記憶喪失の令嬢は皇太子に激執着される

文字の大きさ
上 下
162 / 220

世間の印象

しおりを挟む





「あの子気に入ったの?」
 また手を繋ぎ歩いているとマルセルに聞かれる。

「面白い子だとは思いますが?どうしてですか?」

「名前聞いてたし、結婚式に招待するんだろ?」
 笑いながら言うマルセルの横を歩く。

「結婚式に招待するなんて私は言ってませんけど?
 何か、そう言う風な事を言ったのはアナタの方なのでは?」

「んー。君が話をし、待ってた時に俺の指を見て『ご夫婦ではないのですね』
 なんて言うから
『俺は夫婦になりたいと思ってるよ』って言っただけだよ。」

「絶対それでしょ?!
 なぜいきなり結婚式の話になったか分かりました。」

「ははは!いいじゃないか。是非招待しようじゃないか?俺らのね。」

 立ち止まり私の顔を覗き込むように腰を折り笑顔を見せる。

 一瞬で顔が火照ったのがわかる。
「もぉ…やめてください…。」
 俯き言う私にマルセルはまた笑う。

「はは。かわいっ。」





 手を引かれて、路地から出て大通りに出る。

 2人でさまざまな店を見て回る。
 通りの花屋や雑貨店、カフェに立ち寄り少し休憩する。

「疲れてない?」

「えぇ。大丈夫ですよ。楽しいです!」
 マルセルとお茶をしながら話す。

「はは。それは良かった。」
 フードで見えないが笑顔なのがわかる。

 すると、横の席の人達の話が聞こえてくる。

「ここ数日、皇宮のお嬢様の記事が多いなー。」
 男性の声と共に、ガサガサと新聞を捲るような音がする。

「噂を否定ってやつだろ?
 見た見た。でもあの噂なら本当でも否定するだろうな!」
 違う男性の笑い声と共に聞こえてくる。

 気にする事なく、紅茶と頼んだケーキを一口、口にする。
 “あ。美味しい。”

 マルセルも黙り紅茶を口にしていた。

「皇太子殿下への比喩だったのでしょ?
 猛獣だっけ?」
 次は女性の声だった。

「らしいわね。私はちょっと納得しちゃったわ。狩猟大会でのお二人は怖かったもの!」
 また別の女性の声。

「私も見たわ!派手にやり合ってたわねー!
 何かの演出なのかと思ったけど、本当の喧嘩だったのでしょ?」

「らしいわね!お嬢様を取り合ってでしょ?!」

「まったく。ササッとどっちかに決めちまえば良いのに。あのお嬢様が次期皇帝を決めるってなって大分たったろ?」
 バサバサとまた紙の音がする。

「えー!次期皇帝かもしれないけど、夫婦になるのよ?!
 皇帝は側室やらで他の女性を選べるかもだけど、お嬢様は違うんだから慎重にもなるでしょー?!」

 私たちの話では盛り上がる隣の席の男女4人を横目で確認し、すぐに目線を戻しケーキを口にする。

「しかもあの皇太子殿下のお二人よ!?
 どちらもカッコよくて素敵よね!」

「わかるー!あれは選べないわ!」

「何言ってんだ?お前らが選ぶ訳じゃないだろー?」

「そうだけど!私なら!って全女性が想像するハズよー!?
 ちなみに私なら、第二皇太子のカレルド殿下ね!」

「聞いてねぇよ。」

「そーなの!?あなたの旦那とは似ても似つかないじゃない!」

「理想と現実って事よ!」
 大きな笑いが起こった。

 “ふふ。確かに理想は理想よね。”
 心の中で笑ってしまう。

「露店に出られたのを少し見たけど、お二人とも綺麗だったわぁ…」

「え!?そうなの!?羨ましい!」

「お嬢様に笑いかけていた殿下の横顔!素敵だったわぁ…」

「確かに。お前と違って、しおらしく綺麗なお嬢様だったなぁー。」

「はぁ?!なに?!仕返しのつもり!?」
 夫婦なのだろう男女が少し言い争いが始まりそうになる。

 我慢していた笑いが込み上げた。
「ふふ。」

「ほらぁ、隣のお姉さんお兄さんに笑われてるぞー。」
 言い争っていない方の男性の声がし、マルセルを見ると口元に指を当ていた。

「うるさくてごめんさないね!邪魔しちゃったわよねー。」
 私の横の、もう1人の女性が私達に向かって言う。

「いえ。大丈夫ですよ。
 こちらこそ、お話し聞いてしまってすみません。」
 少し女性の方を向き言う。

「ほら!あなた達も謝りなさい?」
 その女性が言い争う夫婦に言う。

「お見苦しい所を…すみません。」
「デートの邪魔しちゃってごめんなさい!」
 私達に謝る夫婦。

 今度はマルセルが軽く手を上げ手のひらを見せる。

 仕草だけで、何も言わないマルセルに少し不安を覚えたのか夫婦は私を見る。

「ふふ。大丈夫ですよ。」

「…本当?彼氏さんよね?怒ってない?」
 私の横の女性が少し私に近づきコソッと言う。

「はい。この程度で怒るような人ではないと、私は思っていますが?」
 マルセルの方を向いて言う。




しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

ヤンデレエリートの執愛婚で懐妊させられます

沖田弥子
恋愛
職場の後輩に恋人を略奪された澪。終業後に堪えきれず泣いていたところを、営業部のエリート社員、天王寺明夜に見つかってしまう。彼に優しく慰められながら居酒屋で事の顛末を話していたが、なぜか明夜と一夜を過ごすことに――!? 明夜は傷心した自分を慰めてくれただけだ、と考える澪だったが、翌朝「責任をとってほしい」と明夜に迫られ、婚姻届にサインしてしまった。突如始まった新婚生活。明夜は澪の心と身体を幸せで満たしてくれていたが、徐々に明夜のヤンデレな一面が見えてきて――執着強めな旦那様との極上溺愛ラブストーリー!

(完結)貴方から解放してくださいー私はもう疲れました(全4話)

青空一夏
恋愛
私はローワン伯爵家の一人娘クララ。私には大好きな男性がいるの。それはイーサン・ドミニク。侯爵家の子息である彼と私は相思相愛だと信じていた。 だって、私のお誕生日には私の瞳色のジャボ(今のネクタイのようなもの)をして参加してくれて、別れ際にキスまでしてくれたから。 けれど、翌日「僕の手紙を君の親友ダーシィに渡してくれないか?」と、唐突に言われた。意味がわからない。愛されていると信じていたからだ。 「なぜですか?」 「うん、実のところ私が本当に愛しているのはダーシィなんだ」 イーサン様は私の心をかき乱す。なぜ、私はこれほどにふりまわすの? これは大好きな男性に心をかき乱された女性が悩んで・・・・・・結果、幸せになったお話しです。(元さやではない) 因果応報的ざまぁ。主人公がなにかを仕掛けるわけではありません。中世ヨーロッパ風世界で、現代的表現や機器がでてくるかもしれない異世界のお話しです。ご都合主義です。タグ修正、追加の可能性あり。

女官になるはずだった妃

夜空 筒
恋愛
女官になる。 そう聞いていたはずなのに。 あれよあれよという間に、着飾られた私は自国の皇帝の妃の一人になっていた。 しかし、皇帝のお迎えもなく 「忙しいから、もう後宮に入っていいよ」 そんなノリの言葉を彼の側近から賜って後宮入りした私。 秘書省監のならびに本の虫である父を持つ、そんな私も無類の読書好き。 朝議が始まる早朝に、私は父が働く文徳楼に通っている。 そこで好きな著者の本を借りては、殿舎に籠る毎日。 皇帝のお渡りもないし、既に皇后に一番近い妃もいる。 縁付くには程遠い私が、ある日を境に平穏だった日常を壊される羽目になる。 誰とも褥を共にしない皇帝と、女官になるつもりで入ってきた本の虫妃の話。 更新はまばらですが、完結させたいとは思っています。 多分…

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

虐げられた皇女は父の愛人とその娘に復讐する

ましゅぺちーの
恋愛
大陸一の大国ライドーン帝国の皇帝が崩御した。 その皇帝の子供である第一皇女シャーロットはこの時をずっと待っていた。 シャーロットの母親は今は亡き皇后陛下で皇帝とは政略結婚だった。 皇帝は皇后を蔑ろにし身分の低い女を愛妾として囲った。 やがてその愛妾には子供が生まれた。それが第二皇女プリシラである。 愛妾は皇帝の寵愛を笠に着てやりたい放題でプリシラも両親に甘やかされて我儘に育った。 今までは皇帝の寵愛があったからこそ好きにさせていたが、これからはそうもいかない。 シャーロットは愛妾とプリシラに対する復讐を実行に移す― 一部タイトルを変更しました。

傲慢令嬢は、猫かぶりをやめてみた。お好きなように呼んでくださいませ。愛しいひとが私のことをわかってくださるなら、それで十分ですもの。

石河 翠
恋愛
高飛車で傲慢な令嬢として有名だった侯爵令嬢のダイアナは、婚約者から婚約を破棄される直前、階段から落ちて頭を打ち、記憶喪失になった上、体が不自由になってしまう。 そのまま修道院に身を寄せることになったダイアナだが、彼女はその暮らしを嬉々として受け入れる。妾の子であり、貴族暮らしに馴染めなかったダイアナには、修道院での暮らしこそ理想だったのだ。 新しい婚約者とうまくいかない元婚約者がダイアナに接触してくるが、彼女は突き放す。身勝手な言い分の元婚約者に対し、彼女は怒りを露にし……。 初恋のひとのために貴族教育を頑張っていたヒロインと、健気なヒロインを見守ってきたヒーローの恋物語。 ハッピーエンドです。 この作品は、別サイトにも投稿しております。 表紙絵は写真ACよりチョコラテさまの作品をお借りしております。

(完結)「君を愛することはない」と言われて……

青空一夏
恋愛
ずっと憧れていた方に嫁げることになった私は、夫となった男性から「君を愛することはない」と言われてしまった。それでも、彼に尽くして温かい家庭をつくるように心がければ、きっと愛してくださるはずだろうと思っていたのよ。ところが、彼には好きな方がいて忘れることができないようだったわ。私は彼を諦めて実家に帰ったほうが良いのかしら? この物語は憧れていた男性の妻になったけれど冷たくされたお嬢様を守る戦闘侍女たちの活躍と、お嬢様の恋を描いた作品です。 主人公はお嬢様と3人の侍女かも。ヒーローの存在感増すようにがんばります! という感じで、それぞれの視点もあります。 以前書いたもののリメイク版です。多分、かなりストーリーが変わっていくと思うので、新しい作品としてお読みください。 ※カクヨム。なろうにも時差投稿します。 ※作者独自の世界です。

【完結】6人目の娘として生まれました。目立たない伯爵令嬢なのに、なぜかイケメン公爵が離れない

朝日みらい
恋愛
エリーナは、伯爵家の6人目の娘として生まれましたが、幸せではありませんでした。彼女は両親からも兄姉からも無視されていました。それに才能も兄姉と比べると特に特別なところがなかったのです。そんな孤独な彼女の前に現れたのが、公爵家のヴィクトールでした。彼女のそばに支えて励ましてくれるのです。エリーナはヴィクトールに何かとほめられながら、自分の力を信じて幸せをつかむ物語です。

処理中です...