170 / 216
夜の庭園
しおりを挟む「おや?」
「あら!まあまぁ!」
男女1人づつの声。
顔を上げると、仲良く腕を組んで歩く両陛下がコチラに近づいてきている。
スッと立ち上がりお辞儀をする。
「アルヤお帰りー!」
ニッコニコの皇后が私に言う。
「ただいま戻りました。」
私も笑顔で挨拶する。
「こんな所で何してるの?
マルセルの上着まで羽織っちゃってー!」
楽しそうな皇后は陛下の腕から離れ近くにくる。
マルセルも立ち上がりため息を吐きつつボソッと言う。
「…まったく。皆んなして俺の邪魔する。」
聞こえたのか皇后はムスッとしマルセル頬をグイっと摘み言う。
「親に向かって邪魔とは何よー?!」
「ちょ!!母さん痛いって!!?」
思わぬ家族の光景にクスクス笑いが出る。
そんな私の横に来た陛下。
「お帰り。どうだったかな?」
「はい!楽しかったです!許可して頂きありがとうございました。」
マルセル達よりも背の高い陛下を見上げ笑顔で答える。
「ははは!
カレルドから軽く報告は受けているし、新聞記事も目にしたよ。
まぁ、楽しかったのなら良かった。」
優しく微笑んでくれる陛下と顔を見合わせる。
「はい。やらなくてはいけない事が見えてきましたし。とても有意義な日々でした。」
「ほぉ?まぁ好きにやりなさい。手助けが必要な時は遠慮なくおいで。」
「ありがとうございます。
実は、侍女の件で少しご相談が…」
ソフィアの事を話し、まず皇宮侍女として雇えないかと相談する。
「構わないが、皇宮内の事は皇后の管轄だ。言えばすぐ手配してくれるだろう。」
そう言いながら陛下は、言い争う皇后とマルセルの方を向く。
私も同時に陛下と同じ方を向く。
「だから!どうみても俺とアルヤはデート中だったでしょ!?」
頬を抑えながら皇后に言うマルセル。
「知らないわよ!そこ曲がったらアナタ達がそこに居たんだもの!」
「居ても察して離れてくれてもいいでしょう?!」
「屈んでたんだから何してるのかって、普通気になるでしょ!?」
2人の言い争いを陛下と見守る。
「はぁ。君が出て1週間、皇女の相手をしてたロザリアはずっとあんな感じでねぇ。」
苦笑いする陛下。
「まぁ…。それは、お察し致します…。
あ、先程皇女様にお会いしました。
マルセル殿下もそのせいか気が立っているようですね。」
「あぁ。知ってるよ。この先だろ?
皇女がここに入っていくのが見えたから、私達は鉢合わせないように後ろからゆっくり歩いてきたのだからね。
ロザリアの気分転換のつもりだったが、こうなるのは予想外だ。」
「申し訳ございません…。」
苦い顔をし陛下を見上げ言う。
「はは。君が謝る事なんて何もないよ。」
そう言うと陛下は皇后に声をかける。
「ロザリア。アルヤ嬢が君に相談したい事があるそうだよ。」
陛下の言葉を聞き、パッと明るい表情を私に向けて近づいてくる。
「アルヤー!」
ガバッと抱きつかれ少しよろけるが、陛下がソッと支えてくれた。
「もう、アルヤがどれだけ良い子か実感する1週間だったわ!
何でも言って!どんな無茶でも絶対叶えてあげるから!」
「お疲れ様でした。
私はただ皇宮侍女として入れて欲しい子がいるので、そのご相談だったのですが…」
顔を上げ首を傾げる皇后。
「皇宮の侍女?アナタのじゃなくて?」
「はい。技術面では問題なさそうですが、既に3度試験に落ちているそうなのです。どうでしょう?」
少し離れるが、私の手を握る皇后の目を見て話す。
「いいわよ?なんなら皇宮侍女の管理、アルヤがする?」
平然と言う皇后の言葉に驚いていると、マルセルが横に来て言う。
「それは皇后の仕事でしょう?」
「あら、いずれアルヤの仕事になるのよ?
早いか、遅いかの違いよ。
ねぇ?ロレンツォ?」
マルセルを見たあとに陛下に視線が集まる。
「そうだね。」
多くは語らなかった陛下。
「流石に急に全部丸投げはしないし、次の侍女長をどうするか、なんかも決めないといけないから、1番時間がかかると思うの。
それに、何をするのか知らないけど、侍女達の動きが分かった方がやり易いでしょ?
どうかしら?」
優しい表情で私を見て話す皇后。
“確かに、全て把握できるのならかなり役に立つし、いずれ私がする仕事…”
黙って考えていると、またマルセルが口を開く。
「それっぽい事言って、自分の仕事減らしたいだけなのでわー?」
「やけに今日は突っかかってくるわね!」
ムッとマルセルを見る皇后。
握られていた手をソッと握り返し、私の方を向いた皇后に笑顔を見せる。
「とても有難いお話です。
お忙しいとは思いますが、お願いでしますか?」
「もちろんよ!
やった!皇女の相手が出来ない理由ができた!
あ…」
思わず本音が出たのか、言い終わり口を手で隠す。
「ははは。それが狙いだったのか。」
笑う陛下に釣られてマルセルも私もクスッと笑ってしまう。
「そ、そうだけど!アルヤの為でもあるのよ!
アルヤも断る口実になるでしょー!?」
ワタワタと少し慌てて言う皇后が続ける。
「もう限界だったのよお!
コレからは私は忙しいから、アナタ達の所に行けって言うから!覚悟しなさいよ!」
マルセルに指を刺しながら笑う。
「俺の所より、カレルドの方を勧めてくれません?
どうやら、カレルドと楽しく話されたそうですよ?」
フッと少し悪い笑顔になるマルセル。
「はは。あいつと楽しく会話?何だそれ。」
笑う陛下に私が答える。
「先程、皇女様ご本人が仰ってました。」
「そうなの?!」
目を丸くする皇后。陛下も驚いているようだった。
「はい。」
「あの子にどんな話ししたのか聞き出さなくちゃ…」
ボソッと言う皇后に笑っていると、皇后に握られていた手をマルセルが解き、私の手を引く。
「俺は、アルヤ。
カレルドは、皇女。コレで丸く解決。
でわ。」
、
10
お気に入りに追加
192
あなたにおすすめの小説

