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第一章

ママー!このおじさん……

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  これはマズイ事になったぞ……下手したらこのホテルごとなくなってしまうんじゃないか?

 ここまでキレた父さんは、もう母さんにしか止められないんじゃないか? もう見なかった事にしてこの場から離れたい……

「なぁソフィア、ここから逃げたほうが良くない?」

「とりあえずマリーが気づいて結界張ったみたいだから大丈夫よ」

「お前達、僕の愛する妻をバカにして生きて帰れると思ってるのか?」

「何だオッサン? ババァにババァって言って何が悪っ……!ぷ%#ぺ∽ら§ー!」

 あ……メチャクチャ吹っ飛んでったわ……多分殴ったんだろうけど速すぎて見えなかった…… 
 
 すると残りの2人が父さんに気がついたみたいだな。

「おい! コイツもしかして勇者一族の当主のユートじゃないか?」

「冗談だろ!? こんなとこに居るなんて聞いてないぞ!?」

「とりあえず今ここでイザコザ起こすとマズイ! 逃げるぞ!」

「頭にバレたらヤキ入れら……ぎゃー! が◎☆#ま¥ぷ※」

 もう1人も父さんに殴られて吹っ飛んだな~……

「おいユート、いくら何でも吹っ飛ばし過ぎだ! 俺の分もとっとけや! 俺だって可愛い嫁さんにちょっかいかけられて腹立ってんだぞ!」

「悪いねアツシ、頭に血が昇って気がついたら手が出てたよ」

「ホント昔から姫の事になると周りが見えなくなるよな、周りのお客さんもビックリしてるだろ」

「あー……みなさんお騒がせしてすいません……」

 よかった……父さんの怒りも何とか収まったかな? ……あれ? そういえばもう1人はどこ行った?

「クソっ! どけ! このガキがどうなってもいいのか!」

 アイツ! 逃げそびれて男の子にナイフを突きつけて人質にしやがった!あのまま出口の方まで逃げるつもりか!?

「ママー! こわいよー!」
「ああ!うちの子が! やめてー!」

「うるせぇ! 騒ぐんじゃねぇ! おい近付くんじゃねぇぞ、このガキがどうなってもいいのか!?」

 クソ! どうする? この状況なら父さんたちも下手に動けないぞ! 母さん達はあのチンピラの真正面にいるから魔法で攻撃したら男の子に当たるかもしれないし、その前に気付かれてしまう……

「ママー! ママー!」
「誰かうちの子を助けてー!」

 何かいい方法はないか? こっちはアイツの真横にいるけど素早く動けそうなのはコン太ぐらいしかいない。

 多分一撃であのチンピラの動きを止めるのは厳しいはずだ……隙があれば父さん達か母さん達が動けると思うんだけど…………

コン太? ……そういえばあの時みたいにしたら……
でも危険か? いやここは一か八か! 
 俺は気付かれないよう魔法を発動した。

「どけ! 邪魔をするなよ……って! 何だ!?」

「ママー! このおじさんオシッコおもらししたー!」

 男の股間の所がビショビショに濡れている!

