10 / 16
秋の章
ちゃんづけ
しおりを挟む
紅葉の映える秋の昼下り、以前組んでいたバンドの仲間と久々に会い、カフェタイムを過ごした。彼の名は桑田南方。僕らの世代には珍しいキラキラネームだが、本人は気に入っているらしい。むしろ日頃からサザンのものまねに磨きをかけ、その披露で人気を博している。
他愛のない昔話の後、桑田はバツが悪そうに言った。
「おまえさ……奈美ちゃんと別れたんだって?」
「……うん」
桑田が奈美をちゃん付けするのは、僕たち元夫婦が知り合うきっかけとなったパーティーに一緒に参加していたからだ。そもそも最初に「あの子、可愛くね?」と言って奈美に目をつけていたのは桑田の方だった。それがどういうわけか、パーティーが終わる頃には僕と奈美が一緒になっていた。別に僕にアドバンテージがあったわけではない。成り行きと、ちょっとした気まぐれが僕たちの運命を決定付けた。
「昔の不倫男とやり直すって言って、子供と離婚届置いて出て行ったよ」
「昼ドラかよ! って言うかおまえ、止めるだろそれ、普通」
「止めるも何も、もう気持ちは固まっていたみたいだし……」
「おいおい、随分淡白だな。もしかして三行半の理由って、焼け木杭に火がついただけじゃなくて、おまえのそういうとこに愛想尽きたのかもしれねえぞ。意欲ねえっていうかさ、彼女はもっとアイニージュー的なの求めてたんじゃねえの」
桑田の批判の矛先が僕に向き始め、旗色が悪くなったのを見て僕は話題を変えた。
「それより最近頭を悩ませているのは子供たちのことさ」
「ハヤテとツムジが?」
「そう。なかなかお片付けが出来なくて、保育園でも先生に迷惑かけてる」
その先生に惚れていることは伏せておいた。
「ガキのことはよくわかんねえけど、手に負えないんだったら専門家に頼めば?」
「専門家?」
「俺もこのまえ足に魚の目が出来てさ、自分で薬塗ったりしたけどさっぱりで、皮膚科に行ったら一発で治ったよ。やっぱ蛇の道は蛇だぜ」
子供と魚の目を一緒にされたくはなかったが、確かに専門家に相談してみるのは悪くないと思った。
他愛のない昔話の後、桑田はバツが悪そうに言った。
「おまえさ……奈美ちゃんと別れたんだって?」
「……うん」
桑田が奈美をちゃん付けするのは、僕たち元夫婦が知り合うきっかけとなったパーティーに一緒に参加していたからだ。そもそも最初に「あの子、可愛くね?」と言って奈美に目をつけていたのは桑田の方だった。それがどういうわけか、パーティーが終わる頃には僕と奈美が一緒になっていた。別に僕にアドバンテージがあったわけではない。成り行きと、ちょっとした気まぐれが僕たちの運命を決定付けた。
「昔の不倫男とやり直すって言って、子供と離婚届置いて出て行ったよ」
「昼ドラかよ! って言うかおまえ、止めるだろそれ、普通」
「止めるも何も、もう気持ちは固まっていたみたいだし……」
「おいおい、随分淡白だな。もしかして三行半の理由って、焼け木杭に火がついただけじゃなくて、おまえのそういうとこに愛想尽きたのかもしれねえぞ。意欲ねえっていうかさ、彼女はもっとアイニージュー的なの求めてたんじゃねえの」
桑田の批判の矛先が僕に向き始め、旗色が悪くなったのを見て僕は話題を変えた。
「それより最近頭を悩ませているのは子供たちのことさ」
「ハヤテとツムジが?」
「そう。なかなかお片付けが出来なくて、保育園でも先生に迷惑かけてる」
その先生に惚れていることは伏せておいた。
「ガキのことはよくわかんねえけど、手に負えないんだったら専門家に頼めば?」
「専門家?」
「俺もこのまえ足に魚の目が出来てさ、自分で薬塗ったりしたけどさっぱりで、皮膚科に行ったら一発で治ったよ。やっぱ蛇の道は蛇だぜ」
子供と魚の目を一緒にされたくはなかったが、確かに専門家に相談してみるのは悪くないと思った。
0
お気に入りに追加
1
あなたにおすすめの小説
後悔と快感の中で
なつき
エッセイ・ノンフィクション
後悔してる私
快感に溺れてしまってる私
なつきの体験談かも知れないです
もしもあの人達がこれを読んだらどうしよう
もっと後悔して
もっと溺れてしまうかも
※感想を聞かせてもらえたらうれしいです
保健室の秘密...
とんすけ
大衆娯楽
僕のクラスには、保健室に登校している「吉田さん」という女の子がいた。
吉田さんは目が大きくてとても可愛らしく、いつも艶々な髪をなびかせていた。
吉田さんはクラスにあまりなじめておらず、朝のHRが終わると帰りの時間まで保健室で過ごしていた。
僕は吉田さんと話したことはなかったけれど、大人っぽさと綺麗な容姿を持つ吉田さんに密かに惹かれていた。
そんな吉田さんには、ある噂があった。
「授業中に保健室に行けば、性処理をしてくれる子がいる」
それが吉田さんだと、男子の間で噂になっていた。
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
体育座りでスカートを汚してしまったあの日々
yoshieeesan
現代文学
学生時代にやたらとさせられた体育座りですが、女性からすると服が汚れた嫌な思い出が多いです。そういった短編小説を書いていきます。
今日の授業は保健体育
にのみや朱乃
恋愛
(性的描写あり)
僕は家庭教師として、高校三年生のユキの家に行った。
その日はちょうどユキ以外には誰もいなかった。
ユキは勉強したくない、科目を変えようと言う。ユキが提案した科目とは。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる