164 / 195
ご両親2
しおりを挟む「それ本当?」
答えたのは私ではなくセナの母親だった。
「書いてない新聞もあるけど基本どこの新聞に書いてますよ?読まれます?」
そう言い、旦那さんが読んでいた新聞を渡しそれを受け取るマルセル。
“あ…”
出るタイミングを失ってしまい、フッとセナを見る。
テーブルに両肘を付き、頭を抱えてずっと呟いていた。
「…すみません、すみません、すみません、すみません、すみません…」
全く気にする事のない4人。
思わずまた笑いがでる。どんどん真っ赤になっていく夕焼けを見つめた。
4人の会話は終わらない。
「でもその後マルセル殿下もいらしたんだろ?3人で海を眺められたとか?」
「お綺麗でしょうねー…あのお三方が並びさらに海でしょ?見たかったわー。」
「皇太子の誕生日パーティかお嬢様の成人のパーティで何かしらの発表があるかも。みたいな事書いてた新聞もあったな?
本当だろうか?」
「それは記者の憶測じゃないの?」
“そんな事書かれているのね…”
すると、何処からか音楽が聞こえて来た。
“…なんの音楽かしら。”
新聞を読み終えたマルセルは畳みつつ私を見る。
マルセルの雰囲気が少し重々しくなるのが分かった。
「ありがとうございました。」
お礼を言い新聞を返す。
「い、いえ…」
雰囲気の変わるマルセルに流石のセナの母親もたじろぐ。
それを見たセナが一言。
「終わった…。」
4人が一斉にセナを見て首を傾げる。
構わずマルセルが私に言う。
「聞いてないけど?」
“もう隠す気ないのかしら?”
「ふふ。わざわざ言いませんよ。」
ニコリと首を傾げる私。
マルセルがため息をつき言う。
「まったく…俺がすると目くじら立てる癖して、自分はするのかよ。
しかも記者の前でか。あのクソ野郎。
隠れてるのがアホらしくなるな。」
私達の会話を呆然と聞く4人。
「え…な、なに?」
かろうじて声を出すのはセナの母親だった。
気にする事なくマルセルは胸ポケットからペンを取り出し、テーブルに置いてるペーパータオルに何かを書き出した。
すぐにセナが立ち上がり、マルセルの前で膝をつく。
「私が。」
「はは。君は俺の隊じゃないからなぁ。第一の副団長がその辺にいるから渡すだけでいいよ。」
「かしこまりました。大変申し訳ございませんでした。」
「別に構わないよ。隠してるのはコチラだ。」
そう言いながら、紙を渡すとすぐにセナが走り出した。
騒がしかったテーブルが静まり返り、先程から流れていたこの雰囲気には似つかわしくない陽気な音楽がやけに響く。
マルセルの言葉と行動、そしてセナの行動で全てを察したのか、4人の顔が引き攣っていく。
「いいのですか?」
マルセルに聞く。
「いいさ。皇宮ももう目の前だし。
いい気になってるあのバカを黙らせてやる。」
「まぁ。倍になって返ってきても巻き込まないで下さいよ?」
「はは。それは約束できないな。
君はそのままでも構わないよ?」
「アナタが明かした時点で、私だと分かるのですから。お付き合いしますよ。」
私達の会話で確信変わったのだろう4人が顔が青ざめていくのが分かった。
「そんな顔されなくて大丈夫ですよ。
楽しいひと時でした。ありがとうございます。」
私が言うと、マルセルがフードを少し上げ言う。
「そう。隠していた俺が悪いのだから。」
マルセルの顔が見えたのか、目を丸くして手で口を隠す女性2人に、その後ろの男性も目を丸くしている。
すぐに私にも視線が向けられる。
マルセルと同様に少しフードを上げニコリと笑って見せる。
「…うそでしょ」
ボソッと私の横の女性が呟くのが聞こえ、人差し指を口元に持っていく。
するとセナが帰ってきた。
マルセルの前で膝を付き報告する。
「お渡ししてまいりました。直ぐに。との事でした。」
「あぁ。ありがとう。」
セナが私にも目を向け言う。
「ぜひ、お供させて下さい。」
「あら?ご家族がいらっしゃるのだからいいわよ?」
私の言葉にセナが少し悲しそうな表情をした。
「お嬢様の護衛をするのが、コレで最後になるかもしれないので…」
「大袈裟ねぇ。」
「ははは。別に何もしないよ?
