シングルパパ

谷川流慕

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秋の章

ちゃんづけ

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 紅葉の映える秋の昼下り、以前組んでいたバンドの仲間と久々に会い、カフェタイムを過ごした。彼の名は桑田南方さざん。僕らの世代には珍しいキラキラネームだが、本人は気に入っているらしい。むしろ日頃からサザンのものまねに磨きをかけ、その披露で人気を博している。
 他愛のない昔話の後、桑田はバツが悪そうに言った。
「おまえさ……奈美ちゃんと別れたんだって?」
「……うん」
 桑田が奈美をちゃん付けするのは、僕たち元夫婦が知り合うきっかけとなったパーティーに一緒に参加していたからだ。そもそも最初に「あの子、可愛くね?」と言って奈美に目をつけていたのは桑田の方だった。それがどういうわけか、パーティーが終わる頃には僕と奈美が一緒になっていた。別に僕にアドバンテージがあったわけではない。成り行きと、ちょっとした気まぐれが僕たちの運命を決定付けた。
「昔の不倫男とやり直すって言って、子供と離婚届置いて出て行ったよ」
「昼ドラかよ! って言うかおまえ、止めるだろそれ、普通」
「止めるも何も、もう気持ちは固まっていたみたいだし……」
「おいおい、随分淡白だな。もしかして三行半みくだりはんの理由って、焼け木杭に火がついただけじゃなくて、おまえのそういうとこに愛想尽きたのかもしれねえぞ。意欲ねえっていうかさ、彼女はもっとアイニージュー的なの求めてたんじゃねえの」
 桑田の批判の矛先が僕に向き始め、旗色が悪くなったのを見て僕は話題を変えた。
「それより最近頭を悩ませているのは子供たちのことさ」
「ハヤテとツムジが?」
「そう。なかなかお片付けが出来なくて、保育園でも先生に迷惑かけてる」
 その先生に惚れていることは伏せておいた。
「ガキのことはよくわかんねえけど、手に負えないんだったら専門家に頼めば?」
「専門家?」
「俺もこのまえ足に魚の目が出来てさ、自分で薬塗ったりしたけどさっぱりで、皮膚科に行ったら一発で治ったよ。やっぱ蛇の道は蛇だぜ」
 子供と魚の目を一緒にされたくはなかったが、確かに専門家に相談してみるのは悪くないと思った。
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