記憶喪失の令嬢は皇太子に激執着される

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第八騎士団長2

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足元を確かめながらゆっくり降りていると、足音と共に声がした。

「お待ちしておりました。」
声の方を見ると、ドイムが胸に手を当てお辞儀をしている。

「あぁ。」
短く返事をするカレルド。

「お二方は既に、テントでお話しをされています。コチラへどうぞ。」
ドイムはそう言い、私達の前を歩く。

大きなテントの前に着き、カレルドから先に入り、後に続く。

広々としたテント内にマルセルと、大柄の男性が居た。
「おお、カレルド殿下。お久しぶりですねぇ。」
そう言いながら近づいてくる、大柄の男。

カレルドの後ろにいる私にも、すぐに気づく。
「おぉ…これはこれは…
お美しくなられましたな。お二人が熱をあげるもの無理ないですな!」

豪快に笑う男はマルセルとカレルドに言う。

“見覚えがある。どこかで…”
そう思っていると、フッと幼い頃の記憶が蘇ってくる。

「陛下の横に付いてらした方…?」

小さく呟くが、聞こえた様で嬉しそうな顔を私に向ける。

「覚えて下さっているとは!光栄ですな!」
そう言い私の前で片膝を付く。

「名乗った事はございませんでしたね。
ミラディン コルン と申します。
現在は、陛下お心遣いにより第八騎士団長を承っております。
お嬢様の記憶にある私は、宰相とロイヤルナイト団長をしていた頃ですね。」

“ミラディンって…しかも、宰相とロイヤルナイト団長って…”
思うところはあるが挨拶をする。

「お久しぶりにございます。コルン様。」
ふわっとドレスを持ち上げ腰を曲げる。

頭だけ上げたコルンと目が合う。


「おぉ…なるほど。
殿下のおっしゃっていた通りですな。」
そう言いながら、立ち上がる。

“え?”
首を傾げる私をみて、コルンはまた豪快に笑う。

「おい。」
カレルドが声を上げる。

「おやぁ?何かなぁ?」
揶揄うようにマルセルが笑う。

舌打ちをするカレルドを無視してコルンは教えてくれた。
「下から見上げて見るお嬢様は、不思議な雰囲気になりお綺麗だ。って話です。」

「えぇ!?」

驚き顔を赤くする私をそのままに、カレルドが言う。
「はぁ…大分昔の話だ。よく覚えてるな。」

「そりゃもう!衝撃でしたからな!
言われていた通り、今も不思議な魅力がありますな。」

「あぁ。知ってる。」
カレルドが私を見て笑う。

“さっきのアレ!!?”
2人に膝を付かれた海での出来事を思い出す。

笑うコルンの後ろで、マルセルが屈んで言う。
「言いたい事はわかるけど。
俺は、アルヤに見上げられた時の方が可愛くて好きだなぁ。」

「もぉ…」
思わず俯き、顔を両手で覆う。

すると、また豪快な笑い声がする。
「はははは!どこから見ても、お美しく可愛らしいですものな!好みですな!」

「もうやめてください…
私を揶揄う為に、コルン様にわざわざ来て頂いたわけではないでしょう?!」

顔を上げ、顔を隠している手を少し離してカレルドに向かって言う。

「まぁな。」
そんな淡白な答えが返ってくると同時に、コルンが言う。

「私は、このお話だけで来た甲斐がありましたがな!
まぁ、簡易ではありますが、椅子とテーブルをご用意しておりますのでどうぞ。」

そう言われ、テーブルの四隅に置かれた椅子に座る。

私の前には、コルン。
右にマルセル。左にカレルドが座る。

コルンは座らず立ったまま言う。
「まずは…
はじめに、お嬢様に謝らなければなりませんな…」

深々と頭を下げ、続ける。

「甥と姪が、お嬢様にご迷惑をかけている事は耳にしております。
特に姪の方が酷いと、申し訳ございません。」

私は黙り見る。




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