家出したとある辺境夫人の話
あゆみノワ@書籍『完全別居の契約婚〜』
恋愛
『突然ではございますが、私はあなたと離縁し、このお屋敷を去ることにいたしました』
これは、一通の置き手紙からはじまった一組の心通わぬ夫婦のお語。
※ちゃんとハッピーエンドです。ただし、主人公にとっては。
※他サイトでも掲載します。
離婚した彼女は死ぬことにした
まとば 蒼
恋愛
2日に1回更新(希望)です。
-----------------
事故で命を落とす瞬間、政略結婚で結ばれた夫のアルバートを愛していたことに気づいたエレノア。
もう一度彼との結婚生活をやり直したいと願うと、四年前に巻き戻っていた。
今度こそ彼に相応しい妻になりたいと、これまでの臆病な自分を脱ぎ捨て奮闘するエレノア。しかし、
「前にも言ったけど、君は妻としての役目を果たさなくていいんだよ」
返ってくるのは拒絶を含んだ鉄壁の笑みと、表面的で義務的な優しさ。
それでも夫に想いを捧げ続けていたある日のこと、アルバートの大事にしている弟妹が原因不明の体調不良に襲われた。
神官から、二人の体調不良はエレノアの体内に宿る瘴気が原因だと告げられる。
大切な人を守るために離婚して彼らから離れることをエレノアは決意するが──。
-----------------
とあるコンテストに応募するためにひっそり書いていた作品ですが、最近ダレてきたので公開してみることにしました。
まだまだ荒くて調整が必要な話ですが、どんなに些細な内容でも反応を頂けると大変励みになります。
書きながら色々修正していくので、読み返したら若干展開が変わってたりするかもしれません。
作風が好みじゃない場合は回れ右をして自衛をお願いいたします。

今日は私の結婚式
豆狸
恋愛
ベッドの上には、幼いころからの婚約者だったレーナと同じ色の髪をした女性の腐り爛れた死体があった。
彼女が着ているドレスも、二日前僕とレーナの父が結婚を拒むレーナを屋根裏部屋へ放り込んだときに着ていたものと同じである。

皇太子夫妻の歪んだ結婚
夕鈴
恋愛
皇太子妃リーンは夫の秘密に気付いてしまった。
その秘密はリーンにとって許せないものだった。結婚1日目にして離縁を決意したリーンの夫婦生活の始まりだった。
本編完結してます。
番外編を更新中です。



〖完結〗愛人が離婚しろと乗り込んで来たのですが、私達はもう離婚していますよ?
藍川みいな
恋愛
「ライナス様と離婚して、とっととこの邸から出て行ってよっ!」
愛人が乗り込んで来たのは、これで何人目でしょう?
私はもう離婚していますし、この邸はお父様のものですから、決してライナス様のものにはなりません。
離婚の理由は、ライナス様が私を一度も抱くことがなかったからなのですが、不能だと思っていたライナス様は愛人を何人も作っていました。
そして親友だと思っていたマリーまで、ライナス様の愛人でした。
愛人を何人も作っていたくせに、やり直したいとか……頭がおかしいのですか?
設定ゆるゆるの、架空の世界のお話です。
全8話で完結になります。

彼を追いかける事に疲れたので、諦める事にしました
Karamimi
恋愛
貴族学院2年、伯爵令嬢のアンリには、大好きな人がいる。それは1学年上の侯爵令息、エディソン様だ。そんな彼に振り向いて欲しくて、必死に努力してきたけれど、一向に振り向いてくれない。
どれどころか、最近では迷惑そうにあしらわれる始末。さらに同じ侯爵令嬢、ネリア様との婚約も、近々結ぶとの噂も…
これはもうダメね、ここらが潮時なのかもしれない…
そんな思いから彼を諦める事を決意したのだが…
5万文字ちょっとの短めのお話で、テンポも早めです。
よろしくお願いしますm(__)m
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる