記憶喪失の令嬢は皇太子に激執着される

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木陰へ侍女とマルセルと移動し、ちらほら目を覚ます騎士たちが出てきた。

 ハンナとイリスも目が覚め、すぐに私達に謝りに来た。
 どうやら、マルセルが助けてくれた事になっている様だ。

 “そう言うシナリオなのね。”

 侍女らは口止めされ、何も言わず。
 私は当たり障りのない返事をする。
 もちろんマルセルもだ。

「大丈夫だよー。」
 そんな返事をするマルセルを見て思う。
 “あなた達がやった癖に。”


 いつの間にか来ていた、第ニ騎士団長とカレルドが話しながら処理して行っていた。

 皇宮に続く道の方から、カレルドが連れて行ったベテラン騎士の1人が4人の新人騎士を引っ張り戻ってきた。

 同じ様に、もとの道に戻る方からも2人の新人とベテラン騎士1人が戻ってきた。

 その様子を眺めていると、マルセルが教えてくれる。

「逃げた奴らだよ。はは、引っ捕まってるね。」
 罰の悪そうな顔をし戻ってきた、逃げたらしい新人騎士を見て軽く笑う。

「あ…。なるほど。」

「別に悪いことではないけど、皇宮への道とは逆に行った奴らは俺の隊では、除隊か移動だね。」

「あら、厳しいですね。」

「そう?まぁカレルドがどうするのかは知らないけどね。」

 すると、ドイムが1頭の馬を連れ、近づいてくる。
「準備が整いました。」

 その言葉を聞いたマルセルは、私を見て微笑む。
「アルヤ、君は俺らと行くよ。」

「一応、お聞きしております。」
 私も笑顔をマルセルに向ける。

 首を傾げる侍女たちにマルセルが満面の笑みで言う。
「悪いけど、君らはカレルドと帰っておいで。
 馬車まで準備ができなくてね。
 人数も少ないし。ね?」

 最後の『ね?』に威圧感を感じる。

 “嘘っぽいわね”
 そう思ったが、何も言わなかった。

 侍女らも、マルセルに言われるとどうしょうもない。
「かしこまりました。お気をつけて。」
 ニーナが答え、エマと2人でお辞儀をする。

 私は、マルセルと2人で馬に乗せられる。

 ドレスだから、跨るのではなく横に座る。
 そんな私をマルセルが後ろから軽く抱きしめる様にして跨る。

 “私も乗ってしまって、重かったらごめんなさい。”
 そう思いながら馬をそっと撫でる。

「大丈夫かい?」
 マルセルの声が頭の上から聞こえる。

「はい。嫌いなわけではないので。」
 ニコリとマルセルを見上げる。

 心配で、不安でたまらなそうな顔をする侍女らが目に入る。
「大丈夫よ。あなた達も気を付けてね。」
笑顔で2人に言う。




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