仮にカレルドにクビにされても俺が拾ってあげるよ。」
笑いながら言うマルセル。
「ありがとうございます…」
涙ぐむセナの声を聞いてか、4人が一斉に立ち上がり腰を折り込む。
「大切失礼いたしました!申し訳ございません!」
他の客や店員、通行人までもが動きを止めて私達をジッと見る。
「はは。良いって良いって。」
そう言いながら立ち上がるマルセル。
私の前に来て手を差し伸べる。
その手を取り私も立ち上がり聞く。
「どうするのですか?」
「ん?最後にあそこに寄って帰ろうか。」
マルセルの目線の前は私の後ろだった。
振り返ると、聞こえていた音楽に合わせて踊っている人達が見えた。
「あの音楽だったのですね。」
「祝日は夕方から、あそこで毎回やってるんだよ。」
“それを知っててココにきたのね。”
そう思いながら、まだ顔が引き攣る4人に向き言う。
「ここに居ても視線が痛いでしょう?
一緒に出ましょうか。」
「よ、よろしいのですか…?」
セナの父親が恐る恐る聞く。
「いいよ?直ぐそこだけどね。」
マルセルも振り返り言うと、4人は頷いた。
「セナ。アナタもおいで。大丈夫だから。」
セナも頷き、私達の少し後ろから付いてき、さらにその後ろから4人がついてくる。
音楽が鳴る方に向かう。
噴水のある広場に近づくと音楽と賑やかな人の声が大きくなる。
少し歩くと、朝話をした騎士の一人が姿を現した。
、
0
お気に入りに追加
191
あなたにおすすめの小説
【完結】もう無理して私に笑いかけなくてもいいですよ?
冬馬亮
恋愛
公爵令嬢のエリーゼは、遅れて出席した夜会で、婚約者のオズワルドがエリーゼへの不満を口にするのを偶然耳にする。
オズワルドを愛していたエリーゼはひどくショックを受けるが、悩んだ末に婚約解消を決意する。だが、喜んで受け入れると思っていたオズワルドが、なぜか婚約解消を拒否。関係の再構築を提案する。その後、プレゼント攻撃や突撃訪問の日々が始まるが、オズワルドは別の令嬢をそばに置くようになり・・・
「彼女は友人の妹で、なんとも思ってない。オレが好きなのはエリーゼだ」
「私みたいな女に無理して笑いかけるのも限界だって夜会で愚痴をこぼしてたじゃないですか。よかったですね、これでもう、無理して私に笑いかけなくてよくなりましたよ」
仲の良かったはずの婚約者に一年無視され続け、婚約解消を決意しましたが
ゆらゆらぎ
恋愛
エルヴィラ・ランヴァルドは第二王子アランの幼い頃からの婚約者である。仲睦まじいと評判だったふたりは、今では社交界でも有名な冷えきった仲となっていた。
定例であるはずの茶会もなく、婚約者の義務であるはずのファーストダンスも踊らない
そんな日々が一年と続いたエルヴィラは遂に解消を決意するが──
【完結】側妃は愛されるのをやめました
なか
恋愛
「君ではなく、彼女を正妃とする」
私は、貴方のためにこの国へと貢献してきた自負がある。
なのに……彼は。
「だが僕は、ラテシアを見捨てはしない。これから君には側妃になってもらうよ」
私のため。
そんな建前で……側妃へと下げる宣言をするのだ。
このような侮辱、恥を受けてなお……正妃を求めて抗議するか?
否。
そのような恥を晒す気は無い。
「承知いたしました。セリム陛下……私は側妃を受け入れます」
側妃を受けいれた私は、呼吸を挟まずに言葉を続ける。
今しがた決めた、たった一つの決意を込めて。
「ですが陛下。私はもう貴方を支える気はありません」
これから私は、『捨てられた妃』という汚名でなく、彼を『捨てた妃』となるために。
華々しく、私の人生を謳歌しよう。
全ては、廃妃となるために。
◇◇◇
設定はゆるめです。
読んでくださると嬉しいです!
