上 下
178 / 192

優しい?

しおりを挟む






 セナと話をし、カレルドの横に行く。

「もしかして、私を待ってくださってますか?」

 揶揄うように聞くと、私を見下ろし答えが返ってくる。

「そうだが?」

 素直な言葉に少し驚くが笑いが込み上げる。
「ふふ。別に。っとか言われると思っていたのですが。」

「ふん。それで?何か用か?」

「はい。セナを少し使いに出したいのですが、宜しいですか?」
 カレルドに聞くと、ジッとセナをみる。

「…構わない。」
 少し考え言う。
 その言葉を聞き、セナに言う。

「良いそうよ。お願いできる?」

「かしこまりました!すぐに!」
 そう言うと、セナはお辞儀をし小走りで廊下を駆けていく。

「ふふ。相変わらず元気ですね。」
 セナの後ろ姿を眺め、カレルドを見上げるが返事はなかった。

 すると、侍女らの手伝いをしていたニーナが近づいてくる。

「あら、もう終わったの?」

「いえ、もう少しで出し終わりますが、小さい食べきりサイズのケーキも御座いますが、全て出されますか?」

 厨房の入り口にいるいつくかケーキの乗ったトレイを持つエマが目に入る。

「エマが持っている物で全部なの?」

「はい。全部で9つあります。」

 “まぁ、それくらいなら大丈夫かな…”

「えぇ。全部お願い。あ、あと。…」

「かしこまりました。」
 スッとお辞儀をしニーナは厨房に戻っていく。

「ふっ。全部食べる気か?」
 上から少しの笑い声が聞こえる。

 笑いながらカレルドを見上げ言う。
「ふふ、まさか。あ、お一つどうですか?」

「いらん。甘ったるいのは嫌いだ。」

 想像通りの答えが返ってくる。
 クスクス笑いながら、カレルドの横のエノワールにも言う。

「アナタは?エノワール。」

 少し顔を出し笑顔で言う。
「是非!糖分がないと頭が働きませんから。」

 そんなエノワールを睨みつけ言うカレルド。
「お前は角砂糖でも食ってろ。」

「ちょ!酷すぎません?!誰のせいでフル回転してると思ってるいるのですか!?」

「あ”ぁ?俺のせいだと言いたいのか?」

「えぇ!話に乗った時点で同罪です!」

 2人の話をスクスク笑いながら聞く。
 昨夜の話をしているのだろう、とは簡単に想像がつく。
 今朝のどの新聞にも大きく載っていた。
 私も勿論読んだ。
 私達が帰った後すぐに号外新聞が出来配られたらしいが、それは目にしていない。

 作業が終わったのか、開けられたままの厨房の扉からチラチラと侍女の目線が向けられてきた。

 すると、ニーナとエマが出てき、料理長も後から付いてくる。

「お嬢様、終わりました。」
 ニーナの言葉に頷くと、料理長が深く頭を下げる。

「ほ、本当に、ありがとうございます!」

「ふふ。どういたしまして。
 あ、総料理長に伝えてくれる?
 体調が良くなってからで構わないから、私の部屋にいらっしゃい。って。」

「かしこまりました!!」

 頭を下げたまま言う料理長。

「お願いね。
 皆もお疲れ様。仕事に戻って大丈夫よ。」
 料理長の肩にポンと手を置きながら後ろの侍女らにも言う。

 皆頭を下げる。

「ほら、もう良いだろう。行くぞ。」
 カレルドの声と共に足音が聞こえる。

「また来るわね。」

 そう言い、カレルドの後を追う。




 長い廊下を、カレルドの早くも遅くもない、私の歩幅に合わしているのだろう速度で歩きつつ私の部屋に向かう。

 フッと思い出しカレルドに言う。

「あ、手袋と、ドレス。ありがとうございます。」

「…あぁ。」
 淡白な返事だけが返ってくる。

「手袋なんて、私が忘れていたのによく覚えていらっしゃいますね。」

「まぁ…買ってやるって俺が言ったしな。」

 カレルドの少し後ろを歩いていた為、見上げても表情は分からなかった。

 “少しでも、罪悪感があったから覚えてた?とか?”
 そんな考えをしながらお礼を言う。
「ふふ。ありがとうございます。」

「あぁ。よかったな。」

「えぇ。セナ達3人も、朝からドレスを見にきて楽しそうでしたよ。」

「まったく…アイツら。」
 ボソッと言うカレルド。

「別に、私の部屋ではなく各自の部屋に送ってあげた方が良かったのでは?」
 ただ疑問に思っていたことを聞く。

「どーせ1人で着れずにお前の所に持っていくんだ。その手間を省いてやっただけだ。
 アイツらの部屋じゃ、置く場所もないだろうしな。」

 “そこまで考えてたのね…”
 確かに、3人ともドレスは私の部屋に置いて欲しいとお願いされていた。

「お優しいのですね。」

「ふっ。知ってる。」
 少しだけ私に顔を向け微笑んだカレルド。

「まぁ!」
 クスクス笑いながら話していると、私の部屋の前に着く。



「セナの代わりに、エノワールを置いて行く。なんかあったら呼べ。」
 直ぐ立ち去ろうとするカレルドを止めたのはエノワールだった。

「え!?殿下1人で大丈夫なのですか!?」

「俺1人じゃ、貴族の相手すら出来ないと言いたいのか?」
 ギロっと赤い瞳が、エノワールを睨みつける。




しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【完】あの、……どなたでしょうか?

