記憶喪失の令嬢は皇太子に激執着される

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条件や基準

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 “よし2つ目。…あと1つ”

 皇宮侍女らが顔を見合わせている中、サンドラが私に恐る恐る問いかける。
 だか、しっかりと目を合わせる事はなく瞬きも多くチラチラとニーナとエマにも視線をやる。


「そ、それは。
 私達の様な者でも…お嬢様の侍女になれるかもしれないと…言う事ですか?」

「えぇ。そうよ。」
 簡単に完結に答えた瞬間、聞いていた皇宮侍女らのテンションがあがり悲鳴に近い高い声が響く。

「うそ!やった!」
「どうしたらお眼鏡にかかるかしら!」

 そう盛り上がりを見せる侍女と、黙って驚いているだけの侍女とで分かれているようだった。

 周りは盛り上がりを見せるが、ニーナは黙って食事を進め、エマも気にせずにケーキを美味しそうに頬張っていた。

 私もグラスに手を伸ばし少し口にする。

「あ、あのっ!」
 私の後ろに数人の侍女らが集まるなかの1人が声をかけてくる。

「なぁに?」
 振り返りつつ答える。

 座っている私より屈み私を見上げる皇宮侍女ら。

「条件や基準などはどの様なものなのでしょうか!?!」
 キラキラとした目を向けられるがその目の奥には闘志をみなぎらせている。

「ないわよ」

 そう一言だけ言い前を向く。

「「「え!?」」」

 驚く皆を代表するようにセナが私に首を傾げながら聞く。

「ないのですか?
 ニーナさんみたいに、バッチリ仕事が出来る子いい。とか
 エマさんみたいに、元気で明るい子がいい!とかもですか?」

「えぇ。
『私が気に入った子』に声をかけるくらいよ。
 試験なんてものもしないし、もちろん身分も関係ないわ。」

 また一口とグラスを傾ける。

 すると目の前のエマが
『ごちそうさまでした。』とパチンと手を合わせていた。

 ニコリとエマを見て微笑む。

「あぁ、強いて言うのであれば…」
 言いかけた私に皆の視線が痛いほど集まる。

「私の邪魔をしない子。かしらね。」
 そう言い終わると皇宮侍女らは顔を見合わせ合い、セナが首を傾げ不思議そうな顔で私に聞く。

「そんな方いらっしゃるのですか?」

「ふふ。さぁ?」
 セナと同じ方向に首を傾げるとサラッと流れる髪を払う。

「えぇ…」
 と、苦笑いを見せる。

「試験などもないのでしたら…どの様にお決めになりるのですか?」

 サンドラが真剣な眼差しで、今度はしっかりと私の目を見て聞いてきた。

「あら、今まさに見定められているとは思わない?」
 軽く微笑みグラスを持ち上げる。

 賑やかな話し声が聞こえていた食堂は静寂に包まれた。

 が、それは食堂の扉が開かれる音で破られる。

 扉を開けたのは食事をしにきた次の皇宮侍女らだ。
 異様な雰囲気に扉の前でピタリと止まり困惑する。

 食堂の中の侍女らが一斉に慌てだす。

「はっ!もうこんな時間!」
「大変!急がないと!」

 急いで片付けをしだすのを少し目で追い、入っても良いものか、と扉の前で立ち尽くす侍女らに向かって手招きをする。

 一番前の者らと目が合う。

「入って大丈夫よ。」
 ふわっと微笑むと、深くお辞儀をし次々と入れ替わる侍女ら。

 “ここに居続けるのは邪魔になるわね。”
 そう思いセナとニーナに目をやる。
 2人とも早くも食事は終えているようだ。

 察したニーナが先に行動に出る。
「お席に戻られますか?」

「ケーキ食べてからでいいわよ?」

「いえ。私は後でいただきますので。」
 そう言うと私の奥に座るセナに視線を送るニーナ。

「あ!私は先程ケーキは頂きましたし!お腹いっぱいですので大丈夫です!」
 セナの言葉を聞き、立ち上がる。

「そぅ?なら戻りましょうか。」

「「はい!」」
 ニーナとセナ。目の前のエマも立ち上がる。

「ニーナ。後でなんて言わず一緒に頂きましょうか。好きなの選んでらっしゃい。」

「ぇ、ですが…」
 断ろうとするニーナに最後まで言わせなかった。

「1人じゃ寂しいわ。」
 ニコリと笑顔を見せる。
 こう言うとニーナは断れない事を知っていてする。

「かしこまりました。」
 すぐに準備しに行くニーナ。
 私達の分まで片付けをするエマにも言う。

「もう少し、お願いね。」

「かしこまりました!!」
 両手を胸の辺りで強く握り、やる気わ見せる。

 クスッと笑い、セナと元座っていた席に戻る。

 ふー。一息付くとセナが笑顔で訪ねてくる。
「私もお嬢様の侍女になれますか?」

「あら?侍女がいいの?私の騎士じゃなくて?」

 私の言葉にピクッと反応する。

「あ、ご存知でしたか。」

「えぇ。遠征訓練中にカレルド殿下から聞いたわ。
 貴方が一番に志願書を出したともね。」
 後ろのセナに笑いかける。

「何だか恥ずかしいですね。」
 照れながらも、真剣な眼差しを私に向け続けた。

「これからも、お嬢様のお側にお仕えしたいと思っております。」

 セナの真意はわからない。
 だが、私の騎士団の事を考えるのは今ではなかった。

「ふふ。ありがとう。
 でもセナが侍女をするのは想像できないわね。」

「私も想像できません!」
 二人で笑いあっていると、ニーナが戻ってきた。

 お皿に小さいなケーキが3つ並んでいる。

 すぐにエマが台車を押してきて、ニーナと手早くお茶が注がれる。

「私はやっぱり、あなた達が淹れてくれたお茶が好きだわ…」

 2人を眺めていると付くづく思う。

「「ありがとうございます」」
 2人の笑顔が私に向けられ、私も笑顔を返す。




 ニーナとセナと会話をしつつ、先程と同じ様に皇宮侍女を気に掛ける。

 “あと1つなのだけど…
 思いつきでする事じゃないわね。
 まぁ、無いならないでいいか…”

 そう思いつつケーキと紅茶が進む。

 すると、バンッ!!!っと勢い良く扉が開かれると、同時に声が聞こえた。



「お嬢様はいらっしゃいますか!!!??」



 、

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