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第一章

えっ?虫でも飛んでたんじゃない?

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「この間は助けて下さりありがとうございます! 今日は存分に楽しんでいって下さい!」

 今日は街の外れにある大きな高級ホテルに来ている。

 この前ひったくり犯を捕まえた時に助けた女性はこのホテルの娘さんで、本当はコン太とアリサの家族と一緒に卒業祝いの食事会をする予定だけだったが「それなら食事会の席もこちらで用意するので、是非うちのホテルに泊まっていって下さい!」と言われ、お言葉に甘えて1泊させてもらうことになった。

「ほえ~! 高級そうなホテルだね~♪ こんな所に泊まれるなんてハルくんおかげだね~♪」

「さすが若! 若の勇気ある行動のおかげで僕達も招待してもらえたでござる!」

 キョロキョロと周りを見渡すアリサに、キラキラした目でこちらを見るコン太。

「ユート! 悪いな、俺達家族まで呼んでもらって」

「アツシ久しぶりだね! これはハルとソフィアのおかげだよ、僕らも呼ばれたようなものさ」

「しかしあのハルがひったくり犯を捕まえるなんてな! イタズラ坊主だとばっか思ってたが、アイツもやるときはやるんだな!」

「ハルはいざという時にはできる奴なんだよ、本人は否定するけどね」

「ははっ! ユートがハルを次の当主にするって言った時は笑ったが、こりゃ案外向いてるのかもしれないな!」

 父さんとアツシさんが何か話してるけど、たまにチラチラこっちを見てくるな? 何の話してるんだ?

「マリーちゃん今日は呼んでくれてありがとう♪ こんな機会がないとコン太は一緒に出かけてくれないから嬉しいわ♪」

「姫、今日は私達も呼んでいただき感謝します! アリサも喜んでます」

「お礼はハルちゃんに言ってね♪ 私もハルちゃんとお出かけできて嬉しいのよ♥️ とりあえず食事会だけど、その後私達はママ会しましょ?」

「そうね♪ 今日はバネッサちゃんもいるし楽しくなるわよ♪」

「シズネさん、姫から色々聞いてますがうちは娘なのでほどほどでお願いしますよ!」

「大丈夫よバネッサ♪ 私だって娘いるし、ただちょ~っと息子について語り合うだけよ♥️」

 母さん達もチラチラこっち見てるし……一体何なんだ?
 

 それからみんなで食事をして、父さんとアツシさんはバーに飲みに行くと言って別れ、母さんたちもママ会だと言って居なくなったので、俺達4人が残った。

「とりあえずみんなどっか行きたいとこあるか?」

「うちは広くて迷子になっちゃうからハルくんに着いてくかな~?」

「僕も若に着いていくでござる!」

「じゃあ俺はとりあえずゲーセン行きたいから一緒に行こうぜ!」

 それから俺達はみんなでレースゲームや格闘ゲームをして、一通り見て回ったので、休憩する事にした。

「はぁ~! 久しぶりのゲーセンは楽しかったな~!」

「楽しかったね~♪ ハルくんとソフィアさんがダンスゲームしてた時、ハルくんおもいっきり転んだのは笑ったよ~!」

「普段から運動してないから足もつれるのよ」

「っ!あれはたまたま調子悪かっただけだよ!


「きっとソフィアさんが意外と上手かったから若も焦っただけでござるよ」

 クソ~! 実際は横でソフィアが踊ってるの見てたら足踏み外したんだけどな!

 だってソフィアが踊ってるとたぷたぷスイカが大暴れしてるんだぞ!? たっぷんたっぷんと上下左右に揺れてるのを見てたらバランス崩しておもいっきりコケたけど、男なんだから仕方ないじゃないか!