桐生桜月姫
恋愛
「キャサリン・ルーラー  爵位を傘に取る卑しい女め、今この時を以て貴様との婚約を破棄する。」 見た目だけは、麗しの王太子殿下から出た言葉に、婚約破棄を突きつけられた美しい女性は……… 「あの、……どなたのことでしょうか?」 まさかの意味不明発言!! 今ここに幕開ける、波瀾万丈の間違い婚約破棄ラブコメ!! 結末やいかに!! ******************* 執筆終了済みです。

初夜に「俺がお前を抱く事は無い!」と叫んだら長年の婚約者だった新妻に「気持ち悪い」と言われた上に父にも予想外の事を言われた男とその浮気女の話

ラララキヲ
恋愛
 長年の婚約者を欺いて平民女と浮気していた侯爵家長男。3年後の白い結婚での離婚を浮気女に約束して、新妻の寝室へと向かう。  初夜に「俺がお前を抱く事は無い!」と愛する夫から宣言された無様な女を嘲笑う為だけに。  しかし寝室に居た妻は……  希望通りの白い結婚と愛人との未来輝く生活の筈が……全てを周りに知られていた上に自分の父親である侯爵家当主から言われた言葉は──  一人の女性を蹴落として掴んだ彼らの未来は……── <【ざまぁ編】【イリーナ編】【コザック第二の人生編(ザマァ有)】となりました> ◇テンプレ浮気クソ男女。 ◇軽い触れ合い表現があるのでR15に ◇ふんわり世界観。ゆるふわ設定。 ◇ご都合展開。矛盾は察して下さい… ◇なろうにも上げてます。 ※HOTランキング入り(1位)!?[恋愛::3位]ありがとうございます!恐縮です!期待に添えればよいのですがッ!!(;><)

心の声が聞こえる私は、婚約者から嫌われていることを知っている。

木山楽斗
恋愛
人の心の声が聞こえるカルミアは、婚約者が自分のことを嫌っていることを知っていた。 そんな婚約者といつまでも一緒にいるつもりはない。そう思っていたカルミアは、彼といつか婚約破棄すると決めていた。 ある時、カルミアは婚約者が浮気していることを心の声によって知った。 そこで、カルミアは、友人のロウィードに協力してもらい、浮気の証拠を集めて、婚約者に突きつけたのである。 こうして、カルミアは婚約破棄して、自分を嫌っている婚約者から解放されるのだった。

王子を身籠りました

青の雀
恋愛
婚約者である王太子から、毒を盛って殺そうとした冤罪をかけられ収監されるが、その時すでに王太子の子供を身籠っていたセレンティー。 王太子に黙って、出産するも子供の容姿が王家特有の金髪金眼だった。 再び、王太子が毒を盛られ、死にかけた時、我が子と対面するが…というお話。

婚約者が私以外の人と勝手に結婚したので黙って逃げてやりました〜某国の王子と珍獣ミミルキーを愛でます〜

平川
恋愛
侯爵家の莫大な借金を黒字に塗り替え事業を成功させ続ける才女コリーン。 だが愛する婚約者の為にと寝る間を惜しむほど侯爵家を支えてきたのにも関わらず知らぬ間に裏切られた彼女は一人、誰にも何も告げずに屋敷を飛び出した。 流れ流れて辿り着いたのは獣人が治めるバムダ王国。珍獣ミミルキーが生息するマサラヤマン島でこの国の第一王子ウィンダムに偶然出会い、強引に王宮に連れ去られミミルキーの生態調査に参加する事に!? 魔法使いのウィンロードである王子に溺愛され珍獣に癒されたコリーンは少しずつ自分を取り戻していく。 そして追い掛けて来た元婚約者に対して少女であった彼女が最後に出した答えとは…? 完結済全6話

貴方の事なんて大嫌い!

柊 月
恋愛
ティリアーナには想い人がいる。 しかし彼が彼女に向けた言葉は残酷だった。 これは不器用で素直じゃない2人の物語。

〖完結〗その子は私の子ではありません。どうぞ、平民の愛人とお幸せに。

藍川みいな
恋愛
愛する人と結婚した…はずだった…… 結婚式を終えて帰る途中、見知らぬ男達に襲われた。 ジュラン様を庇い、顔に傷痕が残ってしまった私を、彼は醜いと言い放った。それだけではなく、彼の子を身篭った愛人を連れて来て、彼女が産む子を私達の子として育てると言い出した。 愛していた彼の本性を知った私は、復讐する決意をする。決してあなたの思い通りになんてさせない。 *設定ゆるゆるの、架空の世界のお話です。 *全16話で完結になります。 *番外編、追加しました。

婚約破棄されないまま正妃になってしまった令嬢

alunam
恋愛
 婚約破棄はされなかった……そんな必要は無かったから。 既に愛情の無くなった結婚をしても相手は王太子。困る事は無かったから……  愛されない正妃なぞ珍しくもない、愛される側妃がいるから……  そして寵愛を受けた側妃が世継ぎを産み、正妃の座に成り代わろうとするのも珍しい事ではない……それが今、この時に訪れただけ……    これは婚約破棄される事のなかった愛されない正妃。元・辺境伯爵シェリオン家令嬢『フィアル・シェリオン』の知らない所で、周りの奴等が勝手に王家の連中に「ざまぁ!」する話。 ※あらすじですらシリアスが保たない程度の内容、プロット消失からの練り直し試作品、荒唐無稽でもハッピーエンドならいいんじゃい!的なガバガバ設定 それでもよろしければご一読お願い致します。更によろしければ感想・アドバイスなんかも是非是非。全十三話+オマケ一話、一日二回更新でっす!

処理中です...