「なっ! 何だこれ!」
「ママー! ボクもおトイレがまんできるのにおじさんがまんできなかったんだよー!」

「違っ! 俺じゃねぇぞ! 俺じゃ……最近なんかトイレ近いし残尿感あるけど俺じゃねぇ…………俺じゃねぇよな? …………俺か? 俺なのか? ってうわっ!!!」

 チンピラ男の足元が凍りつき、男の子が逃げ出す! そして手も凍りつき、男は身動きが取れなくなり、

「何だ! 身体が凍って……ってうわーっ! このデカイ蛇はどっから出てきた!? やっ、やめろ! 食わないでくれ! 誰か! 助け……ギャーーー!!!」

 じょわぁぁぁーー、チンピラの男は何かに怯え失禁して気絶してしまった。

「うふふ、隙が出来たおかげで魔法が使えたわ♪ でもシズネちゃん何したの? あの男すごい怯えてたわよ?」

「あのね? ちょっと大蛇に頭からパクって食べられちゃう幻覚を見てもらったのよ♪」

「あら恐い! それで本当におもらししちゃったのね?」

「まさか本当におもらししちゃうとはね~?」

「「うふふ~♪」」

 そういう事だったのか……尋常じゃない怯え方だったから何かと思ったよ、でも母さん達が上手くやってくれてよかったよ……

「ありがとうございます! ありがとうございます! ほらお姉さん達にお礼言いなさい!」
「おねぇちゃんたちありがとう!」

 親子が母さん達にお礼を言っている。
 ケガはしてないみたいだな、すると母さん達がこっちをチラッとみて笑いながら

「気にしないで♪ 私達も誰かが隙を作ってくれたから動けたのよ~♪」

「そうよ♪ それに息子を持つ母親として当然の事をしただけよ♥️」

「そうそう♪ ボク? ママを大事にしてあげてね♪」

 母さんとシズネさんそれぞれが俺とコン太を見てウインクをする。

「うん! たいせつにする! ボク、ママ大好きだからママとケッコンするの!」

「や~ん♥️ 可愛い! ハルちゃんも言ってくれないかしら? チラッ」

「うふふ♥️ コン太も昔は言ってくれたのに~♪ ママさみしいな~チラッ」

 何か熱い視線を感じるけど、俺とコン太は顔を見合せ、見ないふりすることに決めた。

 とりあえずチンピラ3人は警備兵に引き渡して騒動は終わった。

「マリー! 大丈夫だったかい?」
「ええ♪ ユートありがと♥️」

「あなた! どうしてもっと早く来てくれなかったのよ!」
「悪いバネッサ! 大丈夫だったか? 変な事されなかったか?」

 何かイチャイチャしてるから近づきづらいな……でもシズネさんもいるし俺達も行くか……

「母上! 大丈夫でござるか!?」
「コン太! ああっ! ママすっごく恐かったわ~!」

 シズネさんはコン太にギュウっと抱きつく。

「母上! ちょっと苦しいでござる! それとみんな見てるでござるから!」
「うう~っ! コン太~! 恐かった~!」
「わかったでござるから! もう大丈夫でござるよ」
 
 シズネさんの背中をポンポンと叩くコン太、
多分コン太は顔が見えないから泣いてると思ってるだろうけど、こっちから見たらシズネさんはメチャクチャ嬉しそうな顔してる、コン太! だまされてるぞ!

「ママ~! 大丈夫だった~?」
「アリサ! 大丈夫よ♪ あんな軟弱な男に何かされる訳ないじゃない!」

「そっか~♪ ママはムキムキマッチョが好きだもんね~♪ 今でもパパの着替え覗いて喜んでるもんね~♪」

「アッ、アリサ! それは言わないで!」
「バネッサそうなのか? 言ってくれたらいくらでも見せるぞ?」

 バネッサさんメッチャ慌ててるな! そうか、バネッサさんはマッチョ好きか! それならアツシさんはもろタイプって訳だったのか、てっきりアツシさんがベタ惚れなのかと思ってたよ。

 父さんと母さんが抱き合っているけど、しょうがない俺達も行くか……

「母さん! 大変だったね」
 すると母さんは父さんをはね除けて俺に飛びついてきた。

「ああ! ハルちゃん! ママ恐かった~!」
「いやそれさっきシズネさんがコン太にやってた」

「ええ~!? 先越されちゃった~! じゃあハルちゃんギュウ~♥️」
「なっ!? やめてくれ! ただ抱きつきたいだけなのか!?」

「そうよ~♥️ それにさっきのハルちゃんカッコよかったわ♥️」
「何の事だよ?」

「隙を作るためにこっそり魔法使ったでしょ? どうしようか考えてるハルちゃんの真剣な顔にママ、ドキッとしちゃったわ♥️」

「やめてくれよ、しかもあれは子供の頃にやったイタズラを思い出しただけだよ!」

「それでもそれを実行しようとするのはとても勇気がいることよ? それをできるハルちゃんはやっぱりカッコいいわよ♪」

 面と向かって言われると何か照れくさいな……
 そっと母さんから目をそらすと、視界に呆然と立ち尽くす父さんが目に入った。

「母さんそろそろ父さんの方に戻ってやってよ」
「あら? どうしたのかしら?」
「母さんにはね除けられてショック受けてるんだよ」

「も~! しょうがないわね! 今日はちょっぴりカッコよかったからかまってあげようかしら♪」

 そして母さんは俺に抱きつくのをやめて父さんの方へ向かう。

「ごめんなさいねユート、ハルちゃんにお礼言いたかっただけよ♪ 別にあなたの事を雑に扱ったわけじゃないから、それよりさっきはカッコよかったわ~♥️ さすが私の旦那様よ♥️」

 するとすぐに父さんは笑顔になり

「いいんだよマリー、ハルの助けがなかったらあの男の子は助けられなかっただろうし」

「そうよね♪ でも私のピンチにすぐ駆けつけてくれてすごく嬉しかったわ! 惚れ直しちゃった♥️」

「そうかい? 嬉しいなぁ! 愛するマリーのためならどこにだって駆けつけるさ♪」
「ありがとうユート♥️」

 母さんが父さんの頬にキスをすると、父さんの顔がデレッとなり父さんの機嫌も直ったようだ。

「とりあえずもうそろそろ部屋に行かない? さすがにもう疲れたよ」

「そうだね、じゃあみんな部屋に移動しよう!」

 みんなで部屋に向かっているが、俺はさっきからおとなしいソフィアが気になり後ろを振り返ってみるが、何か考えているみたいだ。

 一体どうしたんだ?
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