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第一章

アリサの昔話

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 子供の頃、ヒーローやヒロインに憧れた事あるよね? うちも憧れたものがある。

 うちの場合、それはママだった。

 映像で観たママは、すごくカッコよかった。
 魔法や弓を使いこなし戦場を駆け回り、次々と相手を倒してゆく。
 その姿は踊っているかのようにキレイで、うちは夢中でその姿を見ていた。

 それになんといっても1番カッコいいと思ったのは、ママの褐色の肌にとてもよく似合っているビキニアーマーだった。

 露出が多くて防具としてはちょっと頼りなさそうな感じはするが、ママが着るとママの肌の色と合わさり、とてもキレイでたくましく見えて、うちは心を奪われた。

 最近はほとんど着ることはなくなったみたいだけど、臨時のお仕事が入った時か、夜にパパの部屋で着ているのを見たことがある。

 ママは普段はお花屋さんをやっているが、ママの元上司で、お友達のマリーさんや旦那さんのユートさんからたまに仕事を頼まれる事がある。

 ママは調査の仕事が得意で、身軽に動き回り、ダークエルフがよく使う精霊魔法など使って調査をするらしい。

 そしてうちが6歳になった時、その日はママが仕事を頼まれ、ビキニアーマーを着て出掛けようとしていた。
 うちはビキニアーマーを着たママを見て、

「ママ~! うちもママみたいなビキニアーマーが欲しい~」
「えっビキニアーマー? アリサにはまだ早いと思うんだけど……」

「うちもママみたいにカッコよくなりたいの~!」
「カッコいい? ふふっそうよ! これはダークエルフに伝わる正装なんだから当たり前よ! ……最近はパパの為の正装だけど……」

