記憶喪失の令嬢は皇太子に激執着される

文字の大きさ
上 下
154 / 215

遠征訓練の目的

しおりを挟む

「結局マルク様は私のことを離す事ができないのね」
「ポーレットだってやる気だったろう」

 ワインをかけられたポーレットは、ドレスの染み抜きのために休憩室にマルクと入ったが結局脱がす段階でマルクもポーレットも火がついてしまい、そのままなし崩しとなった。

「それにしても、ミカエル団長に近付くにしたってやり方があるだろ。前と同じじゃダメだ」
「だってマルク様が悪いんじゃない。私をきちんと売り込んでくださらないから」

 結局は欲に負け悦楽に耽ってしまったものの、この頭の足りないポーレットは何をやらかすか分からず、その都度自分の立場が危うくならないかハラハラしなければならないマルクは考え込んだ。

「リュシエンヌを殺しちゃえばどうかしら?」

 可愛い顔をしたままで、ポーレットは物騒な事を口にした。

「そうすればミカエル様も目が覚めるわよ。そこに私が誘惑すればきっと上手くいくわ」
「俺にとってはメリットが少ないだろう。俺はリュシエンヌと婚姻を結んで伯爵家に婿入りするんだから。リュシエンヌが居なくなれば困る」
「そうねえ、マルク様のことを考えたならば殺しちゃうのはだめね。うーん……。まあ考えておくわ」

 この子リス令嬢と呼ばれた娘は可愛らしい顔のままでリュシエンヌを殺すなどと平気で宣う性格であった。
 さすがのマルクも、義理とはいえ姉を殺すことに微塵も罪悪感を感じていないポーレットに空恐ろしいものを感じた。

「おい、勝手なことはするんじゃないぞ」
「だから、マルク様に色々言われる筋合いはないわ。私はミカエル様と婚姻を結ぶ事ができればそれで良いのだから。正直、貴方とお姉様がどうなろうがどうでも良いのよね」
「お前……! よくそんなことが言えるな!」

 やはりこの毒婦とは組めないと、マルクはさっさと衣服を着て休憩室から出て行った。

「あらあら、どうしましょう。ドレスを誰かに着せてもらわないといけないわ」

 ポーレットは呼び鈴を鳴らしてこの邸の使用人を呼びつけた。
 そしてその使用人がなかなか良い男であったから、またしばらく休憩室から出ることはなかった。



「ふうむ。なかなかの好色具合だ。近頃の女は明け透けで慎みがないんだな。姉のことを躊躇いもなく殺せるという豪胆なところは認めるが」

 ポーレットの様子をずっと見ていたのはファブリスだった。
 マリアも途中までは一緒にいたが、ミカエルのところへ戻ったので自分はこの毒婦と屑がリュシエンヌによからぬことを企むのではないかと心配し、見張っていたのだ。

「屑はまだしも、毒婦の方はリュシエンヌに害を及ぼすこともあるかも知れん。リュシエンヌとミカエルに伝えておこう」

 まだ休憩室で過ごすポーレットを放ってファブリスはミカエルとリュシエンヌのところへと戻った。

 
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

悪役令嬢カテリーナでございます。

くみたろう
恋愛
………………まあ、私、悪役令嬢だわ…… 気付いたのはワインを頭からかけられた時だった。 どうやら私、ゲームの中の悪役令嬢に生まれ変わったらしい。 40歳未婚の喪女だった私は今や立派な公爵令嬢。ただ、痩せすぎて骨ばっている体がチャームポイントなだけ。 ぶつかるだけでアタックをかます強靭な骨の持ち主、それが私。 40歳喪女を舐めてくれては困りますよ? 私は没落などしませんからね。

旦那様、そんなに彼女が大切なら私は邸を出ていきます

おてんば松尾
恋愛
彼女は二十歳という若さで、領主の妻として領地と領民を守ってきた。二年後戦地から夫が戻ると、そこには見知らぬ女性の姿があった。連れ帰った親友の恋人とその子供の面倒を見続ける旦那様に、妻のソフィアはとうとう離婚届を突き付ける。 if 主人公の性格が変わります(元サヤ編になります) ※こちらの作品カクヨムにも掲載します

