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マルセルからの贈り物
しおりを挟む「た、ただいま。何この山は…」
驚いていると、ニーナが私の後ろから教えてくれる。
「右側が、エノワール様が運ばれてきた物で、カレルド殿下からだそうです。
左側が、ドイム様が運ばれてきた物で、マルセル殿下からだそうです。」
「贈り物ってこんなにあるの…?
加減ってものを知らないのかしら…」
「知らないでしょうね!お嬢様には特に!」
ハンナが、カゴに入る花のアレンジメントを持ってきた。
「その花…私が見てた…」
ソッと中心にある大ぶりで存在感のある花に触れる。
真っ白なシャクヤク。
花屋の店員にシ2人で聞いたシャクヤクの花言葉を思い出す。
白いシャクヤクを囲む様に薄いピンクの花々と色鮮やかな緑の葉がさらに周りを囲むアレンジメント。
“いつのまに…”
思わずはにかむ。
「花束ではなくアレンジメントなのが、さすがマルセル殿下って感じですね!」
「そうね。お花は私の机に置いといて?」
「はい!」
ハンナが私に背を向け机に向かう。
先ほどからソワソワしていたエマに言う。
「ふふ。開けていきましょうね。」
「はい!!」
エマの待ってました!と言わんばかりの元気な返事が聞こえる。
「もう…アナタのではないのよ!?」
ニーナが呆れた様にエマに言うがそれでも楽しそうに返事をする。
「わかってますけど、気になるじゃないですかー!」
そんな2人を見て笑いながら、マルセルの山から開ける。
“あの花を見るに…大体中身は分かるわね。”
箱を開けていくと、案の定一緒に回った店で私が眺めていた物や手に取った物が入っている。
「素敵なものが沢山!そしてお嬢様のお好きな様な物ばかりですね!すご~い!」
取り出しつつテンションの高いエマ。
「本当に…凄いですね。」
珍しくニーナも関心しつつ並べていく。
「ふふ。そうね。」
“私が見てた物だから、まぁそうよね。”
次に真っ黒で頑丈そうな箱に手を出すと、ニーナが駆け寄ってくる。
「それは扱いに気をつけて欲しいと、ドイム様が仰ってました。」
そう言われて、これも察しがついた。
「わかったわ。」
ソッと開けると、ガラスで出来たティーセット一色が入っていた。
「凄い…。ガラスですか?」
私の後ろで見ていたハンナが呟く。
「えぇ。キレイね。」
ティーポットを箱から出し眺める。
一切装飾はなく、シンプルなデザインだがガラスというだけで特別な物に感じる。
「すごーい!コレで紅茶を淹れるととってもキレイなのでしょうね!
早速お淹れしましょうか!!」
意気込むエマとニーナも私の後ろに来てポットを眺める。
「ふふ。そうね、ニーナ。お願いするわ。
エマだと危なっかしいわ。」
ポットを戻しながら言うと、すぐにニーナが横に来て箱ごと受け取る。
「かしこまりました。」
「えぇー!私もやりたいです!」
「次やればいいわよ。流石に一度も使わず割れてしまったなんて、マルセル殿下に言えないでしょ?」
立ち上がりながらエマの方を向く。
「もう割りません!ここ数年割ってないですし!」
「と.言う事は。数年前まで割ってたって事ですか?」
話を聞いていたハンナがエマに笑いながら言う。
ビクッと身体を反応させてるエマにハンナと笑う。
「ふふ。さぁ、エマ。
ハンガーをいくつか持ってきて頂戴?
箱から見るにドレスでしょうから。」
そう言いながら、まだ開けていないカレルドの方の箱の山を見る。
ハッとした様にエマは元気に戻る。
「すぐにお持ちします!!」
“カレルド殿下は…ドレス4着?ってところかしら…
多いわね…”
「開けなくても分かるのですか?」
首を傾げるハンナ。
「えぇ。箱でわかるわ。
后皇様が気に入ってらっしゃるドレスショップの箱よ。
カレルド殿下のも、同じところね。」
「え!?じゃぁアレ全部ドレスですか?!多すぎません?」
カレルドの箱の山を指差しながら驚いている。
「そうねー。着れるものがあればいいのだけど…」
「着れないドレスなんてあるのですか?」
「あるわよ?」
そう言うと、ニーナとエマが帰ってくる。
すぐにニーナが私の隣に来てドレスが入っているであろう箱を見ながら言いづらそうにする。
「あ。あの…」
「大丈夫よ。コレ着て一緒に皇太子の誕生パーティに出てくれ。
とかでしょ?2人とも。」
頷くだけのニーナ。
「これが、着れないドレスよ。
まぁ。開けてみましょう。」
ハンナのに困った顔を見せ、屈み箱を開ける。
そこには、やはりドレスが入っていた。
持ち上げて全体を見る。
黒いチュール生地が広がりを見せる。
胸元と裾には赤と薄いピンク、銀色が混じる糸で大小様々な薔薇の刺繍。
銀色が混じっている為か、光に当たるとキラっと光る。
“…キレイ。”
それが正直な感想だった。
黙ってエマに渡し、ハンガーにかけられ少し離れて全体を眺める。
「凄く素敵…。キラキラ輝いてます!」
ドレスを整えながらエマは刺繍を眺める。
ニーナとハンナは黙り息を飲むかの様だった。
「そうね…。
さぁ。マルセル殿下のはコレでお終いね。
次、開けるわよ。」
そう言いながらカレルドの箱の山の前に行く。
「はい!」
返事はエマのみで、ニーナとハンナは黙って後ろから付いてくる。
1番上に置いてある、手のひらより少し大きい箱から開けてみる。
「…コレ、まさかあの時言ってた…」
ボソッと呟きながら、箱から取り出してみる。
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