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第一章

ソフィアの昔話 その2

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「あれ? ここは?」
「うわ! 剣が喋った! 何だこれ!」

「あなた誰? って動けない!」
「剣なんだから動ける訳ないだろ!?」
「私……そっか……」

「ヤバいよ~! 剣を勝手に持ち出そうとしたら、何か喋るようになっちゃったよ! また父ちゃんに怒られる!」

「それよりもあなたは? それに黒い竜は大丈夫なの!?」

「黒い竜~!? 何それ? 知らないな~、あ、俺の名前はギンジローって言うんだ!」

「ギンジローね、それで黒い竜がいないって事は、倒されたのかしら?」

「だから黒い竜なんて……黒い竜? そういえば大昔に、勇者一族と魔王一族で何とかって父ちゃんが言ってたな?」

「何とかって何よ! そこはっきりしなさいよ!」

「だって、話が長くて途中で寝ちゃってたんだよ! その後、父ちゃんにめちゃくちゃ怒られたけど……」

「ギンジロー! こんな所で何やってるんだ! またイタズラしてるんだろ!?」

「げっ! 父ちゃん! 大変だよ! 剣が勝手に喋りだして……」

「そんな訳ないだろ! そうやって言って、先祖代々伝わる聖剣を勝手持ち出そうとして!?」

「あの~? …………」
「ええっ!? 本当に喋ったー!!」
「……」


 私が再び目覚めた時はこんな感じだった。

 何故意識だけ目覚めたかは分からなかったけど、ギンジローの父、当時の勇者一族の当主のイサムさんによると、黒い竜との戦いからもう200年は過ぎているとの事だった。

 あれから剣に封印された私の力を使い、勇者一族と魔王一族は、何とかあの黒い竜を倒したらしい。

 今は特に大きな争いもなく、平和に暮らしているみたいだ。
 よかった……私の犠牲は無駄じゃなかったのね……

 それで私は世界を救った聖剣ソフィアとして、勇者一族に代々受け継がれ大切に保管されていたみたいだ。

「ソフィアってすげぇんだな! ただキレイな剣なのかと思ってたよ!」

「凄いかどうかは分からないけど……」

「でもみんなが倒せなかったデカイ竜を倒したんだろ!? すげぇよ!」

「そうなのかな? でももう前みたいな力は失くなっちゃったみたいね……」

「別にいいじゃん! 今は平和なんだし、どうだ? ソフィアから見て今は?」

「こんなに賑やかになって……里もすごく大きくなったわね!」

「ああ、今は勇者一族と魔王一族の里が一緒になって、デカイ街になったからな~、これもソフィアのおかげだろ?」

「そう言ってもらえると犠牲になってよかったって思うわ……」

 剣の私を連れて街を歩いてくれているギンジロー。

 勇者一族の人は大体黒髪の人が多いが、ギンジローは銀髪だ。
 私の銀髪と比べるとギンジローの髪はもっと黒っぽいが、昔は私の周りには銀髪の人なんて全くいなかったから、ギンジローには親近感が湧く。

 そんなギンジローに連れられて街を歩いているが、本当に昔とは違い平和で豊かになったなぁと思う。

 そして私はある場所へ連れられていた。

「ここは……」
「何か昔、ここに孤児院があったんだって、それでその時の家の当主が、自分が死んだらここに墓を立ててくれって」

「当主様……」

「何か自分がここを守らないといけないだか言ってたみたいだぞ? 父ちゃんがソフィアをここに連れてけって言っててさ」

「当主様……! うぅ! ありがとうございます……!」

 当主様……私の為に……
 
 当主様、それなら私はあなたの子孫を守っていきます……

 そして私はイサムさんに、勇者一族へのアドバイスなど、サポートをさせて欲しいとお願いした。

 そして私はギンジローに連れられて行く事が多くなったのだが……

「ちょっとギンジロー! 何やってるの!」

「ソフィア! ちょっと静かに! 勉強なんてやってられねぇよ、遊びに行こうぜ!」

「こら! ちゃんと勉強しないと! 次の当主はあなたなのよ!?」

「そんなの勉強しなくたってやれるよ! それよりも、今は遊ぶ方が大事なんだよ!」

「ギンジロー!」

「よぅギンジロー! 今日は何する?」
「どうするかな~? この間はゲーセン行ったし……」

「それならいい所があるぜ! 着いてこいよ!」
「どこだよ? 早く行こうぜ!」
「ギンジロー、私がいるんだからね? 悪い事したらダメよ!」
「分かった、分かった!」


