192 / 220
秘密
しおりを挟む「簡単に信用していいの?」
見上げると少し意地の悪そうな顔をしていた。
「えぇ。他の者より信用しても良いだろうと思っていますよ。」
笑顔を見せ、セナを気にし目線をマルセルからそらす。
料理長にケーキの感想を身振り手振りをしつつ言い、侍女らと笑い会うセナを見て安心する。
「あの子の両親だから?」
マルセルもセナを見てから言う。
「そうですね。親族も含め問題ないからセナは副団長をやれているのでしょうから。」
ニコリとマルセルを見上げる。
「確かに。団長や副団長なんかの側に置く者は、家柄や親族に危ない奴がいないか、関わってないかなんかは俺は調べはするけど、アイツはどこまで調べたりしてるかは知らないよ?」
カレルドの騎士団のセナ。
自分が調べていないからか、少し心配そうな顔をする。
「構いません。
側に置くわけではありませんし、何かあれば私に見る目がなかった。ってだけです。
それに…」
娘が今の地位まで上り詰めたのを、台無しにするような事はそうそうしないだろう。
そんな考えもあったし、セナの父親の依頼を受ける際の対応も個人的に好感が持てた。
私の依頼だから。と、なりふり構わず受けず、理由を聞き納得し、さらに『自分らにも客を選ぶ権利がある。』と言わんばかりのしっかりとした目は好きだ。
既に姿が見えなくなっている廊下を遠い目で眺める。
「アルヤ?」
黙った私の顔を覗き込む様に屈むマルセル。
「…両親や親族と言うものに、羨ましさもあるのです。」
ボソッと、言うつもりはなかった本音が出る。
マルセルを背にする様に、クルッと集まり話すセナたちの方に身体の向きを変える。
「えっ」
微かに声がする。
軽く身体をひねり振り向き、人差し指を口元に近づける。
ここでマルセルの顔を見る。
眉が下がり、悲しげで心配なんかが入り交じるような…そんな表情をしていた。
あえて満面な笑みを作り小首を傾げ言う。
「誰にも言ったことなかったのに、つい言ってしまいました。
秘密ですよ?」
サラッと髪が流れる。
そんな私を見て、マルセルはフッと微笑む。
「あぁ。『二人だけ』のね。」
何も答えることなく、身体をもどしセナ達の元へ行く。
マルセルも後ろから付いてくる。
「お疲れ様。
急なお願いをしてごめんなさいね。ありがとう。」
料理長と皇宮侍女にお礼を言う。
「とんでもございません!
私こそ、お気遣いいただきありがとうございます。」
料理長が言い、頭を下げる横で皇宮侍女も頭を下げる。
“この子は、皇女様の侍女らに食ってかかってた子ね。”
そう思っていると、顔を上げた皇宮侍女と目が合う。
ビクっと緊張した顔をするが私はニコリと笑顔を見せる。
「ふふ。どういたしまして。
私も今夜食堂に行くから、また会いましょう。」
皇宮侍女と料理長に言う。
「はい!
それでは、これで失礼いたします。」
また深く頭を下げ、侍女が台車を押し帰っていき扉が閉められる。
「私たちも、戻りましょうか。」
そう侍女らとセナに言う。
「「はい!」」
エマとセナの元気な返事を聞き、既にある程度片付けられていた部屋を見渡していると、閉められたはずの扉が開く。
驚き、皆は開かれた扉に視線を集める。
「…カレルド殿下?」
機嫌の悪そうな顔をしたカレルドと目があった。
、
0
お気に入りに追加
191
あなたにおすすめの小説
ヤンデレエリートの執愛婚で懐妊させられます
沖田弥子
恋愛
職場の後輩に恋人を略奪された澪。終業後に堪えきれず泣いていたところを、営業部のエリート社員、天王寺明夜に見つかってしまう。彼に優しく慰められながら居酒屋で事の顛末を話していたが、なぜか明夜と一夜を過ごすことに――!? 明夜は傷心した自分を慰めてくれただけだ、と考える澪だったが、翌朝「責任をとってほしい」と明夜に迫られ、婚姻届にサインしてしまった。突如始まった新婚生活。明夜は澪の心と身体を幸せで満たしてくれていたが、徐々に明夜のヤンデレな一面が見えてきて――執着強めな旦那様との極上溺愛ラブストーリー!
(完結)貴方から解放してくださいー私はもう疲れました(全4話)
青空一夏
恋愛
私はローワン伯爵家の一人娘クララ。私には大好きな男性がいるの。それはイーサン・ドミニク。侯爵家の子息である彼と私は相思相愛だと信じていた。
だって、私のお誕生日には私の瞳色のジャボ(今のネクタイのようなもの)をして参加してくれて、別れ際にキスまでしてくれたから。
けれど、翌日「僕の手紙を君の親友ダーシィに渡してくれないか?」と、唐突に言われた。意味がわからない。愛されていると信じていたからだ。
「なぜですか?」
「うん、実のところ私が本当に愛しているのはダーシィなんだ」
イーサン様は私の心をかき乱す。なぜ、私はこれほどにふりまわすの?
これは大好きな男性に心をかき乱された女性が悩んで・・・・・・結果、幸せになったお話しです。(元さやではない)
因果応報的ざまぁ。主人公がなにかを仕掛けるわけではありません。中世ヨーロッパ風世界で、現代的表現や機器がでてくるかもしれない異世界のお話しです。ご都合主義です。タグ修正、追加の可能性あり。