大嫌いな幼馴染の皇太子殿下と婚姻させられたので、白い結婚をお願いいたしました
柴野
恋愛
「これは白い結婚ということにいたしましょう」
結婚初夜、そうお願いしたジェシカに、夫となる人は眉を顰めて答えた。
「……ああ、お前の好きにしろ」
婚約者だった隣国の王弟に別れを切り出され嫁ぎ先を失った公爵令嬢ジェシカ・スタンナードは、幼馴染でありながら、たいへん仲の悪かった皇太子ヒューパートと王命で婚姻させられた。
ヒューパート皇太子には陰ながら想っていた令嬢がいたのに、彼女は第二王子の婚約者になってしまったので長年婚約者を作っていなかったという噂がある。それだというのに王命で大嫌いなジェシカを娶ることになったのだ。
いくら政略結婚とはいえ、ヒューパートに抱かれるのは嫌だ。子供ができないという理由があれば離縁できると考えたジェシカは白い結婚を望み、ヒューパートもそれを受け入れた。
そのはず、だったのだが……?
離縁を望みながらも徐々に絆されていく公爵令嬢と、実は彼女のことが大好きで仕方ないツンデレ皇太子によるじれじれラブストーリー。
※こちらの作品は小説家になろうにも重複投稿しています。
夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました
氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。
ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。
小説家になろう様にも掲載中です
裏切られた令嬢は死を選んだ。そして……
希猫 ゆうみ
恋愛
スチュアート伯爵家の令嬢レーラは裏切られた。
幼馴染に婚約者を奪われたのだ。
レーラの17才の誕生日に、二人はキスをして、そして言った。
「一度きりの人生だから、本当に愛せる人と結婚するよ」
「ごめんねレーラ。ロバートを愛してるの」
誕生日に婚約破棄されたレーラは絶望し、生きる事を諦めてしまう。
けれど死にきれず、再び目覚めた時、新しい人生が幕を開けた。
レーラに許しを請い、縋る裏切り者たち。
心を鎖し生きて行かざるを得ないレーラの前に、一人の求婚者が現れる。
強く気高く冷酷に。
裏切り者たちが落ちぶれていく様を眺めながら、レーラは愛と幸せを手に入れていく。
☆完結しました。ありがとうございました!☆
(ホットランキング8位ありがとうございます!(9/10、19:30現在))
(ホットランキング1位~9位~2位ありがとうございます!(9/6~9))
(ホットランキング1位!?ありがとうございます!!(9/5、13:20現在))
(ホットランキング9位ありがとうございます!(9/4、18:30現在))
あなたの嫉妬なんて知らない
abang
恋愛
「あなたが尻軽だとは知らなかったな」
「あ、そう。誰を信じるかは自由よ。じゃあ、終わりって事でいいのね」
「は……終わりだなんて、」
「こんな所にいらしたのね!お二人とも……皆探していましたよ……
"今日の主役が二人も抜けては"」
婚約パーティーの夜だった。
愛おしい恋人に「尻軽」だと身に覚えのない事で罵られたのは。
長年の恋人の言葉よりもあざとい秘書官の言葉を信頼する近頃の彼にどれほど傷ついただろう。
「はー、もういいわ」
皇帝という立場の恋人は、仕事仲間である優秀な秘書官を信頼していた。
彼女の言葉を信じて私に婚約パーティーの日に「尻軽」だと言った彼。
「公女様は、退屈な方ですね」そういって耳元で嘲笑った秘書官。
だから私は悪女になった。
「しつこいわね、見て分かんないの?貴方とは終わったの」
洗練された公女の所作に、恵まれた女性の魅力に、高貴な家門の名に、男女問わず皆が魅了される。
「貴女は、俺の婚約者だろう!」
「これを見ても?貴方の言ったとおり"尻軽"に振る舞ったのだけど、思いの他皆にモテているの。感謝するわ」
「ダリア!いい加減に……」
嫉妬に燃える皇帝はダリアの新しい恋を次々と邪魔して……?
2番目の1番【完】
綾崎オトイ
恋愛
結婚して3年目。
騎士である彼は王女様の護衛騎士で、王女様のことを何よりも誰よりも大事にしていて支えていてお護りしている。
それこそが彼の誇りで彼の幸せで、だから、私は彼の1番にはなれない。
王女様には私は勝てない。
結婚3年目の夫に祝われない誕生日に起こった事件で限界がきてしまった彼女と、彼女の存在と献身が当たり前になってしまっていたバカ真面目で忠誠心の厚い騎士の不器用な想いの話。
※ざまぁ要素は皆無です。旦那様最低、と思われる方いるかもですがそのまま結ばれますので苦手な方はお戻りいただけると嬉しいです
自己満全開の作品で個人の趣味を詰め込んで殴り書きしているため、地雷多めです。苦手な方はそっとお戻りください。
批判・中傷等、作者の執筆意欲削られそうなものは遠慮なく削除させていただきます…
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる