上 下
37 / 48
第二章

私に力を貸して!

しおりを挟む
「里の危機に現れると言う、あの伝説のおいなり神様だー!!!」

「「「「「ありがたやー!!!」」」」」



 ……………えっ!? ちょっとこの人達何言ってるの? 洗脳されておかしくなっちゃったのかな?

「洗脳が解けてしまいましたか…… もうここまでですね」

「……待ちなさい、エムドゥ!」

「クリス、ノイン、追いますわよ!」

「今度こそ逃がさない!」


 エムドゥが逃げて、姉ちゃん達も追いかけてっちゃったよ……それよりも、こっちを何とかしないと! 

「おいなり神様が変態共を追い払ってくれたぞ!」

「おいなり神様、ありがとうございます!」

「光るおいなりさん……」

「あの……とりあえず、ズボン穿きたいんで……あっちを向いててもらっても……」

「じーーー」

「見られてると、穿きづらいんで……」

「じーーー」

「ハル! 私が隠しててあげるから、早く穿きなさい!」

「ソフィア! ありがとう!」

 ソフィアが俺とみんなの間に入ってガードしてくれた。
 良かった……やっとズボンが穿ける……

「ってソフィア!? ガードしてくれるのありがたいけど、ソフィアもあっち向いててよ!」

「えっ!? あ、その、え、ご、ごめん!……昔見たのと全然違う……どうしよ……大丈夫かな?」

「ボソボソ何か言ってないで、早くあっち向いて!」

「ひゃ! は、はいぃ……」

 自分でこっち向いといて、何恥ずかしがってるんだよ! 俺が恥ずかしいわ! まあソフィアはおっちょこちょいな所があるから、俺をガードするのに必死だったんだな……

 やっとズボンが穿けた俺は妖狐族の男性達から話を聞いた。

「お騒がせしてすいませんでした……元はといえば、私達が男性に頼りすぎなのがいけなかったんですね……」

「自分達も女性とちゃんと話合えば良かったです……」

「俺達の住む街……というか、俺達の周りはほとんど男女平等だよ? うちの父さんなんか、母さんの尻に敷かれてるんだから、それくらいが丁度いいのかもな!」

「なるほど……おいなり神様のお考えはそうなのですね! 我が里でも古い考えを捨てて、おいなり神様の教えを広めて参ります!」

「いやいや、俺はおいなり神とかじゃないから!」

「またまたご謙遜を♪ あの光輝くおいなりさん……あれが何よりの証拠ですよ!」

「だからあれは…… まあ、これからは里のみんなで協力していって下さい」

「ありがとうございます! ぜひそうさせていただきます!」

 もう何を言ってもおいなり神様……みんな仲良く暮らしてくれるなら、何でもいいや……

「父様、母様!」

「イナホ、無事だったか!」

「ええ、ここにいる3人が私を助けて下さいました!」

「そうですか、ありがとうございます……あの……」

「何でござるか?」

「もしや……シズネさんの……」

「僕の母上がどうしたでござるか?」

「やっぱり……シズネさんにそっくりだったもので……シズネさんはまだ里の事を恨んでましたか?」

「いいや、母上は里の事は恨んではいないでござる、何も言わず里を飛び出した事はいつかできれば謝りたいとは言ってたでござるが……」

「そうですか……あの……実は会っていただきたい方がいるんですが……」

「何でござるか?」

「ちょっと付いてきてもらってもいいですか?……」

 イナホのお母さんに連れてかれたのは、一軒の小屋だった。

「母様、ここは!」

「イナホ……多分コン太さんには教えた方が……とりあえず入って下さい」

「ここは……えっ?……」

「えっ!? あの人……」

 小屋に入るとベッドが置いてあり、その上で人が寝ていた。
 近づいてみると……見覚えのある顔だった。

「えっ? ウソじゃないでござるよな? ホントなの? 父さん! 父さーん!」

「コン太の父さん?」

 ベッドに寝ていたのは10年以上前いなくなって、死んでしまったと思っていた、コン太の父さんだった。

「父さん? 僕だよ! 父さん! ねぇ!」

「コン太さん……実は」

 それからイナホのお母さんがコン太の父さんについて話し出した。

 10年以上前、里の入り口の所で血だらけで倒れているコン太の父さんを見つけたらしい。

 息はしていたが瀕死で、里の人達の治療によって傷は回復したが、意識は戻らなかった。

 里のみんなからは余所者だし、もう意識は戻らないだろうからと諦められていたみたいだ。

 しかしイナホのお母さんは、コン太の父さんがしていたネックレスを見て、シズネさんの親しい人だと思い、ずっと意識は戻らないが世話をしていたらしい。

「ありがとう……でござる……母上にすぐ知らせたいでござる」

「里のみんなからは見捨てろとか言われたけど、シズネさんの大切な人なんじゃないかと思って……いつか帰ってきたら会わせてあげようと思ってたんですが……」

「母様……そうだったのですか? それならそうと私にも教えてくれれば……」

「それを言ったらイナホの性格からして、里を飛び出してシズネさんを探してたんじゃない?」

「それは……」

「だから騙してた訳じゃないの、ごめんね?」

「とにかく……母上を呼びにいくでござる!」

 コン太が急いで街に戻ろうとした、その時

「ちょっと待って!」

「ソフィアさん!?」

「ハル、私に力を貸して!」