「ここだよ……ここから入れば……」
「えっ!? ここって銭湯の……」

「しー! 静かに! それで情報によると、近所のお姉さん達が来てるはずなんだよ!」

「マジか! っていうか、よくこんな裏口を知ってたな!」

「おう! 俺のおじさんが教えてくれたんだよ! それで、ここのドアを開けると女湯に……」

「おお! すげぇよお前のおじさん! 早く開けようぜ!」

「こら! やめなさいギンジロー! 犯罪よ!」

「ソフィア静かに! 今良いとこなんだから!」
「だからダメ……もご! もがー!」

 すると女湯側からドアが開き、バスタオルを巻いた女の子が立っていた。

「ギンちゃん? 何をしているんですか?」
「へっ!? サクラ……何で!?」

「あれだけ騒いでたら、嫌でも聞こえますよ」
「えっ? サクラ! これは……」

「問答無用!」
「ごめんなさ……ぎょえぇぇぇーー!!!」


「……ごめんなさいねサクラちゃん、私は止めたんだけど……」

「わかってますよソフィアさん、もう! ギンちゃんは相変わらずハレンチですね!」

 この子はサクラちゃん、ギンジローの幼なじみで許嫁の子だ。

 いつもだらしないギンジローを叱っているが、お互い好きなのがよくわかるぐらい仲はいい。

 そして月日が過ぎ、ギンジローとサクラちゃんはめでたく結婚して、そして子宝にも恵まれ2人の子供が生まれた。

 1人目の男の子はユートと名付けられ、その5年後にはルナと名付けられた女の子が生まれた。

 私はギンジローに言われて、ユートとルナの教育係として、子供達の傍に置かれる事が多くなった。

「ユート、いい? 困っている人がいたら助けてあげるのよ? あなたはそういう事が自然に出来る優しい子になってね?」

「分かったよソフィア! でも困っている人がいっぱいいたら僕が助けられるかわかんないから、もっと訓練してくるよ!」

「ああ! まってユートおにいちゃん! るなもいく~!」
「気をつけて行くのよ~!」

 ユートは本当に手のかからない子だった。

 それに教えた事はすぐに吸収して自分のものにしてしまう、天才とはこういう子の事をいうんじゃないだろうか。

 ルナはお兄ちゃんにべったりで、一緒に訓練したりして、ちょっとヤンチャな子になってしまったかな?

「ソフィアどうだ? ユート達の様子は?」

「ギンジロー、ユート達は本当に良い子よ! 誰かさんとは大違いね?」

「はははっ! 俺もそう思うよ! 本当あの真面目さはサクラに似てるよ! たまにサクラが3人になったんじゃないかって怖いぐらいさ!」

「あなた? 私がどうかしましたか?」

「げっ! いや、サクラはいつも可愛いなぁ~って言ってたんだよ!」

「私が怖いって聞こえましたけど……まあいいです」
「あはは……」


 しかしユートが10歳になった時、突然ギンジローは死んでしまった。

 街に迫ってきてた魔物をみんなで退治している途中で、魔物に不意打ちされて、そのまま帰らぬ人になってしまった。

 そしてギンジローが若くして死んでしまったので、ユートが10歳にして当主になった。
 と言っても、まだ子供なので周りがサポートしてたのだが、ユートはやはり天才なのか、いつの間にかみんなを引っ張っていく存在になっていた。

 そしてユートが当主になって2年後、ある話を聞いてしまった。

「ユート様、お身体は大丈夫ですか?」
「僕は何ともないよ、どうかしたかい?」

「いえ、先代様は……ユート様には言いにくいのですが……先代様がユート様と同じ歳ぐらいの時にソフィア様に触れたところ……」

「その話はソフィアの前でするなよ!」

「すいません! しかし天才と言われた先代様がソフィア様に触れた途端に力を失って……ユート様にも何かあったら……」

「僕はそれでも構わないよ、父さんも言っていたがソフィアは世界の為に頑張ってくれたんだ、父さんが触れた事で力は失ったけど、ソフィアの封印が少し解けてよかったと言っていた、出来れば完全に解いてあげたかったと言っていたが……」

 そんな……ギンジローが触れたおかげで私の意識は戻ったの?
 力を失ったって……もしかして私のせいでギンジローは……

 あの子はだらしない所はあるけど責任感は強いし、でも力も失くなったのに、無理して当主の仕事をしてたんじゃ……

「ユート!」
「ソフィア! ……もしかして聞こえてたのかい?」

「ごめんなさいユート! 私のせいでギンジローが……」

「ソフィア……謝らなくてもいいよ、僕も父さんから聞いていたから知っていたけど、絶対ソフィアには言うなと言われてたんだ、知ればソフィアが自分のせいだって言って悲しむからって」

「それに父さんは感謝してたよ、口うるさい事もあったけど、ソフィアと話すのは楽しいし、ソフィアのおかげで母さんと上手くいってるって」
 
「ギンジロー……ごめんなさい! そしてありがとう……」

「だからこれからもよろしく頼むよ!」
「ユート……」

 それから私は、ユート達を全力でサポートをする事にした。
 と言っても私に力はないので、私の知っている知識やアドバイスなど、私にやれる事を精一杯頑張った。

 これがギンジローへのお礼と償いになると信じて…… 


「ソフィア……相談があるんだ」
「どうしたのユート? 真剣な顔をして?」

「実は……魔王一族のマリーさんに一目惚れしたんだ!」
「えっ!? マリーってあの!?」

「そうなんだ! 彼女がユニコーンに乗って颯爽と走る様子を見て僕は……」
「でも彼女、クールで無口そうだから……ユートが彼女に上手くアプローチ出来るかどうか……」

「だからソフィアも付いてきて、仲を取り持ってくれないか?」
「私が!? ……まあ軽く話題作りくらいなら……ただそういう事は自分の力でなんとかしなさいよ!」

「分かってる! ただキッカケ作りを手伝って欲しくて……」
「分かったわ、でも彼女ライバル多そうだし、相当頑張らないとダメそうよね?」

「それも分かってる、ただ僕は彼女しか考えられないんだ……」

「それなら私も協力してあげるわお兄ちゃん!」
「ルナ!? 聞いてたのか……」

「偶然通りかかったらね? それにしてもあのクール系美女のマリーさんをね~♪ 一目惚れとか言って、お兄ちゃんのモロタイプじゃない? だってお兄ちゃんがベッドの下に隠してある……」

「だ~!! ルナ!! 勘弁して!」

「それじゃあ口止め料は、ウルトラスペシャルパフェでお願いね♪」
「うぅ……わかったよ……」

 そして私達の協力でユートはマリーに猛アプローチして、何とか交際がスタート。
 
 そして様々な障害があったが、晴れて2人は結婚。

 そしてクリスが生まれ、2年後……


「おめでとうございます! 元気な男の子ですよ!」
「ありがとうございます! よく頑張ったねマリー!」
「ユートありがとう……あ! この子!」
「銀髪?」

 そして私はハルと出会った……
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