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コルンとマルセル
しおりを挟む「こんな深夜に出歩く、悪い子発見。」
ニコニコと近づいてくるのは、マルセルだった。
「マルセル殿下…」
イリスは少し私たちから離れる。
「はは。私には、1人で彷徨いている殿下の方が悪い子に見えますが?」
コルンの言葉に思わずクスッと笑ってしまう。
「1人になりたいと時だってあるさ。」
そう言いながら、私の横に来た。
「その気持ちは、わかります。」
立っているマルセルを見上げ、ニコリと笑う。
「アルヤは、常に誰か側に置いてないといけないからね。」
横に座り言うマルセルを見つめる。
「話は聞きましたよ。
ラドラインでしたっけ?
部屋まで入ってきたのでしょう?とんでもないですな。」
コルンが焚き火を弄りながら言う。
「…えぇ。何の目的で私を狙うのかすら、わかっていませんが。」
「お嬢様は厄介者に好かれますな。」
軽く笑いながら言われる。
「その厄介者の中に、俺も入ってそうだな?」
マルセルが私を避ける様に顔を動かしコルンに言う。
「はは。そんな事言ってませんよぉー?」
揶揄う様に語尾が上がり、コルンもマルセルと同じ様に顔を動かす。
「この酔っ払いが。」
「一杯目ですから酔ってませんよ。」
そんな2人のやり取りにクスクス笑う。
「そうだ!成人なさったんなら飲めるじゃないですかー
ちょっと待ってて下さいねー」
コルンは立ち上がり、自分のテントに入って行った。
「げ。持ってくる気かよ…」
あぐらをかき、膝に肘を乗せ頬杖をつくマルセルが呟く。
「ふふ。お酒は苦手ですか?」
「苦手ではないよ。付き合いで飲む事もあるし、たまに1人でも飲むしね。
ただねぇ…」
途中でやめたマルセルに首を傾げる。
「ただ?」
「コルンが飲んでるそれ。バカみたいに度数が高いやつだよ。」
コルンが居た場所にある、お酒の瓶を見ながら言う。
「さ、さすがに…違う物を持ってこられるのでは?」
「どうだろねぇ。」
ジッとテントを見つめながら言うマルセル。
“えぇ…”
同じ様にテントを見つめていると、コルンが数個の酒瓶とグラスを持ち、私とマルセルの後ろに来て屈む。
「どれにします?」
「どれって…全部強い酒ばかりじゃないか。」
少しため息を吐きながら、一本の酒瓶を手にするマルセル。
「私が飲む物ですからな!
すみません。お嬢様には、水しかありませんがまぁ、どうぞ。」
そう言いながら、水の瓶からグラスに水を注ぎ渡される。
「ありがとうございます。」
素直に受け取る私に、コルンが言う。
「お嬢様にお願いがあるのですが、宜しいですか?」
グラスを2つ持ちニコリと笑うコルンに首を傾げる。
「なんですか?」
「この水を、氷にしてほしいのですけど…出来ますか?」
持っていた二つのグラスに、私に入れた同じ水の瓶から水を注ぎながら言う。
「アルヤになんて事させるんだよ…」
呆れ言うマルセル。
「ふふ。できますよ。」
そう言い、コルンの持つグラスの一つに人差し指をつける。
クルッと水が丸くなり氷になりカラン。とグラスに落ちる。
もう一つも同じ様に氷にする。
「おぉ!ありがとうございます!
凄いですなぁ。私がやろうとしても、一切凍りませんので羨ましいですな!」
一つのグラスをマルセルに渡すコルン。
「俺も出来ないよ。」
お酒を注ぎながらマルセルが言う。
「え…そうなのですか?」
“あ…陛下も、狩猟大会で初めて見ると仰っていたわね…”
「そうだよー。カレルドでさえ、凍るのに少し時間がいるみたいなのに。
アルヤは一瞬だね。」
そう言われ、狩猟大会でのカレルドが氷を作る場面を思い出す。
“水が尖る様に先端から凍っていってたわね…”
「才能ですかな?」
コルンもお酒を注ぎグラスをマルセルに近づける。
「遅くなりましたが、成人おめでとうございます。」
「あぁ。ありがとう。」
2人のグラスがコツンと合わさる。
「お嬢様も、氷ありがとうございます。」
ニコリと笑い、私にもグラスを近づけるコルン。
「ふふ。どういたしまして。」
コツンを水の入ったグラスを合わせる。
コルンは立ち上がり、持ってきた酒瓶を持ち先程座っていたところに座り直す。
「氷作って疲れない?
俺がすると、凍らないのに凄い体力もっていかれるんだけど?」
マルセルが私を見ながら言う。
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