記憶喪失の令嬢は皇太子に激執着される

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急な争い

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 “あ…”

 笑っていないマルセルの横に、同じ背丈の黒いローブを見に纏った男性が見えた。
 2人で何か話している様だった。

 “カレルド殿下…?”

 そこまで深く被っていないフードから見えた赤い瞳の目が合い睨まれる。

 取り敢えず、ニコリと微笑んでおく。

 数分して音楽が終わり、拍手が起こる。
 直ぐに一緒に踊っていた女の子達に囲まれた。
「ご一緒できて嬉しかったです!!」
「すごくお綺麗です!憧れます!」
「ドレスはどちらのお店のですか!?」
「お肌も髪もキレイ!お手入れ方法などあるのですか!?」
 一斉に言われる。
 セナがピッタリ私に付き護衛をしてくれる。

「ふふ。そんなに一斉に言われるとお答えするのが難しいですね。」

 クスッと笑い、少し困った顔を見せて首を傾げる。

「アルヤ。」

 後ろからマルセルの声が近づいてきた。

『キャー!』
 悲鳴をあげながら女の子達は私への道をあける。

「あら。お話は済んだのですか?」
 振り向き、チラッとマルセルの後ろを見る。

 まだマルセルと話していたローブの男はいた。

「…ふ。本題はこれから。かな。」
 不敵に笑うマルセル。

 “これから?”
 首を傾げる私にマルセルは、スッと私の顎を軽く持ち上げ唇が触れるか触れないかの距離に顔が近づく。

「え?」

 直ぐに離され、肩を抱き寄せられる。

 キスをされたのかと思ったのか、今日1番の黄色い声が響き渡る。

「な、なにを!?」
 マルセルを見上げると、ローブの男の方を見ている。

「さぁ。火種に油をそそいでやったぞ。カレルド。
 遊びは終わりだ。本気で争おうじゃないか。」

 マルセルの視線と言葉、カレルドの名を聞き一斉にローブの男に視線が集まる。

 スッとフードだけが取り、カレルドの金色の髪が現れる。
 近くにいたセナから『ヒィッ!』と短い悲鳴が聞こえ、二、三歩下がり私達から離れる。

「争うねぇ…。
 そいつが望まない言葉を使う時点で、俺より劣っていると思わないか?」
 髪を掻き上げつつ、怒っているのか笑っているのか分からない表情で私達に近づくカレルド。

「思わないね。実際、始めるのはいつもお前からだからな。」

「きっかけはお前からだろ?」

 目の前にきたカレルドとマルセルは一切目を離さず睨み合う。

 2人の威圧的で重々しい雰囲気が周囲を黙らせる。

「ちょ、ちょっと…!?何を…!?」
 言い終わる前にカレルドの言葉と被る。

「次の皇帝になり、アルヤの横に座るのは俺だ。」

「ふっ。ほざいてろ。次期皇帝はこの俺だ。」
 言い返すマルセル。


「「絶対渡さない。」」
 2人の言葉が重なる。

 マルセルは唖然とする私を抱きかかえその場から歩いて離れる。

「で、殿下!?」

「んー?はは。ごめんごめん。」
 さっきの威圧感が一瞬でなくなり笑顔を見せるマルセル。

 すると、近くのマルセル派だろう人々から言われる。
「応援してるよー!」
「頑張れ!」

 それに笑顔で答えるマルセル。

 後ろを見るとカレルドも囲まれる何か言われている様だった。


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