記憶喪失の令嬢は皇太子に激執着される

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ミラディン コルンという男

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 私は黙り見る。

 “ダナンとキャロルね…” 
 海で3人で話した事を、思い出しながら思う。

 チラッとカレルドを見たが、なにも反応はなかった。

 軽くため息を付き、顔を上げないコルンに言う。

「顔を上げ、お座りください。
 その件では、コルン様が謝られることではないでしょう?」

 コルンは顔あげ、椅子に座る。
「いえ、私がわがまま放題な姪のキャロルを見兼ね、ミラディン侯爵。私の弟と一緒に陛下に『厳しく教育してほしい。』と頼んだのです。」

 そう言われ、陛下との会話を思い出す。
 “あぁ…おっしゃっていたわね。
 ミラディン侯爵家には恩がある。か…”

「…その話は、軽くですが陛下から聞いています。一年のお約束なのでしょう?
 時期に終了となるでしょう、問題ありませんよ。」

「ありがとうございます。
 いやぁ。陛下とそんな話まで…恐れ入りますなぁ。」
 コルンは片手を頭の後ろに回し、苦笑いを浮かべる。

「ダナン様は、チラチラと私を見ている様ですが、その様な方は大勢いますので、特に気にしていません。
 ですが、キャロル嬢は警告の意味での今回謹慎ですので、…次はありません。」

「もちろんでございます。
 次、何かあれば厳しく罰して頂いて構いません。
 本当に、申し訳ございませんでした。」
 コルンはテーブルに頭がつきそうな程、頭を下げる。

「次、ねぇ…。」
 フッと笑いマルセルが呟いた。

 ガバッと顔を上げてるコルン。
「もしや、もう何かやらかしたのですか…?」

「いいや。キャロル嬢に関してはまだだ、侯爵は悪さをしている様だが。」

 目を見開き、怖い顔になるコルン。

 黙っていたカレルドが口を開く。
「やはり、お前が侯爵を継ぐ方が良かったのではないか?」
 ニヤつき言うカレルドにコルンは答える。

「はぁ。私がジッとしていられない性格なのはご存知でしょう?
 侯爵だなんて、面白くないし面倒ですし。」
 片手をヒラヒラさせながら面倒くさそうに言う。

「後始末する方が、面倒だろう?」
 マルセルが笑いながら言う。

「いいえ。
 貴族や、あなた方の争いに巻き込まれる方が面倒です。」

 はっきり言うコルンに思わず笑ってしまった。

 三人とも私を見る。
「ふふ。すみません。あまりにもハッキリおっしゃるので、つい。」

「はははは!ハッキリ言わないと分かってもらえませんからな!」

「その通りだと思います。
 宰相やロイヤルナイトも辞められたのも面倒になったからですか?」

「どちらもなりたくてなった訳じゃありませんでしたから。
 趣味だった剣技を磨き、魔獣退治をしていたら、気づいたらロイヤルナイトまでなってましたし。
 宰相にいたっては…」
 途中でコルンは話を止め、私の目をジッと見つめてきた。

 目を逸らす事なく、私もコルンの目を見る。
 すると、少し笑い話しが再開される。

「宰相にいたっては、当時のシャンドリ伯爵が断り続けまして。他に信頼できる者もおらず仕方なく私がやっていたのです。」

「…お父様ですか?」

「えぇ。陛下はシャンドリ伯爵を宰相に、
 私を、ロイヤルナイト団長で横に付けておきたかった様ですが。
 伯爵は断固断り続けましてね。
 まぁ、初のご子息が産まれて間もない頃でしたから無理もないですがな。」

 はははっと軽く笑うコルン。

 “聞かなくてもいつ頃の話かわかる様に、話してくれているのね…
『初のご子息』ヴェラスお兄様の事。
 約25年前。陛下が前皇帝の首を取った直ぐ後くらいの話しね…”

 黙る私にコルンは話を続けた。

「ついでに、もう少し昔話をしましょうか。
 前皇帝の首を取ろうと策略したのは私。」

 目を丸くする私に少し笑い続ける。



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