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依頼
しおりを挟む「そのオーダー。
私も頼む事は出来ますか?」
目を見開き驚く4人。
私の言葉を聞き、隣のセナが首を傾げる。
「お嬢様のドレスですか?」
「いいえ。
実は、侍女の服を変えたいと思ってるの。
今の物は皇宮侍女らと同じ物だから、私の専属侍女用の物をね。」
「そうだったのですね!」
セナの声を皮切りに、4人は一斉に侍女らを見る。
ニーナとエマは軽く頭を下げている。
「お忙しいでしょうから、無理にとは言いません。手間もかかりそうな物ですから。」
そう4人に向か言うと、女性ふたりが顔を見合わせたと思ったらバッと立ち上がった。
「「おまかせください!!!」」
二人の男性はそれぞれ横で立った自分の妻を見上げ呆然としている。
目を輝かせ、やる気満々の女性二人。
「ふふ。ご主人にもお聞きしなくてわ。」
クスクス笑う私を見て女性らは振り返り自分の旦那に言う。
「「やるわよ!」」
拒否権すら与えず言い切る姿を見つめる。
セナの叔父と叔母は直ぐに話がついた様だったが、ご両親は少し時間がかかる。
真剣な眼差しで私を見つめ、セナの父親が言う。
「…お聞きしてもよろしいでしょうか。」
「えぇ。どうぞ。」
「どうして我々に依頼をされようと思ったのですか?
お嬢様なら他にもっと凄腕の仕立屋をご存知なのでは?
それこそ、皇族御用達の店だったり。」
当たり前な疑問だと思った。
少しピリついた空気が漂う。
「ちょっと!なんてこと言うの!」
セナの母親が父親に言うが、一切ブレることなく私に真剣な眼差しを向け続ける。
「当然な疑問だと思います。」
ニコリと笑いつつ続ける。
「確かに、皇后陛下に陛下の侍女らの物を作っていらっしゃるお店をご紹介頂く予定でした。」
ここまで言い、カップを手に取る。
「では、なぜ‥」
待ちきれないのかセナの父親が尋ねる。
「…簡単に言うと、私が皆様を気に入ったから。かしらね。」
スッとカップを口元に持っていく。
嬉しそうな顔をする女性二人を見向きもせずまた尋ねられる。
「詳しく…お願いできますか?」
「紹介して頂くのは簡単ですが、皇后陛下の二番煎じでもあります。
私、個人が気に入るところが欲しかったのもありますが…
顔も知らず話すらしたこと無い者らに、私の大事な侍女の物を作って欲しくはなかった。
多くの者が関わるのとになるのも嫌だったの。
模倣されると困るのよ。
関わる者が少ないほうが細部の情報が漏れるのを防げるし、もし漏れたらどこからかは、すぐに分かるから。」
黙ってしまった皆に笑いかける。
「こうして私が直接お会いし目を見て話をし、皆様に私の大切な侍女の物を作って頂きたいと思ったの。
これが一番の理由よ。」
私の話を聞き、今度はセナの父親が立ち上がる。
「失礼な事をお聞きし、大変申し訳ございませでした。」
深々と頭を下げる。
「いいえ。こんな理由ですけど、受けていただけますか?」
私の言葉で、皆の視線がサナの父親に向けられる。
「そこまで仰って頂きお断りする訳にはいきませんね。
妻達もやる気満々の様ですし。」
パッと明るい表情に変わる女性二人。
まぁ、そうだよな。と言うような表情を見せる叔父が父親と目を合わせ苦笑し合う。
「ありがとうございます。
無理に聞き入れてもらった様で、申し訳ございません。」
ニコリと、苦笑いを見せる二人に言う。
「と、とんでもございません!
こうしてお話させて頂くだけでも凄い事なのに、依頼まで頂けるなんて思っておりませんでした!」
「そうですこの様な貴重なオーダーを受けられるなんて夢のようです!ありがとうございます!」
少し顔を赤くし、慌てながら言うセナの父親と叔父。
「そう言って頂けると嬉しいです。
何かの縁です。よろしくお願いしますね。」
またニコリと笑顔を見せる。
「「コチラこそ!よろしくお願いいたします!」」
二人声を合わせお辞儀をする旦那らを無視し、女性らは私の方に身を乗り出しながら聞く。
「お色味とかはもうお考えですか!?」
「希望のデザインなんかももうお考えですか!?」
あまりの迫力に押されながらも答える。
「い、いえ。
私の侍女だと分かる色合いにしたいとは思っているくらいです。
デザインなんかは実際着る侍女らに任せようと思っていました。」
そう言いながら侍女らに目を向ける。
ニコリと微笑むニーナと、満面の笑みを見せるエマに手招きをし呼ぶ。
エマはすぐに来たが、ニーナは何やら準備をし少し遅れ来て、テーブルに数枚の紙とペンが置かれる。
「身のこなしも、気遣いも…さすがお嬢様の侍女様ですね。」
叔母が呟く。
「ありがとうございます。」
スカートを軽く持ち広げお辞儀をするニーナを見つめる。
「もう頼りっぱなしです。」
すると、セナの母親が私の横を見ながら言う。
「それに比べて…。」
フッと横に座るセナを見ると、美味しそうにケーキを頬張っていた。
自分に視線が集まるのがわかり首を傾げる。
「ふぇ?なんれふか?」
「口に含んだまま喋らないの!みっともない!!!」
怒られるセナをクスクス笑う。
「そんなに気を抜いてていいのか…?」
父親は飽きれた顔をしながらセナに聞く。
その問に答えたのは私。
「大丈夫ですよ。
昨夜邪魔してしまったお詫びも兼ねてお呼びしていますし、カレルド殿下にもお伝えしております。
それに、今日は人の出入りが多いので全隊警備に回っているようですから。
そこら中に騎士の方が居ます。」
窓の外を見ながら言うと、皆同じ様にを窓に視線を移す。
外を歩く騎士の姿が確認できる。
「でも、不意に来られる事があるから気を付けなさいね。」
ニコリとセナに言うとコクリコクリと頷く。
侍女らを交え、生地やデザインなどが話し合いが勧められる。
サラサラと叔父が紙にデザインが書かれていく。
“へぇ。さすがね。”
仕事モードに入ったセナの父親と叔父を眺めながら紅茶を口にする。
母親と叔母はたまに意見を述べるくらいだった。
すると、コンコン。扉がなる。
直ぐにニーナが立ち上がり扉の前に行く。
私以外の皆扉に視線をやる。
“意外と遅かったわね。”
そう思いながら紅茶を飲み干す。
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