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夏の章
ねたみ
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「よろしくお願いします」
二人の子供を預けると、ユリカ先生はニコッと笑う。お片付けのことがなければ、素直に癒やされていることだろう。だけど、子供たちは相変わらずユリカ先生の手を煩わせているのに違いなく、優しい笑顔がかえって心苦しい。
「上村さん、どうかなさいましたか?」
僕がよほど苦い顔をしていたのか、ユリカ先生は心配して訊いてくれた。
「いえ、子供たちが相変わらずご迷惑おかけしているのではないかと思いまして……。ユリカ先生からご指摘いただいてから、きちんと躾けようとしているんですが、なかなかお片付けが出来るようにならなくて……」
「そんなに気になさって下さっていたなんて、知りませんでした。かえって申し訳ありません。……上村さんて、本当に父親として良くやってらっしゃると、いつも感心しているんです」
「いえ、そんな……」
いけませんよ、ユリカ先生。落ち込んでいる時に優しい言葉をかけられたら、惚れてしまうではありませんか。いやもう惚れてますけど。
「上村さんがお二人ともお子さんを引き取られたことは、良かったと思います。兄弟が引き離されてしまうと、とても寂しいから……」
その時、ユリカ先生の顔が一瞬翳ったような気がした。彼女の方こそ何かあったのかな、と思った時……
「ユリカ先生、ちょっといい?」
と声が掛かった。僕は少しイラッとした。声をかけてきたのは、児童心理士の|伍代秀樹だった。イケメンで、人当たりもいい。もてないはずがない。しかもユリカ先生は伍代と話す時、とてもリラックスして楽しそうなのだ。それも、互いにタメ口で、単なる同僚以上の親しさを醸し出している。ユリカ先生が笑う時は、決まって伍代と一緒にいる時だ。
……なぜこんなにざわざわするのか? 僕はユリカ先生と何とかなりたいとか思っているわけではないのに。嫉妬する理由なんてないじゃないか。
ともかく二人が仲良くしているところを見ないように、僕は急いで保育園から離れた。
二人の子供を預けると、ユリカ先生はニコッと笑う。お片付けのことがなければ、素直に癒やされていることだろう。だけど、子供たちは相変わらずユリカ先生の手を煩わせているのに違いなく、優しい笑顔がかえって心苦しい。
「上村さん、どうかなさいましたか?」
僕がよほど苦い顔をしていたのか、ユリカ先生は心配して訊いてくれた。
「いえ、子供たちが相変わらずご迷惑おかけしているのではないかと思いまして……。ユリカ先生からご指摘いただいてから、きちんと躾けようとしているんですが、なかなかお片付けが出来るようにならなくて……」
「そんなに気になさって下さっていたなんて、知りませんでした。かえって申し訳ありません。……上村さんて、本当に父親として良くやってらっしゃると、いつも感心しているんです」
「いえ、そんな……」
いけませんよ、ユリカ先生。落ち込んでいる時に優しい言葉をかけられたら、惚れてしまうではありませんか。いやもう惚れてますけど。
「上村さんがお二人ともお子さんを引き取られたことは、良かったと思います。兄弟が引き離されてしまうと、とても寂しいから……」
その時、ユリカ先生の顔が一瞬翳ったような気がした。彼女の方こそ何かあったのかな、と思った時……
「ユリカ先生、ちょっといい?」
と声が掛かった。僕は少しイラッとした。声をかけてきたのは、児童心理士の|伍代秀樹だった。イケメンで、人当たりもいい。もてないはずがない。しかもユリカ先生は伍代と話す時、とてもリラックスして楽しそうなのだ。それも、互いにタメ口で、単なる同僚以上の親しさを醸し出している。ユリカ先生が笑う時は、決まって伍代と一緒にいる時だ。
……なぜこんなにざわざわするのか? 僕はユリカ先生と何とかなりたいとか思っているわけではないのに。嫉妬する理由なんてないじゃないか。
ともかく二人が仲良くしているところを見ないように、僕は急いで保育園から離れた。
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