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似ている
しおりを挟む「お嬢様も、魔鉱石貰ったのでしょう?」
チラッと私の手首を見る。
「はい。まだ頂いたばかりですし、コレは仮の物ですけど。」
目線をまだやり合う2人に戻す。
「では、ご自身の物を決めないといけませんね。お考えで?」
「…いいえ。色々と慌しかったですから。
身につけていて邪魔にならないアクセサリー。でしたよね。」
「えぇ。肌見放さず付けていられるものが望ましいですね。」
「そうですね。」
「元ロイヤルナイト団長として、もう少し言わせて頂くと、
敵に取られても、命を落とさない場所。にして頂きたいですね。」
『命』という言葉に身体が反応する。
そんな私を見てコルンは続ける。
「魔鉱石は貴重な物です。狙ってくる奴らは少なくない。
指の一本や、耳を切り取られても死にはしません。
ですが、首を狙われれば死にます。」
「…マルセル殿下は、首から下げてますよね?」
「おや、知っておられるのですか?」
「えぇ。ご本人から聞いたわけではなく、偶然目にしただけですが。」
部屋に、ラドラインが現れた時の事を思い出す。
「そうでしたか。
…何度も忠告は致しましたが、聞き入れてもらえず。
『コレを失う時、それは俺が死ぬ時だ。』なんて言われまして。」
「ふふ。意外と頑固ですからね。」
「えぇ。ほんと、お二人とも陛下の性格そっくりですよ。」
軽く笑いながら言うコルン。
「あら。マルセル殿下は同感ですが、カレルド殿下は皇后様に似ていると私は思いますけど?」
『皇后』の言葉にコルンが少し身体をピクリと反応させる。
「ふふ。皇后様は苦手ですか?」
大男が身体を反応させるのが分かり、クスッと笑う。
「すみません。昔の癖が…」
苦笑いするコルン。
「癖?」
「ええ。私が陛下の側近やらしていた頃、陛下は皇后様を溺愛している全盛期でして…
『目を見るな。』
『近寄るな、話しかけるな。』
『何か聞かれたら、はい。かいいえ。だけ言え』などと言われておりまして。」
「ふふ。そんな事言われていたのですね。」
クスクス笑う私にコルンも笑いながら言う。
「もう、凄かったですよ?
ちょっとでも目に入ると、一瞬で剣が首に突きつけられましたからね!
その剣がまた早すぎてですね、たまに避けきれず浅いですが傷も残ってますよ!」
「そんなにですか!?」
思わずコルンの首元を見る。
「はい。ですから、皇后陛下が苦手と言うより、陛下が恐ろしかった。ですな。」
襟を少し捲り、傷を軽く見せてくれながら言う。
無数の傷を見て驚く。
そんな私にコルンは言う。
「すみません。話の腰を折るような事をしてしまいましたね。
私は、カレルド殿下の方が、陛下に似ていると思いますが?」
「見た目はそうですね。
あの目を引く、金色の髪と白いスーツは陛下を想像させますね。」
黙るコルン。
そんな彼に笑いかける。
「いくら皇后様と関わりがなくても、性格はご存知でしょう?」
「はい。少しは」
「カレルド殿下の、かなりの負けず嫌いなところ。
皇后様にそっくりではないですか?
特に、煽られると求めた以上の結果で帰ってくるのも。
皇后様は、陛下に煽られ妃教育を10ヶ月ほどで済まされたのでしょう?
カレルド殿下は、私が言った事にムキになりコルン様の所まできてらしたし。」
「…陛下も、かなりの負けず嫌いだと思いますが?」
「そうですか?
陛下は私に、『3番目だったし、皇帝になるのは兄だろうと思っていた。』と、仰いました。
『首を取るなんて考えてもいなかった。』
とも。
皇后様やカレルド殿下なら、3番目だろうが、自分が皇帝になる。と躍起になると思いませんか?
あなたに策を練られる前に。」
「確かに。」
納得するようなそぶりをするコルン。
「あと、今目の前の状況を楽しまれる辺りも似ていますね。
すぐ表情に出るのも。」
「カレルド殿下は、表情に出しますか?」
「えぇ。無愛想に見えますけど、結構表情豊かですよ。」
「ははは!つまらなそうな顔のイメージしかありませんな!」
「ふふ。分かります。
多分、あれは素なのでしょうね。」
笑うコルンに釣られて笑い、続ける。
「マルセル殿下のあの、いつものにこやかな笑顔は作っている物だと思っています。
陛下の威圧感のある表情や目つきも、作られた物ですね。
多分、素の陛下はたまに見せる穏やかな表情をする時ですね。」
また黙って聞くコルン。
「皇帝の威厳を示す為、あの威圧感は必要でしょうね。
マルセル殿下は…自分を守る手段。でしょうか。」
「守る手段ですか?」
「えぇ。無愛想で近寄りがたいカレルド殿下との違いを見せ、多くの人脈を作りをするのと、仮の自分を作り…本当の自分を傷つけない為。そんな気がします。」
「…よく見ていらっしゃいますな。」
「ほぼ毎日お会いしますから。
妙に、諦め…とは違いますが、状況に対しての自分の立場を理解している。と言いますか。
それも、陛下に似てますね。」
はははは!と豪快に笑うコルン。
すると、私の横に近づいてくる2人の足音がする。
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