「ダークエルフの正装なの~? じゃあうちも~!」
「じゃあ仕事が終わったら見に行きましょう? だから良い子にしてお留守番しててね?」

「やった~! 良い子にしてる~!」
「それから、パパとの稽古も頑張れる?」
「うん! 大変だけど頑張る~!」

 そして仕事が終わったママと一緒に街の防具屋へ行き、うちのビキニアーマーを作ってもらった。

 完成までの1週間はワクワクしてあんまり眠れなくて、1週間がとても長かったのを覚えている。

 そして1週間後ようやく完成した、うちの為のビキニアーマー。
 パパもうちのビキニアーマーを見て

「おお! アリサもママに似てるからすげぇ似合ってるぞ!」

 と言ってくれて、嬉しくてその日はビキニアーマーを着たまま寝ちゃって、次の日身体がすごく痛かったなぁ……

 そのまま学校に行こうとしたら、パパとママにすごく止められたけど、どうしてもクラスの子とかに見てもらいたくて、ビキニアーマーを着たまま学校に行ったんだよね。

「おはようアリサ! ってどうしたんだその格好!?」
「おはよ~ハルくん! どうかな~? ママと同じの作ってもらったんだ~♪」

「アリサはバネッサさんに似てるから、そういう格好似合うと思うけど……」
「えへへ~♪ ありがとうハルくん♪」

「そのままクラスに行くのか?」
「うん! みんなにも見てもらいたくて~」
「……そうか、まあアリサがいいならいいか!」

「ハルくん、アリサちゃんおはよう! わぁ~アリサちゃんそれ買って貰えたの!?」
「コン太くんおはよ~♪ ママにお願いしたら買ってくれたの~」

「前からいいな~って言ってたもんね! よかったね!」
「うん! クラスのみんな何て言うかな~?」

 そしで学校のクラスに着くと……

「みんな~おはよ~!」

「おはようアリサちゃ……」
「何その格好!?」

 みんな私を見て目を丸くしている。

「ママにビキニアーマーを買ってもらったんだ~! どうかな~?」

 みんな何て言ってくれるかな~? って考えてたけど

「アリサちゃん……学校にそんな変な格好して来ない方がいいよ?」
「うん……恥ずかしくないの?」
 
 思っていたのと違う反応で、うちは戸惑ってしまった。
 今考えたら、急に学校にビキニアーマーを着ていくなんて変だよね……

 でもその時のうちは、憧れていたヒーローを否定されたような気がしてショックを受けた。
 そして最後に言われたのは……

「おい! お前見たいな格好のやつ、何て言うか知ってるか? 変態って言うんだよ!」
「ププッ!」
「「「変態! 変態!」」」

 男子に言われた一言でうちはとても傷つき、気がついたら教室から走って出ていった。
 そしてそのまま家に帰り、自分の部屋に閉じこもった。

 昔から憧れたヒーロー、そして大好きなママを否定されたような気がして、悔しくて悲しくて布団を被りずっと泣いていた。

 帰ってきたパパとママにすごく心配されたが、事情を言ってしまうとママも傷ついてしまうんじゃないかと思い、話す事が出来なかった。

 そしてご飯も食べずそのまま寝てしまって、気がついたら朝になっていた。
 学校行きたくないなぁ……今日は休もうかな~と思っていると……

「アリサ~! ハルくんが迎えにきたわよ?」

 ハルくん? いつもなら迎えになんて来ないのに……どうしたんだろう? そう思っていると部屋のドアが開き、ハルくんが入ってきた。

「アリサ! 学校行くぞ!」
「……ハルくん…… うち学校行きたく……えっ?」

 うちはハルくんの格好を見てビックリした。

 女の人用のドレスみたいな服を着て、化粧をしたハルくんが立っていたからだ。

「ハルくん……その格好……」
「おう! 母さんの借りてきた! 俺も母さんの事好きだからな! 見ろよ、似合ってるだろ?」

 腰に手を当てクネクネするハルくん、元々マリーさんに似てるし、化粧もバッチリしてもらって、似合ってる事は似合ってる、だけどなんで……?

「好きな母さんの格好をしてるんだ、恥ずかしい訳ないだろ? だからアリサもビキニアーマー着て学校行こうぜ?」
「ハルくん……でも……」
「バカにされたら言ってやればいいんだよ! 好きな人の真似をして何が悪いって!」
「ハルくん……」
「だからほら! 一緒に胸張って学校行こうぜ!」

 ハルくん……うちの為に……

「うん……今用意する」

 そして2人で学校に行く途中、色んな人に見られた。
 でもハルくんは胸を張って堂々と歩いていた


「ハルくん! アリサちゃん! おはよう!」
「おうコン太! お前も似合ってるぞ!」
「ええっ!? コン太くんまで~!?」
「僕も母さんの服借りてきたよ! みんなで一緒に行こうよ!」

 コン太くんまで……2人ともありがとう!

 そして学校に着くと……

「おー! おはようみんな!」
「おはよう!」
「……おはよう」

 クラスのみんながこっちを見てビックリしている。

「お前ら……その格好は?」
「俺も母さんの真似しようと思ってな! 似合うだろ?」
「僕もなかなか似合うでしょ?」

 2人でポーズを取りみんなに見せる、そして

「ハル! 何て格好してるんだよ!」
「……でも確かに似合ってる……」
「何か俺……ドキドキしてきたよ……」
「マリーさんに似てるよな……俺、もうハルでもいいかな?」
「くやしい! 私達よりかわいいかも……」

「キャ~!! コン太くんかわいい~♥️」
「や~ん♥️ 食べちゃいたい♥️」
「コン太くん♥️ お姉さんと一緒に遊ばない?」

 ハルくんを見てみんな誉めている、そしていつの間にか来た上級生の女の子に囲まれているコン太くん、そして

「ほら! アリサもママの真似してるんだぞ!? カッコいいだろ?」
「えっ!? うちは……」

 するとみんなは……

「アリサちゃんもバネッサさんみたいでカッコいいね!」
「俺、映像で観たことあるよ! バネッサさん凄く強いんだよ!」
「私も観たことある! 魔法と弓でビューって倒してたよ!」

 みんなママの事を誉めてくれている……

「ママはカッコいいんだよ~! だからうちもママの真似して買ってもらったんだ~!」
「アリサちゃんはバネッサさんに似てるもんね! カッコいいよ♪」
「褐色の肌がキレイに見えていいね!」
「みんな、ありがと~♪」

 ハルくん、コン太くん……本当にありがとう!


 それからうちはビキニアーマーを着続けている。

 みんな制服になってもうちはビキニアーマー、さすがにみんなに言われたけど、うちは気にしない。
 だってこの格好は、うちの憧れのヒーローの格好なんだもん。

 いつかママみたいになりたい……
 でも、うちは魔法も弓のセンスはないって言われちゃったよ……
 見た目はママに似てるけど、そこらへんはパパに似ちゃったみたい……
 でもうちはパパとママ、どっちも好きだからあまり気にしてないよ!

 これからはママの花屋を手伝って、将来は素敵な旦那さんと……



 ちなみに、ハルくんとコン太くん、どっちが好きなの? って聞かれるけど……




 どっちもムキムキマッチョじゃないから、異性としては見られないよ~!

 それにハルくんには…………
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