記憶喪失の令嬢は皇太子に激執着される

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完膚なきまでに。

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「そんな事でそんな顔されなくても。」
クスクス笑う私を見る2人の目は、少し和らいだ様に見えた。

“これが素だったりするのかしら。”

「カレルド殿下も、同じ理由ですか?」
黙っているカレルドにも聞いてみる。

「まぁ。それもあるが…
お前は、前公爵が関わっているとしても引きはしないのだな?」

すぐに返事を出来ずにいると、マルセルも言う。
「無理に関わる必要はないと。俺も思うよ?」

ふぅー。と長く息を吐き真上の月を見上げる。

「…確かに。関わりたくはありません。あの顔を思い出すだけで反吐が出ます。」

目線を戻すと、何か言いたげな2人。
そんな2人にニコリと笑い言う。

「ふふ。ですが、もう避けて逃げるのは終わりです。
前公爵が何故また私を狙うのか知りませんが…
次こそ、再起不能にしてやろうではありませんか。
この、私の手で…」

少し俯き、自分の手を胸の前に持ってきて握りしめ、すぐに緩める。

“この手で制裁を与えることが出来れば…少しは救われるだろうか…”

そう思っていると、後ろのコルンが言う。

「かなり険しい道のりになります。
お嬢様だけではなく、周りの者も辛い思いをするでしょう。
覚悟は、できていらっしゃいますか?」

振り返ることなく、ジッと自分の手を見つめる。

“周りの者も…か。また泣かせてしまうわね…”
エマの泣き顔が、頭をよぎる。

それでも、私がやる事に意味がある。

少し顔を上げると、黙って私を見るマルセルとカレルドと目が合う。

「…えぇ。覚悟はできているわ。」
そう言いながら身体ごと横に向き、3人が見える位置にくる。

俯いた時に前に流れてきた髪を、手の甲で首元からサラッと払う。

「完膚なきまでに、叩き潰してやろうではありませんか。」
3人を見て笑顔を見せる。
丁度風が吹き、髪が軽く舞い上がる。

そんな私を見て、3人は一斉に片膝をつき言う。

「「「仰せのままに。」」」

少し驚いたが、笑いがでる。
「まぁ。
ふふ。やめてくださいな。そこまでしなくていいでしょう?」

クスクスと笑う私とは対照的に、3人は少し怖い顔で立ち上がる。

すると、2人の側近と、私の侍女2人も来た。

「お見事でした。」
ドイムが私に言う。

「次から、お二人が喧嘩されたらお嬢様をお呼びしなくてはですね。」
エノワールがカレルドを見て言う。

カレルドに睨まれるが、笑顔をくずさないエノワールに言う。

「嫌よ?今回は外だし、コルン様もいらっしゃったからお止めしただけよ。」
エノワールに言うと、コルンは大きく笑う。

「そんなー。」
残念そうに言うエノワールを見て、マルセルを見る。

「外では喧嘩しない。と叔母様に言ってませんでしたっけ?」

「あぁ…いや、コレは喧嘩じゃなくて、遊び?みたいなのだから??ね?」
歯切れの悪いマルセル。

「遊びなら、一度お声をかけた時にすぐにやめてくださいます?」
返事を聞く前に、カレルドを見てさらに言う。

「アナタもですよ?
ここ数日。私と馬車に揺られるだけの日々で、暴れたりなかったかもしれませんが。
言い訳になりませんから。」

カレルドは、両手をヒラヒラとさせるだけで何も言わなかった。




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