記憶喪失の令嬢は皇太子に激執着される

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謝罪

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 “やはり、その時の話よね…”
 そう思いながら、黙って聞く。

「ひとりで母親の部屋に入りたい。と言うお前に、俺は黙ってヴェラスと部屋の前で待つことにした。

 どれくらいだっただろうな…
 ある程度時間がすぎた頃、部屋から物音がし
 すぐに扉を開けると、ぼーっと立ち白い霧に包まれるお前が見えたと思ったら一瞬で消えた。」

「白い霧…ですか…」
 思い出した記憶の最後との繋がりを感じる。

「…あぁ。
 あの時が、今までで一番焦ったな。」
 表情はわからないかわ、ため息をつきながら言うのを黙って聞いた。

「…消えたのがお前の母親の部屋だった事もあり、皆青ざめていくのを覚えている。

 得体のしれない力だったが、残った気配と魔鉱石を頼りに団長と探し回った。

 すぐに団長の大きな雷が落ち、向かうとお前が倒れている側に団長の姿があり、羽の生えた男が見え、周りには小物の魔獣が居た。
 直感的にこの男がお前を連れ去った奴だと感じ、後から羽を根本からぶった斬ってやった。

 そいつがラドラインだった。」

 ここで、カレルドが話をやめた。
「どうされましたか?」

 もたれ掛かっていた身体を起こし、カレルドを見た。
 少し、悲しそうな目で私を見下ろし、深いため息をつきながら続きを話しくれた。

「意識のないお前を抱え、とりあえずシャンドリ邸に戻ったが長居することはできなかった。
 1度連れされた家より、皇宮の方が安全なのは確実だった。
 俺がお前を抱え馬で先に戻ることになる。
 ここで、ヴェラスから小袋を渡された。
 お前が消えた床に落ちていたらしい。」

 “確かに…戻る時にお兄様から小袋をあずかったって言ってたわね…”

「そこからは、お前も知ってる通りだ。
 すぐ目を覚ますと思っていたがまさか10日もかかるとは思ってもみなかった。」

 ジッと私を見つめていたカレルドは少し目をそらした。
「くそ。思い出したら腹立ってきた。」

「ラドラインにですか?」
 そう聞くと、意外な返事が帰ってきた。

「…俺にだ。
 自信過剰で、思い上がりも良いとこだった。
 運良くお前を見つける事ができ生きていたが、見つからない可能性だってあったし、死んでいる可能性もあった。
 あの10日間は生きた心地がしなかった…」

 そう言い終わると、カレルドは私の頬に手をあてる。

「それで…謝罪なのですね。」

「あぁ。
 …記憶がないなんてどうだっていい。
 生きていてくれて、本当に良かった。」

 フワッと優しい顔になるカレルド。

「そして、すまなかったな。」
 続けて言うが、どこか悲しい目をしていた。

「…いいえ。謝られなくて大丈夫ですよ。
 謝り、感謝をしなければいけないのは私の方です。
 ワガママで、すみません。
 そして、助けていただきありがとうございます。」

 頬に当てられているカレルドの手の上からそっと手を重ね、笑顔を見せる。




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