 みんなで話しながら休憩していると隣にいた客の話し声が聞こえてきた。

「そういえば最近ガラ悪い奴らが増えたような気がしないか?」

「そうだな、ここは街の入り口に近いから色んな人が来るけど、それにしても最近よく見かけるよな」

「俺も飲み屋で見た事あるな、結構派手に騒いでて、他の客も迷惑そうだったよ」

「まあこの街で悪さしようとする奴はいないだろうけど、それでも治安が悪くなるのは勘弁して欲しいよな!」

 その時は「へぇー、そんな奴らも居るんだなー」ぐらいにしか思ってなかったけど、その後あんな事になるなんてな……


 とりあえず疲れたので今日泊まる部屋に戻ろうとしたが、部屋のカギを母さん達が持っているので母さん達を探す事にした。
 
「確かここの喫茶店に居るって言ってたんだけど……」

「若、あそこに母上たちがいるでござるよ」

「あー、居たな……ってあの男達と何か話してるな」

 母さん達を見つけたがその周りに3人のチンピラみたいな男達が立ってて何か話してるので気になって近づいてみると

「いいだろ? 俺達と一緒にどこか飲みに行こうぜ!」

「お姉さん達の事楽しませるからさ~! 近くにいい店知ってんだよね~」

「あら、ナンパなんて久しぶりね~♪」

「私たち家族で来てるからごめんなさいね~♪」

「別の人あたってもらっていいかしら?」

 母さんたちが困った顔をしてやんわり断っていると

「別に家族の事なんてほっといてさ~、俺達と楽しいことしようぜ!」

「たまには家族の事忘れて遊ぼうぜ! 色々溜まってるだろ? 俺達と一緒にスッキリしようぜ!」

「ぎゃはは! お前ストレート過ぎだろ?」

「安心してよお姉さん達、変な事なんてちょっとしかしないから♪」

「「「ぎゃははは~!」」」

 ナンパかよ……しかもあれで誘ってるつもりか? 欲望隠すつもりもねーな……

 母さんとシズネさんは何とか愛想笑いしてるけどバネッサさんはヤバいな、今にもブチギレそうだ。

「何も言わないって事はOKって事? じゃあお姉さん達行きますか!」

男の内の1人が母さんの腕を強引につかんで連れて行こうとした時、バネッサさんがついにキレた。

「汚い手で姫に触れるな!!!」

 素早い動きで母さんをつかんでいた男の手を払うと男達をにらみつける。

「何も言わないからっていい気になるな! 私達は元々お前たちなど相手にしてないのがわからないのか!」

「イテェなババァ! 誰にも相手にされないだろうから優しい俺達が相手してやろうってのに!」

「ババァ? 誰に言ってるのかしら~?」
「まさか私達じゃないわよね~?」

 ヤバい!母さんとシズネさんもキレちゃったよ!

「私達な訳ないじゃない? シズネちゃんなんてコン太ちゃんと歩いてるとよく姉弟に間違われるって言うし♪」

「それならマリーちゃんだってこないだハルちゃんと恋人同士に間違えられたって喜んでじゃない?」

「「うふふ~♥️」」

 2人とも顔は笑ってるけど目が笑ってないし何かドス黒いオーラが見える!
 止めに入らないとヤバそう……とその時男達がキレ出した。

「無視してんじゃねーぞババァ! しゃーねぇちょっと痛い目見てもらうからこっち来い!」

 男達が母さん達につかみかかろうとするが、それぞれひらりと身をかわした。
 
「あら? 何か今起きたかしら?」

「えっ? 虫でも飛んでたんじゃない?」

「ええ、お二人の周りをブンブンうるさいハエが飛んでましたよ」 

 何事もなかったかのように話してる母さん達に男達は怒って顔が真っ赤になり

「調子に乗りやがって! いい気になるなよ!」

 ヤバい! あいつらこんな所で暴れるつもりか?もう止めに入らないと……と母さん達の方に向かおうとすると……

「ハル」

ソフィアが俺の前に手を出し俺を止める。
「何で……」と言いかけたとこでソフィアを見ると人差し指である方向を指している。
 その方向を向いてみると……



 鬼の形相で男達を見る父さんが立っていた……
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