離婚した彼女は死ぬことにした

まとば 蒼
恋愛
18話、加筆修正しました。 ----------------- 事故で命を落とす瞬間、政略結婚で結ばれた夫のアルバートを愛していたことに気づいたエレノア。 もう一度彼との結婚生活をやり直したいと願うと、四年前に巻き戻っていた。 今度こそ彼に相応しい妻になりたいと、これまでの臆病な自分を脱ぎ捨て奮闘するエレノア。しかし、 「前にも言ったけど、君は妻としての役目を果たさなくていいんだよ」 返ってくるのは拒絶を含んだ鉄壁の笑みと、表面的で義務的な優しさ。 それでも夫に想いを捧げ続けていたある日のこと、アルバートの大事にしている弟妹が原因不明の体調不良に襲われた。 神殿の訪問時、二人の体調不良はエレノアの体内に宿る瘴気が原因だと告げられる。 大切な人を守るために離婚して彼らから離れることをエレノアは決意するが──。 ----------------- とあるコンテストに応募するためにひっそり書いていた作品ですが、最近ダレてきたので公開してみることにしました。 まだまだ荒くて調整が必要な話ですが、どんなに些細な内容でも反応を頂けると大変励みになります。 書きながら色々修正していくので、読み返したら若干展開が変わってたりするかもしれません。 作風が好みじゃない場合は回れ右をして自衛をお願いいたします。

月の後宮~孤高の皇帝の寵姫~

真木
恋愛
新皇帝セルヴィウスが即位の日に閨に引きずり込んだのは、まだ十三歳の皇妹セシルだった。大好きだった兄皇帝の突然の行為に混乱し、心を閉ざすセシル。それから十年後、セシルの心が見えないまま、セルヴィウスはある決断をすることになるのだが……。

傲慢令嬢は、猫かぶりをやめてみた。お好きなように呼んでくださいませ。愛しいひとが私のことをわかってくださるなら、それで十分ですもの。

石河 翠
恋愛
高飛車で傲慢な令嬢として有名だった侯爵令嬢のダイアナは、婚約者から婚約を破棄される直前、階段から落ちて頭を打ち、記憶喪失になった上、体が不自由になってしまう。 そのまま修道院に身を寄せることになったダイアナだが、彼女はその暮らしを嬉々として受け入れる。妾の子であり、貴族暮らしに馴染めなかったダイアナには、修道院での暮らしこそ理想だったのだ。 新しい婚約者とうまくいかない元婚約者がダイアナに接触してくるが、彼女は突き放す。身勝手な言い分の元婚約者に対し、彼女は怒りを露にし……。 初恋のひとのために貴族教育を頑張っていたヒロインと、健気なヒロインを見守ってきたヒーローの恋物語。 ハッピーエンドです。 この作品は、別サイトにも投稿しております。 表紙絵は写真ACよりチョコラテさまの作品をお借りしております。

勘違い妻は騎士隊長に愛される。

更紗
恋愛
政略結婚後、退屈な毎日を送っていたレオノーラの前に現れた、旦那様の元カノ。 ああ なるほど、身分違いの恋で引き裂かれたから別れてくれと。よっしゃそんなら離婚して人生軌道修正いたしましょう!とばかりに勢い込んで旦那様に離縁を勧めてみたところ―― あれ?何か怒ってる? 私が一体何をした…っ!?なお話。 有り難い事に書籍化の運びとなりました。これもひとえに読んで下さった方々のお蔭です。本当に有難うございます。 ※本編完結後、脇役キャラの外伝を連載しています。本編自体は終わっているので、その都度完結表示になっております。ご了承下さい。

どうせ運命の番に出会う婚約者に捨てられる運命なら、最高に良い男に育ててから捨てられてやろうってお話

下菊みこと
恋愛
運命の番に出会って自分を捨てるだろう婚約者を、とびきりの良い男に育てて捨てられに行く気満々の悪役令嬢のお話。 御都合主義のハッピーエンド。 小説家になろう様でも投稿しています。

どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします

文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。 夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。 エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。 「ゲルハルトさま、愛しています」 ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。 「エレーヌ、俺はあなたが憎い」 エレーヌは凍り付いた。

処理中です...