記憶喪失の令嬢は皇太子に激執着される

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ご両親2

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「それ本当?」

 答えたのは私ではなくセナの母親だった。
「書いてない新聞もあるけど基本どこの新聞に書いてますよ?読まれます?」

 そう言い、旦那さんが読んでいた新聞を渡しそれを受け取るマルセル。

 “あ…”

 出るタイミングを失ってしまい、フッとセナを見る。
 テーブルに両肘を付き、頭を抱えてずっと呟いていた。
「…すみません、すみません、すみません、すみません、すみません…」

 全く気にする事のない4人。

 思わずまた笑いがでる。どんどん真っ赤になっていく夕焼けを見つめた。

 4人の会話は終わらない。
「でもその後マルセル殿下もいらしたんだろ?3人で海を眺められたとか?」

「お綺麗でしょうねー…あのお三方が並びさらに海でしょ?見たかったわー。」

「皇太子の誕生日パーティかお嬢様の成人のパーティで何かしらの発表があるかも。みたいな事書いてた新聞もあったな?
 本当だろうか?」

「それは記者の憶測じゃないの?」

 “そんな事書かれているのね…”

 すると、何処からか音楽が聞こえて来た。
 “…なんの音楽かしら。”

 新聞を読み終えたマルセルは畳みつつ私を見る。
 マルセルの雰囲気が少し重々しくなるのが分かった。

「ありがとうございました。」
 お礼を言い新聞を返す。

「い、いえ…」
 雰囲気の変わるマルセルに流石のセナの母親もたじろぐ。

 それを見たセナが一言。
「終わった…。」
 4人が一斉にセナを見て首を傾げる。

 構わずマルセルが私に言う。
「聞いてないけど?」

 “もう隠す気ないのかしら?”
「ふふ。わざわざ言いませんよ。」
 ニコリと首を傾げる私。
 マルセルがため息をつき言う。

「まったく…俺がすると目くじら立てる癖して、自分はするのかよ。
 しかも記者の前でか。あのクソ野郎。
 隠れてるのがアホらしくなるな。」

 私達の会話を呆然と聞く4人。
「え…な、なに?」
 かろうじて声を出すのはセナの母親だった。

 気にする事なくマルセルは胸ポケットからペンを取り出し、テーブルに置いてるペーパータオルに何かを書き出した。

 すぐにセナが立ち上がり、マルセルの前で膝をつく。
「私が。」

「はは。君は俺の隊じゃないからなぁ。第一の副団長がその辺にいるから渡すだけでいいよ。」

「かしこまりました。大変申し訳ございませんでした。」

「別に構わないよ。隠してるのはコチラだ。」
 そう言いながら、紙を渡すとすぐにセナが走り出した。

 騒がしかったテーブルが静まり返り、先程から流れていたこの雰囲気には似つかわしくない陽気な音楽がやけに響く。

 マルセルの言葉と行動、そしてセナの行動で全てを察したのか、4人の顔が引き攣っていく。

「いいのですか?」
 マルセルに聞く。

「いいさ。皇宮ももう目の前だし。
 いい気になってるあのバカを黙らせてやる。」

「まぁ。倍になって返ってきても巻き込まないで下さいよ?」

「はは。それは約束できないな。
 君はそのままでも構わないよ?」

「アナタが明かした時点で、私だと分かるのですから。お付き合いしますよ。」

 私達の会話で確信変わったのだろう4人が顔が青ざめていくのが分かった。

「そんな顔されなくて大丈夫ですよ。
 楽しいひと時でした。ありがとうございます。」

 私が言うと、マルセルがフードを少し上げ言う。
「そう。隠していた俺が悪いのだから。」

 マルセルの顔が見えたのか、目を丸くして手で口を隠す女性2人に、その後ろの男性も目を丸くしている。

 すぐに私にも視線が向けられる。

 マルセルと同様に少しフードを上げニコリと笑って見せる。

「…うそでしょ」
 ボソッと私の横の女性が呟くのが聞こえ、人差し指を口元に持っていく。

 するとセナが帰ってきた。
 マルセルの前で膝を付き報告する。
「お渡ししてまいりました。直ぐに。との事でした。」

「あぁ。ありがとう。」

 セナが私にも目を向け言う。
「ぜひ、お供させて下さい。」

「あら?ご家族がいらっしゃるのだからいいわよ?」
 私の言葉にセナが少し悲しそうな表情をした。

「お嬢様の護衛をするのが、コレで最後になるかもしれないので…」

「大袈裟ねぇ。」

「ははは。別に何もしないよ?
 仮にカレルドにクビにされても俺が拾ってあげるよ。」
 笑いながら言うマルセル。

「ありがとうございます…」
 涙ぐむセナの声を聞いてか、4人が一斉に立ち上がり腰を折り込む。

「大切失礼いたしました!申し訳ございません!」

 他の客や店員、通行人までもが動きを止めて私達をジッと見る。

「はは。良いって良いって。」
 そう言いながら立ち上がるマルセル。
 私の前に来て手を差し伸べる。

 その手を取り私も立ち上がり聞く。
「どうするのですか?」

「ん?最後にあそこに寄って帰ろうか。」
 マルセルの目線の前は私の後ろだった。
 振り返ると、聞こえていた音楽に合わせて踊っている人達が見えた。

「あの音楽だったのですね。」

「祝日は夕方から、あそこで毎回やってるんだよ。」

 “それを知っててココにきたのね。”
 そう思いながら、まだ顔が引き攣る4人に向き言う。

「ここに居ても視線が痛いでしょう?
 一緒に出ましょうか。」

「よ、よろしいのですか…?」
 セナの父親が恐る恐る聞く。

「いいよ?直ぐそこだけどね。」
 マルセルも振り返り言うと、4人は頷いた。

「セナ。アナタもおいで。大丈夫だから。」

 セナも頷き、私達の少し後ろから付いてき、さらにその後ろから4人がついてくる。

 音楽が鳴る方に向かう。
 噴水のある広場に近づくと音楽と賑やかな人の声が大きくなる。

 少し歩くと、朝話をした騎士の一人が姿を現した。




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