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踊り
しおりを挟むすぐ横にマルセルの顔。
あまりにも近くで囁かれビクッと身体を震わせた瞬間、周りにいた人たちから大きな拍手が鳴り響く。
周りを見渡すと、かなり大勢の人集りができていた。
その中にセナ達の姿が見え、さらにあちこちに記者であろう人の姿が多く伺える。
“企み通り。って感じね。”
「…あの。離していただけますか?」
「えー。」
嫌そうな返事をしながらも離してくれる。
ずっと私達の周りを回っていた無数の火の玉がフワッと空にまた上り一つ、また一つとゆっくり消えていくのを見上げる。
「…綺麗。」
「アルヤの方が綺麗だよ?」
後ろのマルセルに顔を向ける。
「もう…。」
すると、私達に近づく人影。
セナと、その家族だった。
「あ、あの!知らなかったとはいえかなり失礼な発言ばかりでした!本当に申し訳ございません…」
セナを先頭に皆頭を下げる。
「まぁ、いいのよ。楽しかったもの!
それに、謝るのは私達のほうよ?
ご家族と過ごす予定だったのでしょ?邪魔してごめんなさい。」
セナの肩をポンポンと軽く叩きながら、頭を下げ続ける家族に言う。
それでも頭を下げ続けられる。
どうしようもなく、マルセルを見上げ微笑む。
「ね?マルセル殿下?」
「はは。そうだね。」
マルセルの声を聞き皆ゆっくり顔を上げるが不安そうな表情は消えていなかった。
「ふふ。なら、一つお願いしてもよろしいですか?ご婦人方。」
笑顔で女性2人の前に立つ。
「も、もちろんです!!」
少し表情が強張っている2人に両手を差しだす。
「一緒に、踊っていただけますか?」
「「え?」」
驚く2人の手を取り引っ張り音楽隊の前に行く。
「楽しい音楽を、お願いできますか?」
すぐに楽しげな揚々とした音楽が流れる。
「女性の皆さん!私と踊りましょ?」
両手でドレスを広げて身体をひねり回る。
良いのだろうか、と悩んでいる様子の女の子らの手を取り誘う。
フっと微笑むマルセルと目が合った。
「ふふ。女性だけなら嫉妬しないでしょ?」
「ははは。女性だけならね。
だが、楽しそうな君の笑顔を見る男どもの目はくり抜きたい。」
髪を掻き上げながら笑うマルセルの言葉に、周りからヒッと低い悲鳴が聞こえる。
「まぁ!こわ~い!」
マルセルの近くにいたセナが1番顔を引き攣らせていた。
「セナ!アナタもおいで!」
手を取り引っ張り連れ出す。
「お、お嬢様!?私!踊りなんてできませんよ!?」
「適当でいいのよ!」
女性たちの楽しそうな高い声が街中に響く。
そんな光景をマルセルをはじめ、優しい目で男性たちが見守る。
すると視界の隅で、金色の髪が横切った。
“…金色?”
すぐに見えなくなった。
周りを見渡すが見つけることが出来ず、気のせいか?と思っているとパチン。と指を鳴らす音がした。
先程より小さな火が多く空を舞う。
ワッと皆空を見上げるが、私はマルセルに視線をやる。
“あ…”
、
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