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お断り
しおりを挟む「正直、侮っておりました。
今のお二人を止められたもそうですが、お嬢様のお考えや観察力。全てにおいて感銘を受けました。」
そう言うコルンを見下ろす。
マルセルとカレルドは黙って見守る。
“言いたい事は何となくわかる、けど…”
「…そうですか。」
コルンは頭も上げずに続ける。
「はい。
私は…今や、陛下を含め誰も支持をしておりません。
今後もないと思っておりましたが、考えが変わりました。
お嬢様を、全面的に支持させて頂きたい。
どうか、この、ミラディン コルン をお使いください。」
“やはり…か。”
黙っていると、フワッと風が吹き髪がなびく。
サワサワと木々の葉が音を鳴らし、止むのを待ち言う。
「お断りいたします。」
断られると思っていなかったのだろうか、コルンは身体をピクリと反応させた。
後ろにいるカレルドが口を挟む。
「なぜだ?俺らなんかよりコイツは強いぞ。
コルンの名だけでも、貴族なんかより強力だ。」
マルセルもカレルドに続く。
「そうだよ?陛下でさえ、戻ってこないかと打診を続けているくらいだ。
君の部隊長にでもすれば、最強だよ?」
コルンを見下ろしながら言う。
「分かっています。
…言い方が悪かったですね。
『今は』お断りします。が正しいですね。」
私の言葉に顔だけ上げコルンが言う。
「今は、ですか?
理由をお聞きしても?」
「…気を悪くされないでくださいね?」
「もちろんです。」
「考えられる最悪な状況が、アナタと前公爵が繋がっている、と言う事。だからです。」
目を丸くするコルンと目が合う。
「先ほどの話で、ダナン様と前公爵が繋がっている可能性が出てきました。
コルン様も、先ほどおっしゃっていましたが…
ミラディンの名を名乗っている以上、関係ないとは言えないのです。」
「懸命な判断だと思います。」
「この問題が解決するか、完全な潔白が証明されない以上、コルン様を信用することはできません。だから『今は』なのです。」
「ごもっともだと思います。
出過ぎたことをしました。申し訳ございません。」
コルンはまた頭を下げる。
「顔を上げてください。
本来なら、とても有り難い申し出なのです。
お断りしなければいけない状況なのが悔やまれますね。」
顔を上げるコルンにニコリと笑顔を見せる。
「勿体無いお言葉。
私の決意は変わりませんので、用がありましたらお呼びください。すぐに駆けつけます。」
「ふふ。ありがとうございます。」
そう言い、手の甲を向け出す。
コルンはその手を軽く握り、私と目を合わせる。
「必ず、お役に立ってみせます。」
約束をし、すぐにコルンは私から手を離し立ち上がる。
「あまりお嬢様に触れていると、後ろのお二人がどんどん怖い顔になりますな!」
笑い飛ばすコルンを見て後ろを振り返る。
マルセルとカレルドは、眉間にシワを寄せコルンを睨んでいた。
「どうされました?」
「コルンだろうが、アルヤが男に触れられているのが気に入らない。」
マルセルらしくない答えが返ってくる。
「そんな事でそんな顔されなくても。」
クスクス笑う私を見る2人の目は、少し和らいだ様に見えた。
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