くんの隣に居たけど、今日のメインは桃くんとのデート。

 名残惜しいけど身体を起こしおでかけの準備を始めた。

「千和、今日の服装可愛いな」

「えへへっ、ありがと」

 身長以外、色々と大きく育って太って見えないか心配だったけど、桃くんが褒めてくれるなら嬉しい。
 あまりスイカを強調した服装だと、他の人にチラチラと見られるしね。

「じゃあ行こうか」

「うん!」

 

 ◇


 千和と腕を組み駅に向かって歩いていると、常連のおばちゃん達が俺達を見て話しかけてきた。

「あらあら、今日はお店休みだから二人でデートかい?」

「えへへっ、そうですよ」

「今日は千和ちゃんとデート…… 桃太ちゃんもやるわねぇ」

「あ、あははっ」

「……それで桃太ちゃん、やっぱり相手は千和ちゃんに決めたのかい?」

 いや、千和とデート中にそんな事を耳打ちしてこないでよ!

「おばちゃん、私達は三人で桃くんを支えていくから…… ねっ? 桃くん」

「あ、あぁ……」

 するとおばちゃん達が何やらヒソヒソと話し始めた。

「それじゃあ桃太ちゃんは三人とも相手に選ぶって事かしら?」

「だから言ったじゃない、桃太ちゃんは喜火太《きびた》ちゃんを越えるプレイボーイだって」

「喜火太ちゃんは昔、色々と女の子にちょっかいかけてたけど、結局引っ掛かったのは胡桃《くるみ》ちゃんだけだしね」

 あんな親父と比べないで! しかも母さんが引っ掛かったとか、まるでダメ男に捕まったみたいな言い方…… うん、よく考えなくてもおばちゃん達の言ってる事は当たってるな。

「それに比べて桃太ちゃんは、女の子の方から寄ってくるんだから凄いわよねぇー」

「うちの息子も桃太ちゃんの半分くらいモテてくれたら心配ないんだけど」

 話題が自分ん家の息子に変わってきた! 今のうちにここから離脱しないと、いつまでもからかわれそうだ。

「じゃあおばちゃん達、私達はデートだから行くね? えへへっ」

 千和、ナイス! 

「あら、そうだったわね! じゃあね、二人とも」

「千和ちゃん頑張るんだよ? ここら辺の住民はお年寄りが多いからね、子供が増えればきっと活気付くと……」

 あっ、電車の時間がー! じゃあまたねー!

「えへへっ、おばちゃんが頑張れだって! ……頑張ってるもんね、みんなで」

 な、何を頑張ってるのかなぁー? あははっ。


 そして俺達はおばちゃんから逃げるように急いで駅に向かい、電車に乗り地元から一番近くの繁華街にやってきた。

 目的地であるデパートに向かって歩いているが、ご機嫌な千和はニコニコと嬉しいそうに俺の腕にしがみついている。

「えへへっ、桃くんと二人きりでおでかけ、楽しい!」

「こうやって二人で出かけるのも久しぶりだからな」

「うん! 桃くんはお団子屋と学校で忙しかったから仕方ないけどね」

 一年でも早く卒業して団子屋で働きたかったから、大変だったけど暇さえあれば授業を受けて単位をもらうようにしてたからなぁ…… 千和とは団子屋で働く時か、休みの日に近所に出かけるか、家で…… おだんご食べたりとかが多かったな。

 そう考えると、俺は千和にかなり迷惑をかけてないか? ちょっと申し訳なくなってきた。

「千和、いつも俺に付き合わせてごめんな……」

「今日は本当にどうしたの?」

「いや、千和に負担をかけてたなぁって、改めて思ってさ」

「もう! 私が好きでやってるんだから負担をかけてるなんて思わないでよぉ! ……私こそ桃くんが疲れてるのに暇さえあればおだんごをおねだりして、悪いなぁって思ってたんだから」

 おだんご作りは…… まぁ、好きだから。

「えへへっ、私も桃くんのおだんご食べるの好きだよ」

「そっか…… いつもおかわりしてたもんな」

「あぁっ! 私の事、食いしん坊だと思ったでしょ?」

「あははっ、千和は食いしん坊じゃなかったのか?」

「……桃くんのおだんごだからいっぱい食べちゃうんだもん!」

「分かってるって、機嫌を直してくれよ」

「んー、どうしよっかなぁー、えへへっ」

 腕に更にしがみついて、ムニムニとスイカを押し付けながら言われても…… 

「じゃあ、キスしてくれたら許してあげる!」

 今歩いている場所が丁度人通りがない場所だからって…… これでいいか?

