記憶喪失の令嬢は皇太子に激執着される

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不快な会話

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「いやぁ。お嬢様とも話が出来るとは思っていませんでしたから光栄ですな。」
 嬉しそうな顔をする侯爵は私を見ながら続ける。

「半年ほど前でしたか?以前軽くお会いした時よりもさらにお綺麗になられましたな。
 もう時期、ご成人でしょう。
 艶やか(あでやか)さがどんどん増しますな。」

 なぁ?と同意を求める様に侯爵は横に座るダナンを見る。

「はっ、はい…」
 返事しかせず会話をしないダナンを見る侯爵の目は厳しいものだった。

「きもちわる。」
 背もたれに保たれ肘をつき、少し私の方に身体が傾けられた横に座るマルセルからボソッ呟かれたのが聞こえる。

「同感です。」
 私もボソッとマルセルだけに聞こえる様に言い共感する。

 聞こえたのか、フッと鼻で笑う様な声がした。

「ありがとうございます。
 ですが、まだ成人していない私に『艶やか』と言う言葉は少し早いかもしれませんね。」

 いつもなら笑顔を見せるが、今回は首を少し傾げ髪を動かす動きをする。

「ははは。失礼いたしました。
 その通りですな。
 マルセル殿下もお嬢様と同じお考えの様だ。」

 ニコニコと言う侯爵。
 ダナンは握りしめた拳をは両足に置き、少し俯いていた。

 いつもの笑顔ではなく、真顔で睨む様に侯爵とダナンを見つめているマルセルの顔を覗き込む。

 “ふふ。そんな顔しなくとも。”

 クスッと笑う私と目が合いマルセルも微笑みを見せた。

 会話はしないが、張り詰めていた空気が少し和らぐ感じがする。

 そんな私達をみて口を開くのは侯爵。
「いやぁ。仲が良さそうで安心しました。
 カレルド殿下とお嬢様の記事が多く出回っていましたからなぁ。」

 せっかく和らいだ雰囲気が一瞬で張り詰めた空気に戻る。

 ムッとしたマルセルは侯爵を軽く睨みながら言う。

「安心ねぇ。
 俺らを見て安心するより、侯爵家の将来を盤石にし安心する方が先なんじゃないか?」

 “これも同感ね。”
 そう思うが口には出さなかった。

「いやぁ。厳しいご指摘ですな。」
 手を頭の後ろにやり困った風に見せる侯爵。

「皇宮で作法を習うのはいいが、全く身についていない様じゃないか?」

 “そうね…
 逃げ回っている様だし。”
 キャロルと少し話した廊下での出来事を思い出す。

「私も手を焼いているのです。
 こればかりは、いくら言おうが本人のやる気なのでですなぁ。」

「やる気ない者に、いくら教え込んでも無駄だろ?」

「そうですなぁ…
 殿下が皇帝になられたら第一妃にでもしていただける。なんて言われたらやる気を出すと思うのですが?」

 予想外の侯爵の言葉に驚いていると、マルセルの低い声で一言だけ発せられる。

「ああ”?」

 明らかに怒ったマルセルに侯爵は笑い飛ばしながら言う。

「ははは。冗談ですよ?
 ですが、ミラディン家の血です。
 我が兄の様な男子が産まれるかもしれませんな!」

 1人だけ楽しそうに語る侯爵を止める者は誰もいない。

 “はぁ…部屋に戻れば良かった。”
 そう思っているとまたダナンと目が合う。

 “さっきからチラチラと…
 私に用でもあるのかしら。”
 笑顔は作らず、首を傾げる。

 そんな私に気づいた侯爵はさらに調子付言う。





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