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片思い
しおりを挟むマルセル率いる、第一騎士団団長だった。
「私からもお礼を言うわ。
ありがとう。」
その間にエマはマルセルにお辞儀をする。
「いえ。お怪我がない様で安心いたしました。間に合って良かったです。」
エマが重そうに持っていた荷物を片手で軽々と持ちつつ私とエマに微笑む。
「もぉ!エーマー?!
持てない物を無理に運ばないでって昔から言ってるでしょー?!」
エマの柔らかな頬を両手でつまむ。
「すみましぇんー」
フッと軽い笑いが団長から聞こえた。
「そうですよ?
それに、私が運ぶので置いておいて下さいと、お伝えしたでしょ?」
そんな団長の話を聞きさらに力を加える。
「エーマー?!」
「いててて!すみましぇん!」
パタパタと小さく暴れるエマの頬を引っ張り伸ばして離す。
クスクスと笑いが団長とマルセルからも漏れ聞こえる。
頬を摩りながらエマは弁明する。
「すみません…
お手を煩わせてしまいましたので、せめて少しでも運んでおこうかと思いまして…」
もぉ…。とため息をつく私に言った後、エマは振り向き団長に顔を向け『えへへ…』と苦笑いをする。
「私から手伝うと申し出たのですから、気になさらないでよかったのに。
…ですが、お気遣いありがとうございます。」
そう言い終わると団長はすぐ視線を逸らし、マルセルと目が合わせる。
「興味深いじゃないか。」
ニヤニヤが止まらないと言った感じのマルセル。
「はぁ…。見つかりたくなかったですね…」
大きくため息をつき、2人の侍女から荷物を受け取ったドイムと目を合わせスッと軽く私達にお辞儀をし食堂の方へ荷物を運んで行った。
そんな2人の後ろを急足でついていく皇宮侍女らを見送る。
するとマルセルが近づいていてエマに言う。
「おかげで面白いものが見れたよ。ありがとう。」
キョトンとするエマ。
「はい…?あ、ありがとうございます?」
“面白いだなんて…”
そう思いつつも黙っていると、マルセルは奥の食堂の方を見ながら言う。
「ほら、一緒にいた侍女らがコッチ見ながら待ってるよ?
キミを待っているんじゃないのかい?」
マルセルに言われ、振り返るエマ。
「あ!」
と、思い出す様に小さく声をあげる。
すぐに私達の方に向き直す。
「申し訳ございません。
失礼いたします!」
深くお辞儀をし、小走りで戻るエマの背中を見守る。
「あの様子じゃ、アイツの片想いなんだろうなぁ。」
同じくエマの背中を見ながら言うマルセル。
「だからって、面白いなんて言うのは可哀想なのでは?」
ゆっくり歩き出し、エマ達がいる食堂へと2人で歩く。
「『恋だの愛だのは私には分かりません。
剣を振るっているほうが有意義です。』
とか、言ってた奴があんな顔したんだ。
俺には、面白い…以外の言葉は見つからないね。」
笑いながら話すマルセルは楽しそうだった。
つられて笑いが込み上げてくる。
「ふふ。
それは…面白いですね。」
「だろー?」
クスクスと笑いながら話す。
「ライバルも多いみたいだし、あれは大変だな。」
マルセルの言葉に首を傾げる。
「ライバル?ですか?」
「あれ?知らない?」
傾げた首を横に振る。
「ははは。
主人も鈍感さんだと、侍女らまで鈍感になるのかな?」
大きく笑い言うマルセルを立ち止まり見上げる。
「なっ!?」
少し前に行ったマルセルも立ち止まり、私に振り向き言う。
「ごめんごめん。
君の侍女ら人気高いらしいよ?
母さんが言ってたから、確かな情報筋からだよ?」
「こ、皇后様がですか!?」
「そー。あの人はこう言う話好きだからね。」
再び歩き出すマルセルを追う。
「ニーナはともかく…
エマからはそんな話は全く…」
「ははは!本当に気づいていないんだろうね!
それがまた面白い。」
“えぇ…”
そんな話をしていると食堂の前まで着いた。
マルセルが扉のノブに手をかけ言う。
「気にかけて見ててごらん?
1人2人じゃないはずだよ?」
コクリと頷くと、微笑むマルセルが扉を開けた。
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