女官になるはずだった妃
夜空 筒
恋愛
女官になる。
そう聞いていたはずなのに。
あれよあれよという間に、着飾られた私は自国の皇帝の妃の一人になっていた。
しかし、皇帝のお迎えもなく
「忙しいから、もう後宮に入っていいよ」
そんなノリの言葉を彼の側近から賜って後宮入りした私。
秘書省監のならびに本の虫である父を持つ、そんな私も無類の読書好き。
朝議が始まる早朝に、私は父が働く文徳楼に通っている。
そこで好きな著者の本を借りては、殿舎に籠る毎日。
皇帝のお渡りもないし、既に皇后に一番近い妃もいる。
縁付くには程遠い私が、ある日を境に平穏だった日常を壊される羽目になる。
誰とも褥を共にしない皇帝と、女官になるつもりで入ってきた本の虫妃の話。
更新はまばらですが、完結させたいとは思っています。
多分…
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。

虐げられた皇女は父の愛人とその娘に復讐する
ましゅぺちーの
恋愛
大陸一の大国ライドーン帝国の皇帝が崩御した。
その皇帝の子供である第一皇女シャーロットはこの時をずっと待っていた。
シャーロットの母親は今は亡き皇后陛下で皇帝とは政略結婚だった。
皇帝は皇后を蔑ろにし身分の低い女を愛妾として囲った。
やがてその愛妾には子供が生まれた。それが第二皇女プリシラである。
愛妾は皇帝の寵愛を笠に着てやりたい放題でプリシラも両親に甘やかされて我儘に育った。
今までは皇帝の寵愛があったからこそ好きにさせていたが、これからはそうもいかない。
シャーロットは愛妾とプリシラに対する復讐を実行に移す―
一部タイトルを変更しました。
傲慢令嬢は、猫かぶりをやめてみた。お好きなように呼んでくださいませ。愛しいひとが私のことをわかってくださるなら、それで十分ですもの。
石河 翠
恋愛
高飛車で傲慢な令嬢として有名だった侯爵令嬢のダイアナは、婚約者から婚約を破棄される直前、階段から落ちて頭を打ち、記憶喪失になった上、体が不自由になってしまう。
そのまま修道院に身を寄せることになったダイアナだが、彼女はその暮らしを嬉々として受け入れる。妾の子であり、貴族暮らしに馴染めなかったダイアナには、修道院での暮らしこそ理想だったのだ。
新しい婚約者とうまくいかない元婚約者がダイアナに接触してくるが、彼女は突き放す。身勝手な言い分の元婚約者に対し、彼女は怒りを露にし……。
初恋のひとのために貴族教育を頑張っていたヒロインと、健気なヒロインを見守ってきたヒーローの恋物語。
ハッピーエンドです。
この作品は、別サイトにも投稿しております。
表紙絵は写真ACよりチョコラテさまの作品をお借りしております。
(完結)「君を愛することはない」と言われて……
青空一夏
恋愛
ずっと憧れていた方に嫁げることになった私は、夫となった男性から「君を愛することはない」と言われてしまった。それでも、彼に尽くして温かい家庭をつくるように心がければ、きっと愛してくださるはずだろうと思っていたのよ。ところが、彼には好きな方がいて忘れることができないようだったわ。私は彼を諦めて実家に帰ったほうが良いのかしら?
この物語は憧れていた男性の妻になったけれど冷たくされたお嬢様を守る戦闘侍女たちの活躍と、お嬢様の恋を描いた作品です。
主人公はお嬢様と3人の侍女かも。ヒーローの存在感増すようにがんばります! という感じで、それぞれの視点もあります。
以前書いたもののリメイク版です。多分、かなりストーリーが変わっていくと思うので、新しい作品としてお読みください。
※カクヨム。なろうにも時差投稿します。
※作者独自の世界です。

【完結】6人目の娘として生まれました。目立たない伯爵令嬢なのに、なぜかイケメン公爵が離れない
朝日みらい
恋愛
エリーナは、伯爵家の6人目の娘として生まれましたが、幸せではありませんでした。彼女は両親からも兄姉からも無視されていました。それに才能も兄姉と比べると特に特別なところがなかったのです。そんな孤独な彼女の前に現れたのが、公爵家のヴィクトールでした。彼女のそばに支えて励ましてくれるのです。エリーナはヴィクトールに何かとほめられながら、自分の力を信じて幸せをつかむ物語です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる