記憶喪失の令嬢は皇太子に激執着される

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優しい?

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 セナと話をし、カレルドの横に行く。

「もしかして、私を待ってくださってますか?」

 揶揄うように聞くと、私を見下ろし答えが返ってくる。

「そうだが?」

 素直な言葉に少し驚くが笑いが込み上げる。
「ふふ。別に。っとか言われると思っていたのですが。」

「ふん。それで?何か用か?」

「はい。セナを少し使いに出したいのですが、宜しいですか?」
 カレルドに聞くと、ジッとセナをみる。

「…構わない。」
 少し考え言う。
 その言葉を聞き、セナに言う。

「良いそうよ。お願いできる?」

「かしこまりました!すぐに!」
 そう言うと、セナはお辞儀をし小走りで廊下を駆けていく。

「ふふ。相変わらず元気ですね。」
 セナの後ろ姿を眺め、カレルドを見上げるが返事はなかった。

 すると、侍女らの手伝いをしていたニーナが近づいてくる。

「あら、もう終わったの?」

「いえ、もう少しで出し終わりますが、小さい食べきりサイズのケーキも御座いますが、全て出されますか?」

 厨房の入り口にいるいつくかケーキの乗ったトレイを持つエマが目に入る。

「エマが持っている物で全部なの?」

「はい。全部で9つあります。」

 “まぁ、それくらいなら大丈夫かな…”

「えぇ。全部お願い。あ、あと。…」

「かしこまりました。」
 スッとお辞儀をしニーナは厨房に戻っていく。

「ふっ。全部食べる気か?」
 上から少しの笑い声が聞こえる。

 笑いながらカレルドを見上げ言う。
「ふふ、まさか。あ、お一つどうですか?」

「いらん。甘ったるいのは嫌いだ。」

 想像通りの答えが返ってくる。
 クスクス笑いながら、カレルドの横のエノワールにも言う。

「アナタは?エノワール。」

 少し顔を出し笑顔で言う。
「是非!糖分がないと頭が働きませんから。」

 そんなエノワールを睨みつけ言うカレルド。
「お前は角砂糖でも食ってろ。」

「ちょ!酷すぎません?!誰のせいでフル回転してると思ってるいるのですか!?」

「あ”ぁ?俺のせいだと言いたいのか?」

「えぇ!話に乗った時点で同罪です!」

 2人の話をスクスク笑いながら聞く。
 昨夜の話をしているのだろう、とは簡単に想像がつく。
 今朝のどの新聞にも大きく載っていた。
 私も勿論読んだ。
 私達が帰った後すぐに号外新聞が出来配られたらしいが、それは目にしていない。

 作業が終わったのか、開けられたままの厨房の扉からチラチラと侍女の目線が向けられてきた。

 すると、ニーナとエマが出てき、料理長も後から付いてくる。

「お嬢様、終わりました。」
 ニーナの言葉に頷くと、料理長が深く頭を下げる。

「ほ、本当に、ありがとうございます!」

「ふふ。どういたしまして。
 あ、総料理長に伝えてくれる?
 体調が良くなってからで構わないから、私の部屋にいらっしゃい。って。」

「かしこまりました!!」

 頭を下げたまま言う料理長。

「お願いね。
 皆もお疲れ様。仕事に戻って大丈夫よ。」
 料理長の肩にポンと手を置きながら後ろの侍女らにも言う。

 皆頭を下げる。

「ほら、もう良いだろう。行くぞ。」
 カレルドの声と共に足音が聞こえる。

「また来るわね。」

 そう言い、カレルドの後を追う。




 長い廊下を、カレルドの早くも遅くもない、私の歩幅に合わしているのだろう速度で歩きつつ私の部屋に向かう。

 フッと思い出しカレルドに言う。

「あ、手袋と、ドレス。ありがとうございます。」

「…あぁ。」
 淡白な返事だけが返ってくる。

「手袋なんて、私が忘れていたのによく覚えていらっしゃいますね。」

「まぁ…買ってやるって俺が言ったしな。」

 カレルドの少し後ろを歩いていた為、見上げても表情は分からなかった。

 “少しでも、罪悪感があったから覚えてた?とか?”
 そんな考えをしながらお礼を言う。
「ふふ。ありがとうございます。」

「あぁ。よかったな。」

「えぇ。セナ達3人も、朝からドレスを見にきて楽しそうでしたよ。」

「まったく…アイツら。」
 ボソッと言うカレルド。

「別に、私の部屋ではなく各自の部屋に送ってあげた方が良かったのでは?」
 ただ疑問に思っていたことを聞く。

「どーせ1人で着れずにお前の所に持っていくんだ。その手間を省いてやっただけだ。
 アイツらの部屋じゃ、置く場所もないだろうしな。」

 “そこまで考えてたのね…”
 確かに、3人ともドレスは私の部屋に置いて欲しいとお願いされていた。

「お優しいのですね。」

「ふっ。知ってる。」
 少しだけ私に顔を向け微笑んだカレルド。

「まぁ!」
 クスクス笑いながら話していると、私の部屋の前に着く。



「セナの代わりに、エノワールを置いて行く。なんかあったら呼べ。」
 直ぐ立ち去ろうとするカレルドを止めたのはエノワールだった。

「え!?殿下1人で大丈夫なのですか!?」

「俺1人じゃ、貴族の相手すら出来ないと言いたいのか?」
 ギロっと赤い瞳が、エノワールを睨みつける。




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