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仲の悪い兄弟

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 するとカレルドが言う。
「そんなんじゃ騎士になって守れないぞ。訓練しないとな。」

 立っているカレルドを見上げて子供は大きく頷き言う。
「お兄ちゃん達も沢山訓練した?」

「もちろん。」

「強い騎士になったら、魔法を使えるようになるって本当?」

「あぁ。」
 そう言うと、カレルドは指をパチン。と鳴らす。
 子供と父親がフワリと浮きあがる。

「ほら。その魔法で上に戻るぞ。」

 父親がしっかり子供を抱き、歓喜の声がを上げ、石垣の上に戻っていく。
 その姿を見上げながら、立ち上がる。

 上に着いたのか、石垣から身を乗り出し子供と父親が声を上げる。

「ありがとうー!」

「本物に、ありがとうございました!」

 私はそんな2人に手を振る。

「ふふ。大きくなって是非、騎士になって頂きたいですね。」

「それも、お姫様のね。」
 笑うマルセル。

「そうですね…。あの子が騎士になる頃には、皇女か皇太子が居るかもしれませんね。」
 石垣を見上げながら言うと、カレルドがいきなり私を抱きかかえる。

「え!?な、何ですか!?」

「俺らも戻るぞ。」
 そう言われ、フワリと浮き上がる。

 “この人は、またいきなり…”
 そう思いカレルドを見ると、耳に付けている魔鉱石がゆっくり光ったり消えたりしている。

「え?殿下…それ?」

「ああ。問題ない、ただの連絡だ。」

 “連絡?”

 すぐ石垣の上につく。馬車が近くに置かれており、その前まで来る。
 マルセルはすぐ後ろから登り、付いてきていた。

「コルンがあの山の上にまで来る。
 お前は?」
 カレルドが後ろのマルセルに言う。

「おお。懐かしい名だな」

 “コルン?誰?”
 そう思っていると、馬車に乗せられる。

 すぐエノワールが侍女2人を連れてきて馬車に乗り込む。
 叔父と叔母も近くに居た。

 窓を開け、話しかける。
「また来ますね。」

 目の前まで来て小声で叔母が言う。
「仲がすごく悪いと、聞いていたのだけど…
 それも噂なだけなの?」

「ふふ。いいえ。それは本当ですよ。」

 そう答えると、馬に乗ったマルセルが近づいてくる。
「仲悪くても話はしますし、外で喧嘩なんかしませんよ?」
 笑いながら言う。

「わぁ!」
 驚く叔母。

「聞こえていたのですか?」
 マルセルに聞く。

「いいや、聞こえたのはアルヤの声だよ。
 会話の内容が想像できたから、言っただけ。」

 “凄いけど、何だか怖いわね。”

「凄いですね…」
 叔母が言うと、マルセルが笑う。

「ははは。合ってましたか?」

 コクリと頷く叔母。

 すると、カレルドも馬に乗って来た。
 今日一番の歓声が響く。

「おい。行くぞ。
 先行って面倒なの片付けとけよ。」

「はぁ?聞きました?コイツ弟ですからね?」
 マルセルがカレルドを指差しながら叔父と叔母に言う。

「あ”ぁ?
 2分だけで兄貴面するんじゃねぇよ。
 お前ら居ると訓練にならねぇんだ。」

「ならお前ら先行って、やらせろよ。
 俺はアルヤの横に居るから。」

 言い争う2人を見て、不安そうな顔で叔父と叔母が私を見る。

「大丈夫ですよ。いつもの事ですから。」
 笑う私を見て少し安堵する2人。

 バチバチと睨み合う2人に言う。

「私の横にはロベルトをお願いします。」

 バッとマルセルが私を見る。
「まじ?!アイツそんな昇格したの?」

 近くに居たロベルトを手招きするとカレルドは前に行ってしまった。



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