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意外な接点

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2人の側近が、私の方に近づいてくる。
エノワールが先に口を開く。

「そろそろ止めて頂けませんか?」

「私に言うの?
あなた達で止めたら?できるでしょ?」

チラッとドイムを見ると、やはり目を背けられる。

「勘弁してください。止めたら後が怖いんですよ…」

「ははは!かなり機嫌が悪くなるでしょうな!」
笑うコルン。

「誰が止めても同じでしょう?」

「お嬢様なら大丈夫だと思いますけど?」
エノワールが私に言う。

「…あなたもそう思うの?」
ドイムに聞いてみると、意外にも返事が返ってきた。

「はい。少なくとも、私たちが止めるより良いかと。」

「私もそう思いますよ?声をかけてみては?」
コルンも私に言う。

「コルン様まで…私が言っても聞く様な人達ではないのですけど…」
そう言いながら、まだまだやり合っているマルセルとカレルドを見て声を張る。

「お二方!そろそろ終わりにしませんか?」

すると、剣を交わしつつマルセルの声が響く。
「こいつが止めれば俺も止めるさ!」

「こっちのセリフだ!」
カレルドの声もする。

「だ、そうですよ?」
コルンと、側近2人に言う。

ため息を吐く、エノワールとドイムの後ろから、ロベルトが近づいてくるのが見えた。

「面白いのに、止めないでもらえるっすか?」

「そんな口の利き方をしていると、あのお二人の中に放り込みますよ?」
エノワールが後ろを向き言う。

「そうよ。あなたが目指している、ロイヤルナイトの元団長様の前でそんな言葉遣いはダメよ。」

私がそう言うと、ロベルトはコルンを見て目を丸くする。

するとコルンが口を開く。
「おや?お前さんは確か、国境横の村の…」

皆、バッとコルンを見て、エノワールが聞く。
「ロベルトと、お知り合い…なのですか?」

「あぁー。ロベルト。そんな名だったなぁ…
数年前に2度、相手をしたんだったかな。」
鼻で笑うコルン。

すると、ロベルトが片膝をついた。
「…お久しぶり…です。」

「え!?カレルド殿下にも膝ついた事ないのに!?と、言うか、あなたが敬語使ってる!」
あまりの驚な光景に思わず思った事が、口に出る

「はははは!私にも盾突いてきたので、力の差を見せつけたのですよ。
私を倒したければ、ロイヤルナイトになれるほどの実力をつけてこい。と言いましたが、本当になりに来た様ですな!」

腰に手を当て、豪快に笑うコルンを見上げ、ロベルトに視線を戻す。

「だから、ロイヤルナイトを目指していたの?」

ロベルトは、舌打ちしながら立ち上がった。

“通りで、私の事を知らなかった訳ね。”
笑いが込み上げてくる。

「ふふ。あなた、この国の英雄と言っても過言ではない方に勝とうとしていたの?
それとも、憧れ?」

「はぁ?何だそれ。」
悪態をつくロベルトに、コルンが睨み口を挟む。

「何だ、その口の利き方は?
この方がどれ程、高貴な方か知らない訳じゃないだろう?」
眉間にシワを寄せて黙るロベルトに、凄味を気がするコルン。

「あなたは、剣以外興味がないのね。
まぁ、良いわ。
けれど、言葉遣いなどを身につけなければ、ロイヤルナイトは愚か、私の部隊にも入れないわよ。志願したのでしょ?」
ニコリとロベルトに言う。

間があったが、ロベルトは私に近づき片膝をついた。
「…すみませんでした。」

「ふふ。私だけではダメよ?分かっているわね?」

「はい…」
ボソッと返事が聞こえた。

「お見事です」
コルンが少し腰を折り私に言う。

「ありがとうございます。
さぁ。そろそろお止めしないとですね。」
そう言いながら、マルセルとカレルドの方を見る。

「止めてきましょうか?」
コルンの提案に、私は首を横に振る。



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