「ソフィア!?」

「意識だけなら……私の力で! ギンジローだって来たんだから!」

「それは……でも出来るのか?」

「試してみないとわからないでしょ!? だから……」

「よし! ソフィア、俺の力を使ってくれ!」

「ソフィアさん! 僕の力も!」

「あの……私の力も使って下さい! コン太さんの力になりたい……」

「みんな……じゃあお願い! 力を借りるわね! いくわよ!」

 そしてソフィアが祈るようにコン太の父さんに力を注ぐ!

 そして……



しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる

フルーツパフェ
大衆娯楽
 転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。  一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。  そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!  寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。 ――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです  そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。  大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。  相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。      

小学生最後の夏休みに近所に住む2つ上のお姉さんとお風呂に入った話

矢木羽研
青春
「……もしよかったら先輩もご一緒に、どうですか?」 「あら、いいのかしら」 夕食を作りに来てくれた近所のお姉さんを冗談のつもりでお風呂に誘ったら……? 微笑ましくも甘酸っぱい、ひと夏の思い出。 ※性的なシーンはありませんが裸体描写があるのでR15にしています。 ※小説家になろうでも同内容で投稿しています。 ※2022年8月の「第5回ほっこり・じんわり大賞」にエントリーしていました。

俺が異世界帰りだと会社の後輩にバレた後の話

猫野 ジム
ファンタジー
会社員(25歳・男)は異世界帰り。現代に帰って来ても魔法が使えるままだった。 バレないようにこっそり使っていたけど、後輩の女性社員にバレてしまった。なぜなら彼女も異世界から帰って来ていて、魔法が使われたことを察知できるから。 『異世界帰り』という共通点があることが分かった二人は後輩からの誘いで仕事終わりに食事をすることに。職場以外で会うのは初めてだった。果たしてどうなるのか? ※ダンジョンやバトルは無く、現代ラブコメに少しだけファンタジー要素が入った作品です ※カクヨム・小説家になろうでも公開しています

中でトントンってして、ビューってしても、赤ちゃんはできません!

いちのにか
恋愛
はいもちろん嘘です。「ってことは、チューしちゃったら赤ちゃんできちゃうよねっ?」っていう、……つまりとても頭悪いお話です。 含み有りの嘘つき従者に溺愛される、騙され貴族令嬢モノになります。 ♡多用、言葉責め有り、効果音付きの濃いめです。従者君、軽薄です。 ★ハッピーエイプリルフール★ 他サイトのエイプリルフール企画に投稿した作品です。期間終了したため、こちらに掲載します。 以下のキーワードをご確認の上、ご自愛ください。 ◆近況ボードの同作品の投稿報告記事に蛇補足を追加しました。作品設定の記載(短め)のみですが、もしよろしければ٩( ᐛ )و

無能なので辞めさせていただきます!

サカキ カリイ
ファンタジー
ブラック商業ギルドにて、休みなく働き詰めだった自分。 マウントとる新人が入って来て、馬鹿にされだした。 えっ上司まで新人に同調してこちらに辞めろだって? 残業は無能の証拠、職務に時間が長くかかる分、 無駄に残業代払わせてるからお前を辞めさせたいって? はいはいわかりました。 辞めますよ。 退職後、困ったんですかね?さあ、知りませんねえ。 自分無能なんで、なんにもわかりませんから。 カクヨム、なろうにも同内容のものを時差投稿しております。

女王直属女体拷問吏

那羽都レン
ファンタジー
女王直属女体拷問吏……それは女王直々の命を受けて、敵国のスパイや国内の不穏分子の女性に対して性的な拷問を行う役職だ。 異世界に転生し「相手の弱点が分かる」力を手に入れた青年セオドールは、その能力を活かして今日も囚われの身となった美少女達の女体の弱点をピンポイントに責め立てる。

快感のエチュード〜母息子〜

狭山雪菜
恋愛
眞下英美子は、成人する息子の独り立ちに肩の荷が降りるのを感じた。このまま穏やかな人生を送ると信じて疑わなかったが…息子に告白され、状況が一変した。 快楽のエチュード〜父娘〜のスピンオフ的な物語で、こちらも近親相姦がテーマのお話です。 苦手な方は、見ないでください。 この小説は、「小説家になろう」でも掲載しております。

父が再婚しました

Ruhuna
ファンタジー
母が亡くなって1ヶ月後に 父が再婚しました

処理中です...