「んっ、ふふっ…… ありがと、桃くん大好き!」

 そしてもう少しでデパートに辿り着くというところで、一軒の小さなアクセサリー屋が目に入った。

 外から見えた、店中に展示されている丸くて琥珀色の宝石の付いたアクセサリー。
 なんだかみたらし団子に見えて、つい目を奪われてしまった。

「みたらし団子みたい…… ちょっと見させてもらおうよ!」

「あははっ、千和もそう思った? 俺もチラっと目に入って思わずニ度見しちゃったよ、ちょっと店の中に入ってみるか」

 店の中は売場だけだと六畳くらいの小さな店で、奥にはカウンターがあり、そこに店員さんが暇そうに頬杖つきながら座っていた。

「あっ! い、いらっしゃい!」

 突然の客に驚いたのか飛び上がるように立ち上がった店員さんは、慌てて俺達に近付いてきた。

「すいません、ちょっと見させてもらっていいですか?」

「どうぞどうぞ! ゆっくり見ていって下さい!」

 店員さんにそう言われ、俺達はすぐに店の外から見えた琥珀色のアクセサリーが並ぶ棚を見させてもらう事にした。

「可愛い…… 小さなみたらし団子みたいだね!」

「ははっ、本当だな」

「それは琥珀を使ったブレスレットになりますね、でもみたらし団子みたいって言われたのは初めてですよ、ふふっ」

 遠目から見たら、たっぷりとみたらしを付けた団子に見えてしまったのは職業病みたいなものなのかもしれない。 

「美鳥さんときーちゃんにも見せてあげたかったなぁ……」

「そうだなぁ、琥珀も綺麗だけどデザインも可愛いから、二人とも気に入りそう……」

「ここにあるアクセサリーはこの店で作ってるんですよ、良かったらプレゼントにどうですか? 小さな琥珀なのでお値段もお手頃ですし」

 ……最初の予定ではデパートでみんなへの日頃の感謝としてプレゼントを選ぶつもりだったが、このブレスレットが良いかも。

 値段は一つ六千円か…… 予算内だしみんなの分は買えるな。

「それじゃあこのブレスレット、三つ下さい」

「えっ!?」

 千和、何を驚いてるんだ?

「デパートで探すよりこれの方が良くないか?」

「そ、それは私もそう思うけど…… 三人分ってこと?」

「ああ、三人へのプレゼントだからな」

 複雑そうな顔をしてどうしたんだ? もしかしてあまり気に入ってないとか…… 

「嬉しいんだけど、せっかくなら桃くんのも買って、四人でお揃いにしたいなぁ……」

「えっ!? でも、それじゃあちょっと予算オーバーに……」

「桃くぅん……」

 出た! 千和がたまに見せる、おねだりする時のうるうるとした瞳での上目遣い! ……近くに銀行あったかな?

 そんな俺達の様子を見て、店員さんが話しかけてきた。

「あの…… ちなみにご予算はどれくらいの予定だったんですか?」

「一応二万円と思ってたんですが、足りないのでまた後で来ます」

「彼女さんへのプレゼントみたいですから、特別に四つで二万円でいいですよ!」

「えぇっ!? じゃあお言葉に甘えて、買わせてもらいます」

「お買い上げありがとうございます! ……四つ、って両腕に付けるのかな? でもお揃いって聞こえたしそうよね」

 そして会計をして店員さんに包装して貰おうと思ったのだが、何故か二つずつ入れて包装しようとしていたので

「一つずつバラバラで包装して貰えますか?」

「えっ? ……あっ、分かりました」

 何故か不思議そうな顔をされた。

「えへへっ、ありがとう桃くん、これでみんなお揃いで付けられるね!」

「喜んでくれたらいいけどな」

「絶対喜ぶよ! 美鳥さんなんて泣いちゃうんじゃない?」

 うん、美鳥なら泣いて喜んで、抱き着いてキスしてきて、更にどさくさに紛れておだんごもおねだりしてきそう。

 輝衣は…… すぐに付けてはしゃいで周りそうだな、みんなでお揃いで付けているのをカメラで撮って、どさくさに紛れておだんごを食べようとしてきそう。

 結局最後には千和もおだんごを食べたくなって、いつものパターンになりそう。

 
 最後まで店員さんは不思議そうな顔で俺の事を見ていたが、気にしないよう店を出た。

「どうしよう、すぐにプレゼントが決まって時間が余っちゃったな、どこか行きたい所はあるか?」

「えっ? ……じゃあ、ちょっと行きたい所があるから付いて来てくれないかな?」

 そして千和に手を引かれ辿り着いたのは……

「ちょっとここで休憩しよ? えへへっ」

 おだんごを食べるための休憩場所だった……

 美鳥もそうだったけど、おだんご休憩場所をよく知ってるな!

「歩いたらお腹ペコペコになっちゃったぁ…… お願い、桃くぅん……」

 また上目遣いのおねだりか! 可愛いから許すけど。

 その後、俺達はめちゃくちゃ休憩した。
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