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機嫌の悪いカレルド
しおりを挟む「…カレルド殿下?」
機嫌の悪そうな顔をしたカレルドと目があった。
セナと侍女らは深くお辞儀をする。
無言で私の後ろにいるマルセルを睨みつつ近づいてくる。
“顔を合わせると直ぐ睨み合うのだから…”
仕方ないのかもしれないが呆れる。
「セナのご両親達なら先ほど帰られましたよ?」
目の前に来たカレルドに話しかける。
「別にコイツの親に会いに来たわけじゃない。」
お辞儀をし、顔をあげたセナを見ながら言うカレルド。
何しに来たのか聞こうとした途端、カレルドが手に持っていた書類の束を私の頭にバサっと軽く叩きつける。
「っ!?」
数十枚重なりズシっと重たい紙を何とか受け取るり見る。
私の隊に志願し、カレルドにより見定められた者達の名と軽いプロフィールが書かれていた。
“わざわざ今持ってこなくても…”
そう思っていると、後ろにいたマルセルが私の耳元で言う。
「わざわざ今持ってこなくたっていいのにね。」
サッと声の聞こえた方へ向くと、いつもの笑顔のマルセル。
「ふふ。そうですね。」
私も笑顔を見せ、カレルドにお礼を言おうと前を向くがドレスを着たセナを見つめていた。
見られて少し緊張気味のセナに向かってカレルドが一言だけ言う。
「…似合わんな。」
“なんて事を軽々と?!”
驚いていると、マルセルがクフってと吹き出し笑う。
思わず口をだす。
「ちょっと!?お二人とも酷くありませんか?!」
何も言わないが、『そうか?』なんて思ってそうな顔をするカレルド。
マルセルは素直に謝る。
「はは。ごめん、ど直球だったから思わず。」
「もぉ…」
軽くため息を吐きつつ呆れる。
「お嬢様!大丈夫ですから!自分でも似合っていないと思っていましたから!」
慌て私に言うセナ。
“それはそれでダメなのだけど…”
そう思った瞬間、カレルドがセナに言う。
「もう一度、頭を下げて見せろ。」
「それは、俺も思ってた。」
マルセルもセナを見つめる。
一瞬顔が曇るがお辞儀をするセナをキョトンと私も見つめる。
まだ着心地ない動きで頭を下げるセナにカレルドがまた一言。
「もっと。」
言われた通りにより深く頭を下げる。が、キツイのかうまく下がらない。
その様子を黙って見ていたマルセルが口を出す。
「まだだ。」
「ちょっと…あまりイジメないで下さい。
まだ慣れていないのですから。」
小刻みに震えるセナを見かねて言う。
私の言葉が聞き入れられたのか、カレルドは軽く舌打ちをし言う。
「もういい。顔をあげろ。」
すぐに顔が上がる。
カレルドはセナに続ける。
「意味はわかるな?」
「はい。申し訳ございませんでした。」
謝るセナを聞き、視線が私に向けられたと思えばすぐにマルセルを睨むカレルド。
「こんな所で油売ってて良いのかよ。」
「癒しを求める時間くらい作れるさ。」
そう言いながらマルセルは、セナの方に向かおうとしていた私を後ろから抱きしめる。
「え!?ちょっと?!」
思わず声が裏返る。マルセルを見上げるが目線はカレルドの方を負けじと睨んでいた。
「お前こそ、こんな物をわざわざ作り持ってくるなんて余裕そうだな?」
私が持っていた紙の束を見ながら嘲笑うかのようにマルセルが言う。
「まぁな。」
私の真正面まで来たカレルドは私を睨み見下ろす。
「そ、そんな睨まないで下さいよ!
そして、離して下さい。」
カレルドに言い、胸の前でクロスされるマルセルの腕を軽く触れながら言う。
「えぇー。やだなぁ。」
マルセルは私の右肩に頭を乗せた。
「チっ。」
いかにも機嫌が悪そうな舌打ちが聞こえた。
するとカレルドが、反対側の左側に顔を近づけ囁きすぐにまた見下ろす様に立つ。
「さっきは悪かったな。」
思いもよらなかった行動と言葉に驚き見上げる。
『さっき。』
とは、きっとエノワールの事だろう。
「い。いえ。大丈夫です。
…そういえば姿がないですが?」
“やり過ぎてないでしょうね…”
自分で言ったものの心配になる。
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