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出来る子?
しおりを挟む団長の暴露に思わずを丸くする。
「それこそ言い方が悪い。
俺はただ話をして回っただけさ。」
驚く私を見てマルセルは続ける。
「はは。知らなかった?」
「ええ。初耳です。」
呆れる私にニコりと笑いかけ、マルセルはチラッと皇宮侍女らを気にした。
食事を終え、入れ替わりで他の皇宮侍女らがやって来る。
「詳しく話してあげてもいいけど、ここでする話ではないね。」
私の意図が分かっているのだろう、ここでこの話をやめるマルセル。
「そうやって私の部屋に来る理由を作らなくてもいいのですよ?
どうせ、毎日いらっしゃるのでしょ?」
笑顔を見せると、マルセルは大きく笑った。
「あはは。まぁね!
俺が仕事を抜け出す時の言い訳なだけだよ。
ちなみに後2つ残している。
もう1つ増えちゃった。」
マルセルに視線が集まり、今来たばかりの皇宮侍女らから小さく黄色い悲鳴か聞こえる。
「ふふ。抜け出さないであげてください?」
私の言葉にクスッと口角が上がる団長。
「息抜きくらい必用さ。
黙って抜けるよりいいだろ?」
笑われたのが分かったのか団長の方を振り付き言う。
「私は何も言ったことはないでしょう?
苦言を呈しているはドイムさんです。」
少し奥の方で、哀愁漂う背中を見けるドイムに視線が行く。
「ふふ。エノワールが大変そうに見えてましたけど、ドイムも苦労しているのですね。」
「そりゃ多少は苦労はあるだろうが、カレルドの所よりマシだと思うけどなー。
あの恐怖政治の様なやり方はいつまで続くのかは疑問だ。」
マルセルは私の後のセナをチラッと見るが、私が言った通り全体を見渡し皇宮侍女らの方を向いている為目は合わなかった様だった。
“恐怖政治の様な…か。”
そう思いつつ食事を口に運ぶ。
少し会話が止まったのを見計らったのかセナが私の耳元で囁く。
「お嬢様。2列目手前の侍女…」
最後まで言う前に、スッと手を耳元で言うセナの前に上げる。
「大丈夫よ。」
横目でチラリと確認する。
皇宮侍女らに紛れていたエマがセナが言う侍女に接触する。
「失礼いたしました。」
そう言いセナは背筋を伸ばす。
「へぇ。
ただの癒し系ではないんだ。」
マルセルもエマが混ざる皇宮侍女らの集まりを確認するように赤い瞳がサッと動く。
その返答はしなかったが笑顔は作っておく。
『エマさんは本当に美味しそうに食べますよねぇ。』
すぐにエマのいる輪の中から聞こえドッと笑い声がする。
「だって美味しいですもん!」
エマの声がしたあと、全体を見渡す。
男女合わせ、ほぼ全員が美味しそうに賄いを頬張るエマに視線が集まる。
笑顔を見せる者が大半。
ジッと見つめる者、チラチラと気にする者が数人。
ドイムも1度振り向くがそれだけだった。
フッと前を向くと、マルセルもエマが居る輪の中の方を眺めていた。
後ろの団長もジッと見つめ少し口角が上がるのが見えた。
「…前言撤回した方がいい?」
そう真顔で呟くマルセルの低い声に思わず笑う。
「ふふ。お任せいたします。」
口元を手で隠しクスクス笑っているとドイムが呼びに来た。
「殿下。そろそろ。」
はぁー。と深いため息を付き嫌そうな顔をしながらもゆっくり立ち上がる。
“余程行きたくないのね…”
見送ろうと思い私も立ち上がり言う。
「そんな顔をなさらなくても。
殿下とお食事をご一緒できて楽しかったです。」
首を少し傾けると髪も流れる。
「はは。
俺も楽しかったよ。だからこそ離れたくないんだよなー。
…アルヤも一緒に来る?」
ドイムが扉に行き開けに行くのを見て、ゆっくりと歩きつつ話す。
「ふふ。それは遠慮しておきます。」
「だよなー。
ったく。侯爵なら即断ってやったのに…」
「まぁ。ご冗談ばっかり。
力のある方なのですから、無下にしてはいけないでしょう?」
クスッと笑う私に、扉の前で振り向き声のトーンを落として言う。
「俺はそうは思っていないけど。」
“え?”
一瞬真顔に見えたマルセルはすぐいつもの笑顔にもどる。
「もう少し協力してあげたかったけど思いつかなかった。ごめんね。」
「いえ。ありがとうございます。
私こそすみません。勝手に使わせて頂きました。」
マルセルに笑いかけた後、すぐ横の団長にも軽く微笑む。
「構いませんよ。」
微笑み返しつつも軽く会釈をしながら答えた団長。
「いいけど、嫉妬ー。」
そう言いながらマルセルは私の髪を首元からサラッと取り軽くキスをする。
フッと顔があげられ笑顔が見え、髪を離された。
「ふふ。そうおっしゃらずに。
行ってらっしゃいませ。」
ドレスの裾を持ちマルセルにお辞儀をする。
私と同時に後ろに居たニーナとセナ、そしていつの間にか来ていたエマも丁寧にお辞儀をする。
そんな私達につられてか、皇宮侍女らも一斉に頭を下げる音がする。
「あぁ、行ってくるね。」
マルセルの声がし頭を上げると笑顔で軽く手を振っていたので私も軽く手を振って見せる。
そんなマルセルの両脇にいる団長とドイムは会釈をし3人で廊下を歩いていった。
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